永遠を誓うクリプトの運転で海にやってきた。
水着に着替えて外に出る。
「すげぇ…」
視界に広がるのは青い空、白い砂浜、そしてどこまでも続く美しき海。
車からも見えてはいたが、近くで見るとこんなにも感動するものなのか。
透き通った海水に魚が泳いでいるのが見える。
こんなに美しい海は見たことがなかった。
そして何よりここには人がいない。
正確には、俺とクリプトの2人きり。
だからだろうか、まるでこの世界に2人だけしかいないように感じる。
隣に立つクリプトを見る。
するとばっちり視線があった。
何か話そうと口を開いた時、手をぎゅっと握られた。
「ほら、行くぞ」
外でクリプトと手を繋ぐなんて初めてで、胸が高鳴る。
前を行くクリプトの背中はレジェンドなだけあって逞しく、それを改めて実感してしまい顔が熱くなる。
クリプトの上裸なんて何度も見てきただろ俺!
昨日だって何度もその背に縋るようにかき抱いて…
そこまで思考が回ったところで頭をぶんぶんと横に振った。
きっと先程より顔は赤くなっているだろう。
「おい、どうした。いつものうるさいくらいの元気はどこにやった?」
心配そうな顔で振り返ったクリプトは俺の顔を見て不思議そうにしている。
「どこに照れる要素があったんだ?」
「て、照れてねーよ!日差しのせいだろ!これだから被害妄想の変人は!」
今度は俺がクリプトの手を引っ張って前をずんずん歩く。
後ろでくすりと笑う声が聞こえたが明らかにこちらの分が悪いので素知らぬ振りをした。
顔の熱は冷めない。
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ウィットが腰下まで海に浸かりながら、濡れた髪をかきあげ海を眺めている。
海を泳ぐ魚が珍しいからかずっと楽しそうに笑っている。
時には魚に話しかけたりして。
ずっと見ていたい景色とはこういうことか。
いつも何かしらから隠れなければならない身としては、今がとてつもなく大切な時間だと真に思う。
「俺はお前がいなきゃだめな人間になってしまったらしい」
ウィットには聞こえていない。
それでいい。
伝えたい言葉は他にあるから。
「なぁ、ウィット」
魚と戯れていたウィットがこちらを振り返る。
その笑顔は太陽のように眩しく、笑顔だけではない、心も眩しく俺を何度も照らしてくれた。
すっと息を吸って吐き出す。
ポケットに隠していたものを取り出して
「結婚しよう」
魚がパシャリと跳ねた音がする。
しんと、静まり返る空間。
まるで世界に2人きりのようだ。
それも悪くない。
ウィットは一瞬泣きそうに顔をくしゃりと歪めた後、俺に抱きついてきた。なんなく受け止めて、腕の中の愛おしい人を見つめる。
その時の笑顔は今まで出会った中で一番の美しさだった。
その顔を見て今度は俺が泣きそうになったのは内緒だ。
どちらからともなく、誓い合うように唇を重ね合わせた。
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海で遊んでいる間も、海から上がってからも手はずっと繋がれていて、その指にはお揃いのリング。こんなに幸せでいいのかな?なんて考えてしまうくらい最高に幸せだった。
繋がれた手にぎゅっと力を込めれば、同じだけ返してくれる。
「テジュン」
大好きな人の名を呼ぶ。
「ん?」
大好きな人の声。
「なぁ、愛してるぜ」
目を丸くしたあと嬉しそうに笑う愛おしい人。
「奇遇だな。俺もだ」
あぁ俺は、この人とずっと一緒にいたい。