土管チャレンジなんでこうなった。
「ちょ、クリプトもうちょい下がれ」
「無理だ。これ以上下がると敵に見つかる」
「大体何だってこんなとこに隠れたんだよ」
「それはこっちの台詞だ」
俺たちは今デュオでマッチ中。
何故こんな狭い空間に大の男2人がいるのかというと、敵の足音が聞こえたのと2人してアーマーが薄かったこともあり、咄嗟に土管に隠れてやり過ごそうとしたからだ。
しかしそこから別パも入ってきたようで撃ち合いが始まりあっという間に外が激戦区となってしまい今に至る。
外から見えないように隠れているため土管の中で俺がウィットの背中に覆いかぶさっている形になっている。
ウィットはというと狭い空間におさまるように体育座りをしている。
かわいい。
おっと、マッチ中に俺は何をと、頭を横に振ればウィットから小さな笑い声が聞こえる。
「ちょ、クリプちゃんそれ擽ったいからやめてくれ」
どうやら俺の髪の毛がウィットの首に当たってしまっていたらしい。
くすくす笑うウィットがかわいくて思わず抱きしめたくなるがぐっと我慢。
黙ったままの俺を不思議に思ったのかちらりと目線を寄こすウィットと目が合う。
「どうしたよクリプト。嫌に静かじゃねぇか」
「…なんでもない」
なんでもなくはない。
俺は今必死で我慢しているんだ、目の前にあるウィットの項が美味しそうで堪らないのを。
ちょっとだけ、そう思いウィットの項に鼻を寄せ香りを嗅ぐ。
甘いウィットの香りが堪らない。
ますます食べたくなってきた。
「ちょ、近いっての!あと恥ずいからやめろ。誰かに見られたらどうすんだ」
「大丈夫、ここは死角だ」
「いや、大丈夫ってお前なぁ」
まだ何か言っているウィットに耳を貸さず、我慢が効かなくなった俺はとうとうウィットの項を舐めた。
「ひゃうっ」
ぴくりと跳ねた肩、一瞬で染まる赤い耳、甘い声、睨む目は潤んで溶けてしまいそう。
「っばか!何してんだよ!」
「ふっかわいいな」
思わず本音を零せばもっと赤くなる顔。
「照れてるのか?」
「うっさいうっさい!この変態野郎!ここ出たら覚えてろよ」
「その変態が好きなのは誰だ」
「…」
むぐぐと黙り込んでいるウィットがかわいい。
「お前、沈黙が答えって知ってるか?」
「知らねぇー」
ぷいっとそっぽを向くウィットの顔を無理やりこちらに向けさせる。
膨らんだ頬を指でつついて遊ぶ。
「やめっ」
その時だった、敵の足音が近づいてきたのを感じ取り慌ててウィットの口を閉ざす。
己の唇で。
「ん、んんっ」
もがこうとするウィットをぎゅうぎゅうに抱きしめて足音が去るのを待つ。
お互いの心臓が早音を打つのを感じる。
敵が来るかもしれないというシチュエーションに燃えてきてしまう俺はきっと重症だ。
だってこんなにも
「かわいい、ウィット」
「っもう、ばかっ!」
2人してハッとした時には既に遅く、見つかった敵に見事に挟み撃ちにされダウンしてしまった。
その後ウィットからしっかり怒られてしまったが、ウィットのかわいいところを見られたので良しとしよう。
もちろんハックで録画済みだ。
それはウィットには秘密。
俺もかわいい恋人には嫌われたくないんでね。