きみにも秘密「なぁ、いつから俺のこと好きだった?」
ジョウロで花に水をやりながら、ウィットが声を掛けてくる。
その口ぶりは今日の朝ごはんを聞いてくるかのように軽い。
俺はその姿を久しぶりに紙とペンで描いていた、ところでこの質問である。思わずペンが止まる。
今でも鮮やかに思い出されるあの瞬間。きっとずっと好きではいた。けれど自覚したのはあの瞬間。
暗闇の中お前が差し出してくれた光。
一生忘れることのない鮮やかな思い出。
俺はもう一度ペンを動かしていく。
「おいクリプちゃん、まさかそんな瞬間はないだなんて言わないだろうな?」
頬をふくらませて俺を睨むウィットに笑みがこぼれる。
俺を無自覚で救った、たった1人のヒーローは今、俺の目の前にいる。
「なぁ〜、なんで笑ってんだよ〜教えろよ〜」
我慢できなくなったのかウィットが近づき俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
今度こそ俺は声を出して笑った。
「悪いなウィット。内緒だ」
「何で!」
「何でも」
これは俺だけの大切な宝物だから。
まだむくれているウィットの頬を優しく撫でてキスをひとつ。
「これだけは言える。お前がいるから俺は今幸せだ」
俺は今どんな表情をしているのだろう。
ウィットは驚いた顔をした後すぐに満面の笑みに変わった。
俺が大好きな笑顔。
太陽のように笑うウィット、俺の手元にある絵画の中でも同じ表情をしていた。
何だか泣き出しそうになったのは秘密。
俺は今、幸せだ。