早く気づけ「EMP、起動」
パリンという音がして敵のアーマーが砕ける。
「ナイスだクリプちゃん!よし!つめるぞ!」
「待て、小僧」
そう言って敵に向かって走り出そうとした時、パシリと手を取られ俺は元の場所へ戻ることになる。
なんならちょっとよろけて鼻と鼻が触れ合いそうなほど近くにクリプトの顔がある。
「な、なんだよ…」
あまりに近い距離に何となく恥ずかしくなって僅かに距離をとる。
すると徐にアーマーを脱ぎ出すクリプト。
敵はそろそろアーマーを回復する頃だ。
意図が分からずきょとんとしていれば頭を小突かれる。
「とっとと着ろ」
「へ?」
目の前には先程EMPで育てられた紫のアーマー。
俺は今青アーマーだった。
「いいから、早く着て行け!勝つんだろ?」
ようやくクリプトの意思が伝わって思わず口角が上がりそうになったが今は試合中。
ぐっと堪えて無言で紫に光るアーマーを装着し、自分の青アーマーをクリプトに渡す。
「…ありがとよ」
背を向けてそう呟いた。
何も言わないのは性にあわない。
後ろでクリプトが笑った気配がしたが、それには気づかない振りをして俺はウルトを使い、敵へと距離をつめる。
何だかいつもより強くなった気がした。
というより、守られてる安心感というべきか。
「背中は任せろ、ウィット」
聞こえてきた言葉に俺は嬉しさを我慢できず今度こそ笑った。
その試合で見事に俺たちはチャンピオンとなったのだった。
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試合後のインタビューも終わり俺たちはドロップシップへと戻る。
前を歩くクリプトの隣に近づき肩を組む。
「重い、離れろ」
「そう言うなよ〜、俺たち今日最高で最強だったと思わねぇ?」
「ふんっ俺がいるからな。当たり前だ」
「はいはい、確かにあの時お前がアーマーくれなきゃ早々にダウンしてたよ。ありがとな」
素直にお礼を言えばそっぽを向かれた。
「別に、あれが最善だと思ったからだ」
「ふーん、そうか。ま、なんにしろ、なんつーかお前が同じチームにいると安心するんだよな。護られてるっつーか、なんて言えば良いんだ?」
そっぽを向いたままのクリプトの顔を見れば何故か赤くなっている。
はて?
「俺なんか照れるようなこと言ったか?」
「チッ無自覚かよ…」
小さな声でクリプトが何か言ったので聞き取れない。けれどどこか機嫌が良さそうなのできっと大丈夫だ。
「さてと!チャンピオンにもなったことだし呑みでも行こうぜ!」
「…いいだろう」
「え、いいの?」
「嫌なら結構だ。俺は帰る」
「まてまてまて!ちょっと驚いただけだって!よし、なら俺の店に来いよ!ご馳走してやるからさ」
試合中とは反対に今度は俺がクリプトの手を取る。
「行こうぜ!」
「おいひっぱるな小僧」
「いーから行くぞー!」
今にもスキップしそうになってしまうくらいに俺は今上機嫌。
なんでだろうな?
ま、いっか。
クリプトも嬉しそうだし。