みなさんの戦いの記録〜デート編〜スマホに視線を落として、ゲームをして待っていると視界が黒に覆われた。まぶたにひんやりとした感覚が伝わる。
後ろから、たおやかでいて人間味のないような良い匂いがした。
「だーれだ」
「わ、びっくりした」
「いえ〜い成功」
んはは!と音符が付いているような声を転がすと、凪の視界を遮る手をパ!!と外した。
「玲王以外だったら普通に怖いよ」
本当は、液晶に反射した玲王が見えていたので、びっくりなんて少しも凪はしていない。だが、「ワ!」と凪が驚くとひどく玲王は大層嬉しそうなかぐや姫の笑い方をしてくれるので凪は玲王の「ぷちサプライズ」に毎度きちんと驚くのだった。
「怖い?ナンパじゃねぇか?それ」
「そんなナンパ女男問わずされてるの?怖い」
喉から笑うような音をさせると、玲王は左目を細めた。さらに細めていない方の眉毛をあげる。整えたりなんて最低限らしいのだが、形の美しいまゆは多少歪んでも酷く美しくて、凪は毎回びっくりする。
片目だけ細めるのは玲王の癖だ。
その癖は年齢と不釣り合いに随分とセクシーで、普段のお上品さを破くような仕草が凪は好きだった。
なぜなら、普段着物を着て畳の匂いをさせそうなほどに格式ばった美しい男がただの雄になるような気がして、それがなんだか心をゆるされているようでたまらなく凪は嬉しいから。
この話をすると玲王は笑って「うちの実家畳ねぇよ」と笑って、浴衣デートの予定をたててくれた。
そんな雄が、ニヤリと綺麗な犬歯を出して笑う。そうして指をまっすぐに四本立てた。
「じゃあ、今日のデートはぶっ続けで映画四本みま〜す」
「ワ、本気で言ってる?」
その日心の底から凪は「ワァ!」と思ったのである。
仮出所での出来事であった。
「マキマさんとデートした気分だった」
マキマさんとデンジのデート回ってこんな感じだったんだ。それが、凪の初デートの最初の感想である。だから、そのまま結果報告会でもそうはっきりと言うしかなかった。
「何それ詳しく」
結果報告会には、潔そして國神、千切がいる。凪が玲王に片思いを続けていた頃からの「凪を応援しよう会」である。そうしてお付き合いが成立してからは「カップルを応援しよう会」にランクアップしたのだ。千切は完全に楽しんでいる。
「映画四本連続で見てきた。ちっちゃい個人経営のところで」
渋くて良いところだった。どうも御影の関係者が引退後、道楽で行っている所らしく高級なソファーに放映のタイミングもバラバラな映画たち。
空気も、そうして安全性も含めて御影のお墨付きデートスポットらしい。
玲王がその外側のみ寂れた映画館を紹介した時に少し照れながら「一回だけ親父と一緒にいった子供の頃から、ここで映画を見るのが好きだったんだ。凪に知ってほしくて」と言ったので、玲王にとっても大切な場所であることはわかった。家庭環境が垣間見えるしょっぺー話だ。
多分本人は温まる話のつもりで言ってるあたり切ない。
「なんでそんなことに」
話を聞いた潔は、困った顔をしたまま、ゆっくり眉間を揉み込んだ。なぜなら、凪に映画デートを勧めたのは潔だからである。ああでもない、こうでもないと童貞たちが複数人集まって、必死に考えたのだ。
「映画デートして夜ご飯を食べる算段たち消えたな」
「うん。当たり前みたいにリムジンで家に送られてしまった」
「ナチュラルにエスコートされてんじゃねぇか」
「お前の彼氏お前を可愛がるの上手なんだから」
「あいつ、オスカースト最上位よ?きちんと気合入れなきゃだったろ」
「なんで恋人とデートなのにここまで責められている?」
映画を二本見たらちょうどお昼時になっていて、するとそれはまぁ美味しいハンバーガーが当たり前のように出てきたので凪と玲王は二人は食べた。おそらく、関係者である映画館の持ち主がうまく気を回しているようだった。たまにセットのように着いてきたポテトを戯れに食べさせあったりなんてして、そうしてまた二本連続で見た。すると六時過ぎになっていて、映画館を出ると目の前にはリムジンが止まっていたのである。
「元カノいる男のデートとは到底思えない」
「四本も何見てきたんだよ」
「順番は、トゥルーマン・ショー、戦場のメリークリスマス、エターナル・サンシャイン、キューブ」
少なくとも、恋人とのデートで見せるチョイスではない。二本はわかる、好きな映画を選ぶのは理解できる。だが、なぜ残りにデスゲームと戦争映画を選んだのかわからない。しかも最後にキューブをなぜ選んだのか。
「これはひでぇ」
「チョイスに情緒がない」
「デートで見たくない映画だよキューブなんて」
けちょんけちょんに一同は文句を言うしかなかったのである。食堂でサラダをつつきながらワァワァと言った。白熱しすぎて、レタスにはかなりの穴が空いていて、かわいそうな状態であった。
「正直、好きって公言してるロマンス映画の後に人が疑心暗鬼になるやつ見るとは到底思わなかった」
「かわいそ」
「何を考えてこの四本を選んだのか気になってしょうがない。普通、何度繰り返しても君が好きって結論出した映画の後に、ざんねーん!このカップルは死にま〜すって結論出そうな映画見るの?最悪のアンサー出さないでよ」
もぉ。と困ったように眉を寄せて凪は言った。ちなみにキューブを見た時に何もないシーンで、ちょっとだけ玲王が前のめりになったことがほんの少しだけ凪は怖かった。だけれどウキウキしていたので、その時ワァ!玲王可愛いと思ってポップコーンを凪は摘んだのだった。玲王の知り合いの準備したポップコーンはとてつもなく美味しかった。安い大衆向けのポップコーンとは違ってキャラメルがきちんとかかっているのだ。その上、手もベタベタしなかった。
「一回プロの診断仰いだ方がいい気がする。本来必要な情緒ってものを教えてもらおう」
「よかったな凪、情緒ないもの同士上手くいくんじゃねぇか?」
「よせやい、お似合いなんて」
テレテレ、といった具合の顔を凪がしたのでムカ!とした潔は自分の皿のキャベツを滅多刺しにした。凪に当たる勇気は潔にはなかっただって前髪掴みかかってくるし。普段はものに当たったりなんてしないけれど腹が立ってしまったのでしょうがない。串刺しにされたキャベツはきちんと胃に収まるので許してほしい。
「悪口だよ。何が怖いってあいつチェンソーマン知らねぇだろ」
「次のデートは心療内科だな」
「そんなの表に出たら玲王の実家の株が落ちそうなデートだよ」
「抑圧された環境が彼を歪めたんだろうな…」
「そんな嫌な事件を扱うドキュメンタリーの導入みたいな……」
「普通に可哀想になってきた………あいつの実家で育ったら俺どうなるんだろう…」
「多分お前じゃ玲王のパパさんママさんの期待に応えれないから、多分苛烈な教育されないけど。」
「急に火力上げるじゃん」
凪は玲王のことがよくわからなくなっていた。もともと全て理解し合っているわけでは到底なかったのではあるのだが。
何が怖いって、玲王は別にマキマさんの影響を受けていないのだ。素で、凪とのデートの選択で映画四本連続を決め打ちしているのだ。
二人が付き合うようになってから、玲王はあまり取り繕わなくなった。もともと凪の前で猫をかぶっているような男ではなかったが、より顕著になったのだ。もともと「宝物」呼びしているのに凪の部屋に入ることもしなかった男である。自分の環境が普通でないことを自覚しているからか、彼はあまり自分のパーソナルな部分を見せないで生きていたらしいのだが、彼氏になったことで「普通のダチや女にはしないけど、彼氏にはいいか」みたいな部分が出てきたらしい。そこは女と付き合うか男と付き合うかの大きな差であった。
「手ェ握ったりした?」
「できる映画あった?」
「ごめんて」
千切は笑いながら成果を問うと、酷く悲しそうな顔をしてチュン…と見つめてきたので、これまた面白くってつい笑ってしまう。
本当に何の進展も成果も得られなかったらしい。可哀想に。
「良いシーンで手を握る算段だったのに」
「キューブの嫌なシーンで繋いだらよかったじゃん」
「それ、苦手なシーンで目を瞑る子供扱いされるよ多分」
「せめてボデーガードとかであれば………」
もしも凪がキューブの途中でそっと手を握ろうものならば、子供をあやすような慈愛に満ちた表情をして「ン?怖かったか?いいぞ手ェ繋ごうな」と小さな声で囁く玲王の表情がありありと目に浮かぶのである。なまじ面と声が良い分かっこいいし惚れなおしそうだけどそうじゃない。
そんな絶妙に想像できてしまう玲王をみんなで考えて、一同の空気が湿っぽくなった時のことだ。
ズズズとウォーターサーバーから取ってきたお湯に緑茶の粉を混ぜようとずっとパックの封を切ることに尽力していた國神が諦めて、お湯を飲みそうしてつぶやいた。
「童貞の心玲王知らず」
小さめの声で言ったその言葉は随分と響いて、凪だけではなく潔までもを傷つけて通り過ぎた。
「俺を傷つけて楽しい?」
「まぁ、正直分かってはいたよな。」
「好きな映画トゥルーマン・ショーの男だぞ、エグいぐらい映画中のイチャコラの情緒育ってないよ」
「さすが御曹司、俺たちの想像のはるか上を行く」
手慣れている御曹司は彼らの涙ぐましい作戦会議なんてなかったことにするようにぴょんと飛び越えてしまう。
そんなところが凪は好きだと言うのだからなるようになれと言った話でしかないのだが、彼らは毎回相談に乗ってしまうのだ。だって娯楽がサッカー以外に何もないので。普段なら絶対に絡みたくない恋愛ごとだって暇つぶしに消費するのだ。
「次に生かそうぜ」
「明日がある」
「え?これ失敗扱いされてる?」
「失敗以外の何が?」
デートの経験なんてない潔は自分の周囲にいる男たちは凪を除いて(凪も恋人持ちではあるが)それなりにモテることをすっかり忘れて凪のデートを失敗扱いして楽しんだのち、はっきりと言ったのである。
「はいじゃあ解散」
パァン!!!と両手を合わせてしっかり叩いた。
解散の合図である。
さ、遊んだしサッサと戻ろ!と決めたのでそそくさと帰る準備を始めた。
適度に絡む分には楽しいが引き際を間違えると厄介なことになってしまうことを潔たちは経験として学んでいたので、とても迅速で統率のとれた動きだった。
しかしながら、その努力に意味はなかった。
なぜなら凪の方がずっと動きが早かったので。
「次、お家デートの予定取り付けたよ」
す、と玲王とのトーク画面を見せて次の予定を凪は宣言した。
そうして、逃げようとした潔の腕をぐわしっ!!と掴んで千切や國神に向かって戻って来いとアピールする。そうして掴んだ手は離さないまま、もう片方の手を選手宣誓の要領であげてはっきりと言う。
「俺の家で、Netflixのウェンズデーみる予定。次は、次こそはキスします」
「ウェンズデーのどこでキスする要素が?」
「キスできるのか?ティムバートンで…」
「だから呼んだんだよ。なんか、いい案出して。キスする案」
「童貞たちには荷が勝つだろこれ」
「俺らの持ってるラブパワー多分ティムに勝てねぇって」
「お前がティムの何を知ってるんだ」
「そのままオメーに返すわ」
多分ティムバートンじゃ無理だ。アダムスファミリーでキスは難しい。
潔はチャーリーとチョコレート工場しか見てないけれど、そう大きく作風は変わらないであろうと判断した。
「せめて少女漫画の実写とかにしろよ。映画さんサイドにムード作ってもらえ」
「無理だよ、玲王寝ちゃうよ」
「寝るんだ…凪の方が寝そうなのに」
「俺は結構ロマンス系みるから………ねぇ、出してよいい案。せめてキスはしたいよ俺」
「そうは言ってもな」
「そうそう、ちょっと前までお前との関係業務提携って言ってた男だぞ」
「おいやめろ、それ本気で傷ついたんだから」
「あと半年はかかるな」
「君に届けだってもっと早いよ」
「君に届けエアプか?もっとかかるわ」
すげぇんだぞ君に届けは、そう言って急に前のめりになった千切が言った。
どうもお姉さんが世代らしい。ウンウンと後ろで國神が頷いている。
「ポジティブに考えてみようぜ。マキマさんはデンジと付き合わなかったけどお前は今付き合ってる。」
「……それさぁ」
「え、何その顔。」
國神の顔はすごく嫌なことを気がついたとばかりのクシャクシャの顔だ。
「気がついたけど、マキマさんもチェンソーマンしか見てなかったよな。」
「“も“って言った?今お前、人の恋人マキマさんと同じ扱いしてる?」
「だって玲王も最初はお前のサッカーの才能しか見てなかったっぽいし」
「………うん。でも今は違う………から」
スン………とした顔をして凪は露骨にやる気のない無表情になった。
どうもその手の話は凪を深く落ち込ませるらしい。そのまま凪はぐだーと上体を机に倒す。ゴン!と音がしてそのまま凪は顔を上げなかった。そうしてポツリと呟いた。
「あのさ、チクチク言葉禁止にしない?」
「チクチク言葉禁止にするか……」
ノーモアチクチク言葉………と切そうに言って凪はぺしょ………と顔を歪めた。
そうして一同は一応考え始めた。
どうやってティムバートン作品の途中でキスするかを考える。
そうして天使が通ったようになったのち、困ったように千切はため息をついた。
それを見て潔は少し諦めた顔をしてアドバイスをする。
「やっぱ、お前ら別れたら?」
「チクチク言葉禁止って言ったでしょ、暴力に訴えるよ。俺が」
「相談に乗ってもらってる分際でいい度胸だな」
面倒になってしまった潔は適当に、「別れたら」と言った。だって潔はサッカーのみに注視して生きてきたので、正直何か良い案なんかは浮かばないのだ。
適当かつ諦めムードになったことを察したのだろう、ギン!!と凪が威嚇する。大型犬やオオカミの威嚇だ。
「何言ってるの潔。俺に相談できる相手がお前ら以外にいると思ってるの?」
「なぜそこまで堂々と言えるのか」
「はっきり言ったな、友達いませんって」
それはそうだけどさぁ、と深く深くとろけるように凪は諦めに近い声を出した。
「俺は、「はい二人組作って〜」であぶれる子だよ。」
「それは大変だな」
國神はどこに行ってもある程度友人ができるタイプだったので、ひとりぼっちになることはあまりないので現実的な話ではなかった。
けれど、彼は優しいのでとりあえず優しく頷いて話を聞いてやった。
「みんな知らないでしょう、大抵優しい子が「あ、凪くんこっちの班入る…?」って最後ぐらいで聞いてくれるんだよ」
「賢い学校って当たり障りなくするの上手そうだもんな」
白宝にいじめはないのだ。浮いた子はいるかもしれないが。そして凪は浮いた子だ。
大抵浮いた人は同窓会の存在すら認知しないままぬるっと進むので気にもならない。人を居ないようにするには適度な無関心が一番大きいので。
「そんな、俺の人生を変えてくれたのが玲王でした……」
「そうしてその玲王が一番やばかったと」
「キスしたい……」
「性欲を表に出さないデンジくんってこんな感じか」
「そろそろ、よくわかんねぇタイミングでキスされるだろ」
マキマさんもいいタイミングでしてくれたしさ、と潔は凪の肩を叩いて慰めた。
「やめてよ人の恋人のことそんな言い方しないで」
「でもキスしたいんでしょう?」
「正直めちゃくちゃしたいです…」
絞り出すように欲望を言って、ウダウダと頭を凪は振った。ふわふわと玲王が丁寧にドライヤーをした髪が揺れた。
「もっとしっかり、はっきり言ってみ?」
「キスしたい!もっというならエッチしたいです!!」
バァン!!と凪は勢いよく言った。
すると艶やかで、よく通る声が返した。
「へぇー…誰と?」
「玲王と!玲王とキスしたい!セックスもしたいです!」
「いいよ…しよっか。まずはキスからだな」
「ん?」
「凪、後ろ後ろ」
「何?潔、もうドリフは伝わらないと思うよ」
ウザ…と言いながら凪は振り返りそうしてピシャ!と固まった。なぜなら大好きな恋人に大声で「セックスしたい」と言ったところを聞かれたと確信したのだ。
「ひどいなダーリン。愛するハニーの声に気が付かないなんて。ムカつくから舌入れちゃお」
「ん……?ん?!んー!!!!」
「おぉ、すげぇさすが元カノがいる男」
「なんかヌチャヌチャ言ってるすげぇ」
「ん…♡ぁ…♡」
「すげぇ!あの凪が喘いでる!!」
「あいつ抱く気マンマンだったのに、あのノリ抱かれるんじゃねぇか?」
すげぇすげぇと千切が興奮するように言う横で國神が冷静に分析した。
潔は知り合いのディープキスを見るのは少し気まずかったのでほんの少し薄目にした。
それでも見たのは今後の参考になるかもしれないからだ。そうして少しだけ凪に同情した。割とロマンチストな凪のことだ、初めてがディープキスでその上衆人環視の元、さらには自分はても足も出ていないのだ。
現実の凪は手と足をジタバタと動かしているけど。
「すげぇな御影、ワ、おい見ろ凪ちんこ勃ってる」
「デカくね?」
「凪のおちんちんデッカ」
「逆に勃つぐらいのキスを人前でする御影玲王どうなの?」
「御影、御影くんすげぇっすよあのチンチンすごいっすあれ戦闘態勢まだ入ってないっぽっさありますよ」
唇を捕食のように玲王が奪ったあと離し、そうしたのち、ちゅ。と音を立ててもう一度玲王からキスをした。
そうしてくたぁ…と少し力の抜けた凪をジィ…と表情の読めない顔をして見ていた。
正しくは、凪の下半身を見ていた。
そうして、一同は少し離れてその様をジィ…………と眺めていたのだ。
「…………」
「………」
どれぐらい経っただろうか。
シン……と静まりかえった御影が、そっとクタクタの凪を椅子に座らせて、振り返り潔達の方に歩いてきながら、小さく何かを言った。
「た、」
「「「た?」」」
「タイム!」
両手を縦と横で組み合わせて「T」の字に玲王はした。そこそこはっきりと大きな声で主張したのである。
「どうしました御影くん」
「俺、あれ挿れられるの?」
「本人は入れたいみたいですね」
「で、デカくない?」
えぇ?と風呂場で確認したであろうに改めてサイズ感を実感したのか、ほとほと困ったと具合の声を出した。
チロチロと汗を出して、チラチラと凪を見ては「わ、わ」と小さな声をずっと出している。美人な顔と照れた表情がプラスされて、その様はおぼこい処女みたいでほんの少しだけ「おっ」っと思わせる魔力があった。
「頑張れ。」
「次お家デートらしいじゃん。抜きあいっこぐらいしてやれば?」
「抜く時戦闘態勢確認しとけよ、慣らす指針になるだろ」
そう言って千切は片手で丸を作ってもう片方の人差し指を抜き差しした。
セックスのポーズだ。それを見て少し嫌そうな顔を國神はした。彼は下ネタに参加はするけれど露骨な行動は避けるのだ。
「………が、頑張ります」
そう言って、玲王はほんのり顔を赤くして困ったように眉を下げると凪を回収することもないまま、ピャ!!!と勢いよく部屋に戻って行った。
「よかったな凪、次のデートで進展するのは確定したぞ」
「好きな子にチンチン勃たせた所見られた俺に対して言っていいことじゃないよ」
「マ、頑張れ」
「これプレゼント。俺たちから」
そう言ってニヤリと笑った千切の隣にいる國神が黙ってそっと小さな四角形のパッケージを差し出した。有名なブランドのものだ。
「避妊は同性でも。な?」
コンドームである。
あー、アリガト、と嫌そうな表情で受け取ると凪はゆっくりと部屋に帰ってしまい、そうして改めて三人は解散と相成ったのであった。
その後二人が進展したかは潔達の知る由はないが、その後ポヤポヤした顔の御影玲王と異様に調子の良い凪誠士郎が居たことだけは明記しておく。