ふる〜てぃ〜ず“みかん” その日のみかんはちょっとだけ遅刻して、それでもりんごが心配で、ちょっと上の空になってたら……後ろからりんごの叫び声がして、魔法がこっちに飛んでくるのが見えて……それから、眩しくてぎゅっと目を瞑った。
「痛く…ない?」
「みかんちゃんには、痛い思いさせないから。」
「……りん、ご?」
橙色がかかったボブカットの茶髪に、前髪はポンパドール。快活な印象を受ける、尻もちをつく少女は橙木みかん。王立ポームム女学院の中等部2年生だ。
「りんご、なの?」
みかんはもう一度問う。だって、目の前にいるのはさっきまで隣にいたりんごとは姿が違うから。
「うん、大丈夫、りんごだよ。なんで?」
チラリと見えたぱっちりとまつ毛の長いタレ目、そして甘い声。幼なじみのりんごのものだった。
「だって、りんご、その姿。」
「ん?ふぇ!?ふええええええ!?ほんとに変身してる!」
「気づいてなかったの?」
「ゆ、夢だと思ってた。ほんとにふる〜てぃ〜ずみたいになってる。」
「みたい……っていうか、ふる〜てぃ〜ずでしょ。どっからどう見ても。」
「新しい、ふる〜てぃ〜ず……もしかして、じぇら〜と!」
「そんなことより、怪我は?大丈夫?」
パタタっという、軽快な着地音。その方向に目を向ける2人。そこには桃色と紫色をそれぞれ基調としたふる〜てぃ〜ずがいた。
「は、はい、あたしは大丈夫です。」
「りんごも。」
「もー!ペルシコスが大丈夫じゃないよぉ。まさかキィちゃんが弾いてくれたのが飛んでくと思わないよ。向こうでめっちゃ焦りながら見てきてーって蹴飛ばされたんだよ?ぷんぷんだよ?」
「えっと、えっと。」
「ペルシコス?おいてけぼりになっちゃいますよ。あなたは……そう。新たな戦士、メーロンというのね。」
「りんごが……メーロン?」
「私がメーロン?」
「戦士名やんよ!」
ペルシコス、と呼ばれたふる〜てぃ〜ずの足元まで伸びる長い髪……の中からピコっと青い魔法兎が顔を出す。
「メーロンが…チョコの姉さんが落とした1つのすてぃるペースクリスタルをひろってくれてたんやよ。でもりんごはメーロンになった……選ばれし戦士やんよ。拾ってくれてありがとうやんよ。」
りんごのほうは「あ、あれか!」と妙に納得してるようだった。みかんのほうはというとハテナを浮かべている。
「なぁ?ラクスはこの子、どう思うやんよ?」
「急だな。私的には魔力と強い思いが感じ取れるんだけど。」
「ペルシコスのキィちゃんへの思いは負けな」
「ペルシコスーーーー!真面目に聞きな!」
「キィちゃん呼んでるから行くね。」
「自由な先輩たちだこと。……まぁ、おでこな貴女も見込みはあると感じるよ。」
「えっ、え?」
「うーんとね、だから……。」
「みかんも、チョコに力を貸してほしいやんよ。」
そう言って、ラクスに抱かれたチョコはみかんに星型のクリスタルを渡す。
「あたしも、ふる〜てぃ〜ずに?」
「ビビっときたやんよ。」
これでりんごと一緒に、りんごを守れる?それなら、一緒に……!
「わかった、あたしも……うわっ!」
手を差し伸べると、先程のように強い光がみかんを包む。これで、りんごと一緒に……!