INTRODUCTION:君の故郷の話が聞きたい
チャプ、と耳元で波打つ音がした。
——そんなところで寝入ってしまったっけ。
アベンチュリンはゆっくりと目を開いた。世界が白んで、頭がくらくらする。
身体全体が体温と同じ温度の水に浸かっていた。ドリームプールだ。まるで羊水のように身体を包み込んでいる。無重力状態のような気分になる。上も下も忘れてしまったように曖昧だ。
重怠い身体で身じろぎすると、狭いプールの壁面に当たって、チャプ、と水が跳ねる。少し手を持ち上げるだけで精一杯だった。
プールの外で、ガタ、と何かが倒れる音がした。忙しない靴音。
「っ、アベンチュリン!」
まだぼうっとして視線を彷徨わせるアベンチュリンの頭上に影がかかった。じわじわと焦点が合い、やっと物が像を結ぶ。
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