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    kukukuroroooo

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    #性癖パネルトラップ で選んでもらったお題で書いたお話です。
    ほぼ近衛リンクの戦闘シーンで、ラストに少しリンゼルになってます(*´ω`*)

    #リンゼル
    zelink
    #近衛の日

    性癖パネルトラップ 武器を口にくわえて戦闘×近衛リンク③武器を口に咥える×近衛リンク 

     夜陰に乗じて城壁を乗り越えた不審者あり。
     そんな不穏な情報がひそやかに護衛の者たちに伝達されたのは、華やかな宴の最中だった。近衛騎士であり、ゼルダ姫直属の騎士であるリンクは情報に基づき、移動できる範囲内の警戒にあたっていた。真偽不明の情報。目撃者は人か獣か、魔物か……薄暗く判別がつなかったらしい。
     問題はそこではなかった。
    「よりによって今夜か」
     今宵、正装に身を包んだ近衛騎士は帯刀を禁じられていた。伝え聞いた話によればきっかけはささいなものだった。
     宴に合わせて前日入りしていた周辺国の令嬢が、近衛騎士の持つ刃に驚いて転びケガをしたらしい。ケガといっても尻もちをついただけのようだが、危険な目に一度も遭ったことのない令嬢の動揺は大きかった。令嬢の母親の強い要請もあり、会場内を警護する近衛騎士に限り、武器を所持しないことを命じられた。
     偶然か策謀か。
     リンクの護るべき姫は貴族の男と踊っていた。ここにいる間は安心だ。人の目も多く仲間もいる。リンクは視線を姫に向けたまま、バルコニーへと続く扉に近づいた。嫌な予感がした。このバルコニーは直接宴の会場に入れる唯一の場所。目標にしやすい小さなかがり火が一つ。都合良く大樹がそばにあるのはこの窓付近だけ。他は、よほどの習練した者でなければ登れない高い石壁だ。となれば、ここは侵入の要点となる。
     そして、今から演奏される楽曲は声楽を含んだ盛大なもの。物音が聞こえづらくなる。もし、すでに情報が外部に漏れていたとしたら、狙ってくるのはこの曲の間だろう。
     シャンデリアの明かりの下、姫の深い青のドレスが揺れている。男の手に委ねられる腰や引き寄せられる指先が目に入った。一瞬胸が焼けたように熱くなった。視線を外しすぐにその火を消し去る。この場の安全を維持することが仕事だ。リンクはしずかに扉から出ようとした。が、扉の前には着飾った女性がいた。自分を誘うつもりなのだと勘違いした女性がハンカチをおしつけてくる。布地からは香油だろうか花の強い香りがした。リンクは仕草だけで断ったが、ハンカチを羽織留めに押し入れられてしまった。女性に返す時間はない。すばやく一礼して扉から出た。
     予感は当たっていた。
     バルコニーに黒い皮手袋の指がかかっていた。息を止めれば、視野の橋でその指に力が入ってく。無言で一歩を踏み込むと、黒皮の指先を白いブーツの底で踏みつけた。上がる低い呻き。踏みつけたまま乗り上がり、男の手首をつかんだ。手を踏みつけられ、片腕がだらりと下さげた男がそこはいた。覆面をしている。落下させれば逃げるだろう男をすばやく引き上げていく。樹木の影からなにが光った。
    「やはりか」
     放たれたナイフをリンクは手でつかんだ。白い皮手袋が裂け、皮膚がわずかに切れた。血が近衛騎士の品格たる白を赤く染めた。次のナイフを片腕だけで引き上げきった男の体を盾にする。がら空きの背中に仲間のナイフを受け、男がもんどり打つ。二番手が大樹から飛びつき、バルコニーへと登ってくる。ナイフが放たれたのはもっと高い位置。三投目がくる。すばやく口で手袋を引き抜き、あえて動きを止めた。狙い通りに放たれた刃を脱いだ手袋ではたき落とす、と同時につかんだままのナイフの柄で背中に受けた傷にうめく男の眉間を打った。
    「叱られるな」
     ため息まじりにつぶやいて飾緒を引きちぎる。ナイフを口に咥え、気絶した男を飾緒で後ろ手に縛った。相手はイーガ団ではない。ならば一人確保で追えるとリンクは判断した。男の背に刺さったナイフを引き抜く。血の量少なく傷は浅い。バルコニーからのぞきこむと、登ってくる二番手の覆面が見えた。黒ずくめのなかに浮かぶ灰色の目。リンクはナイフを切っ先を下にまっすぐにそれを落とすと、すぐに身を隠す。
     ナイフは品切れのようだ。弦がしなる音と、ナイフを避けた二番手が地面に落下する音が連続して耳に届いた。城壁にぶつかって、矢が床面を転がっていく。
     矢もナイフも当てないと居場所を教えるだけ。
     リンクは呆れた息を吐いた。ガラスが割れれば混乱を招く。王家の面目を守ることも近衛騎士の役目。不審者に侵入されるなどあってはならない。
    「……ク?」
     扉越しに姫の声が近づいているのがわかった。楽曲は終わり、ざわめきが会場を満たしている。姫はバルコニーの様子に気づいていない。気づかせないように戦っていたのだから当然だ。
     窓に近づけば狙い撃たれる危険が高まる。次の矢は爆弾矢かもしれないのだ。リンクは急いで押しつけられたハンカチを引き抜き、かがり火で火を点けた。香油の染みた布はよく燃えた。赤々と窓に炎が映った。
     中の仲間が気づいたようだ。姫の声が騎士の靴音とともに遠ざかっていく。リンクは踵を返すと、ナイフを咥えたまま城壁を飛び降りた。長物より短刀の方が戦いやすい。落下の衝撃で立ち上がれない二番手の若い男を、おそらく射手だろう壮年の男が引きずっている。落ちてくるはずのない城壁から降ってくる近衛騎士に、壮年の男は仲間をあきらめ走り出す。咥えていたナイフで足元を狙う。直前の地面に刺さったナイフに壮年の男の足がもつれた。リンクは着地と同時に指笛を鳴らした。その音は甲高く夜の空に響いた。
     訓練された賊か、王家転覆を謀る者か。どちらにせよ、イーガ団でなくてよかった。あれらは引き際を知っている。武器を持たない今夜、ヤツらに狙われていたら危なかったかもしれない。リンクはひとつ息を吐いた。
     遠く軍用犬の吠え声と兵士の「確保」の声がしていた。
     枝葉を払って会場へと戻る。他の近衛騎士も来賓にすら気づかれないように護りを固めたことだろう。通用口から城内へと入る。途中鏡で身支度を確認した。白手袋は替えのものを受け取る。飾緒だけは対処できなかったが、それは正直に伝えればいいだけ。会場に戻れば案の定、宴はすこしだけ定刻を遅れただけで、決められた予定通りに、最後の乾杯に入っていた。壁の花になることわずか。リンクは姫に呼ばれた。部屋に戻るという姫の護衛につく。
    「バルコニーで何か焼けたようですが、なにかありましたか」と問う姫にリンクは「いいえなにも」と答えた。
    「かが火に飛び込んだ蛾でしょう」
     翡翠の瞳がリンクの目をのぞきこんだ。心配されることなどなにもない。あえて功績を伝える必要もない。
    「……」
     ふいと姫は視線を外す。リンクにはその背中とわずかに見える横顔だけで、姫が不機嫌であるとわかった。何かとと問いたいが、言えば口下手な自分の虚偽を見透かされるかもしれない。いいあぐね、ただその背を追って歩くうちに私室前まできてしまった。
    「どなたかと会っていたのですか」
    「いえ、そんなことは」
    「少し、待っていてもらえますか」
     直立不動で扉が開くのを待った。細く開いた扉から白い手だけが伸びる。その指先に、一輪の花があった。
    「今夜のお礼……です」
     差し出されたのは凜としたただずまいの野の花。受け取るとやさしい香りがした。
    「あの、他の花の香りを消し――いえ、なんでもありません。おやすみなさいリンク」
     引っ込もうとする指先をおもわず捕らえていた。すばやく唇を近づけた。姫の指もやさしい野の花の香りがしている。リンクの吐く息だけがその細い指先にくちづけた。
     するりと手袋の下をすり抜けていく姫の指先。閉じてしまった扉。リンクはその扉に一礼し、花を手にまだ仕事の残る会場へと戻る。そして足を止めた。
     顔が熱い。
     よろめいて壁に寄りかかる。
     最近はいつもそうだった。どんな敵よりも、危機よりも、大切な主君の言動ひとつでリンクの心臓は早鐘を打ち、呼吸は乱れる。今夜は眠れそうもない。手に受けた傷の痛みも、戦いに勝利した高揚も、もう跡形もない。
     あるのはただ、どうしうようもなく持て余すこの熱だけ。
    「はぁ……」
     長い長い吐息が花びらを揺らしていた。
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