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    四 季

    @fourseasongs

    大神、FF6、FF9、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが好きな人です。

    boothでブレワイに因んだ柄のブックカバー配布中:https://shiki-mochi.booth.pm/

    今のところほぼブレワイリンゼルしかない支部:https://www.pixiv.net/users/63517830

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    四 季

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    ティアキン発売前に書き始めたブレワイ百年前ifラブコメ。
     この頃自分の中で、偽装婚姻ネタが流行していたものと思われます(ティアキンでハテノ村のお家とか井戸とか龍の泪とか見てそれどころではなくなった)。
     タイトルもラブコメとついていたので、多分ラブコメになる予定。
     (でもティアキンのラウソニ+姫を書き始めてしまった💦)

    #リンゼル
    zelink
    #ブレワイ
    brawley
    #ゼルダ姫
    princessZelda

    ブレワイリンゼル百年if設定ラブコメ「リンク。
     私と婚約して下さいませんか?」
     ゼルダ姫から告げられたその言葉に、退魔の騎士にして救国の勇者と称えられるリンクは、目を丸くした。

      ※

     平和な昼下がりのハイラル城。その中で、離塔にある姫の研究室だけが、妙な緊張感で満ちていた。
     やがて、室内に、こほん、と小さな空咳の音が響く。その音に、しばし思考を止めていたリンクの意識が引き戻された。
     ハイラル王家を陰で支えるシーカー族らしく、ゼルダの後ろに控えて空咳をしたのは、執政補佐官のインパだった。普段は明朗快活なインパだが、今日この時ばかりはどこか気の毒そうな顔で、戸惑っているリンクの方へ視線を向けた。
    「その、姫様。
     もう少し詳しく説明してあげた方が……」
     普段はきはきと話すインパにしては、言いづらそうに進言するインパに、ゼルダ姫は我に返った後、「そ、そうですね」とこちらもどこか緊張を孕んだ様子で、いまだ戸惑って硬直したままのリンクへと向き合った。

     ──ゼルダ姫とインパの話をまとめると、こうだ。
     先日めでたく厄災が封印され、ハイラルに平和が訪れた。ゼルダはその姫巫女としての責務を全うし、今度はハイラルの姫として、ハイラル復興に意欲的に取り組み始めていた。
     とはいえ、魔物とガーディアンに破壊された城下町の建物の再建、各地への人材の派遣など、復興のための仕事は山積みだった。それに加え、ゼルダは以前からハイラルで問題となっていた教会と貴族との癒着の解消、シーカー族の技術進歩への圧力及び制限の撤廃、部族間における情報伝達の手段の確立なども推し進めていくつもりだった。
     だが実際問題、厄災の封印を終え、姫巫女としての責を果たしたゼルダ姫に貴族たちが求めたのは、ハイラルの復興作業への着手ではなく、「早く結婚し、世継ぎを産むこと」だった。
     そうして矢継ぎ早に、いくつかある派閥の、それぞれの権力者の息がかかった男性たちが、ゼルダの婚約者候補として推挙されるようになったのだ。──
     そこまで話して、ゼルダはため息をついた。話が長くなりそうなので、ゼルダは椅子に腰掛けている。リンクとインパにも着席を勧めたが、二人とも固辞して立ったままだ。ゼルダは立ったままのリンクの顔を見つめた。
     ゼルダの話を聞いていたリンクの表情は、どこか呆然としているように見える。普段の彼が見せる、どこか余裕があるような、ゼルダからすると「本当にこの人は分かっているのかしら?」と思わず考えてしまうような、きょとんとした表情ではない。明らかに呆然としているような表情だ。
     リンクがゼルダの人間関係についてそれほど興味があるとは思えないから、驚くのも無理はないだろうと、ゼルダは結論づけた。そもそも、婚約者候補がたくさんいて困っているなどと、護衛騎士であるリンクに相談できる話でもない。
     自分が今置かれている状況を説明し終えたゼルダは、黙り込んだままのリンクを気にしながらも、話を続けた。
     ──ゼルダが教会と貴族との癒着の解消を目指しているように、ゼルダは特定の派閥や貴族が閨閥を築くことも望んでいない。
     ゼルダやリンクと一緒に戦ったリト族の英傑であるリーバルは、ハイリア人について偏見を抱いていたが、実際、ハイリア人、とりわけ女神の血が濃いとされている王侯貴族は、長きにわたる平和の中、女神の血に課せられた責務を忘れ、選民思想に陥ってしまっている節がある。
     そもそも、「女神の血を受け継ぐ一族」というハイラル王家という存在の特質上、ハイラルでは自然と中央集権制が固まってしまっていた。しかしそれは、ハイラル王家を頂点とするハイラル中央部の有事の際、地方のハイリア人や各地方の部族が独立して行動することができず、一貫した指揮系統がとれないということを意味していた。かつて魔王が復活し、ハイラル王家の姫が身を隠していたとき、危機に瀕していた各部族を救ったのは、単独で姫の救出のため動いていた勇者だった。つまり、ハイラルでは長きにわたり、厄災に対する絶対的な盾であり剣である姫と勇者の存在に頼り、各部族間での相互扶助の制度が整っていない。ゼルダはそう考えたのだ。
     ゼルダはこの数か月間、復興への道のりを歩むハイラルを見てきた。姫巫女として、厄災との戦いにも先陣を切って臨んだ。その中で、ハイリア人だけでない、ゴロン族、ゾーラ族、ゲルド族、リト族……ハイラルに生きる誰しもが、ハイラルの一員として、ハイラルのために戦い、希望を胸にハイラル復興へ進んでいく姿を見た。
     ゼルダは、今の制度を根底から覆そうとは思わない。だが、自分たち王侯貴族は、もっとハイラルに暮らす民、その一人一人の力を信じるべきではないか。ゼルダはそう考えたのだ。
     そして、そのためにはまず、受け継いできた血によって定められた身分ではなく、本人の素質や能力が優れている人間を、姫の婚約者とすれば良いのではないか。ハイラル王家の弱体化を招いたのは、長きに及んだ平和の中で失われた女神への信仰もあるが、閨閥を築いてきた貴族たちの増長が大きな原因だ。ハイラル王家も、姫であるゼルダ自身も、そしてハイラル自身も、変わる時が来たのだ。厄災が封印された今、ゼルダの婚姻を、その象徴とするのだ。──
    「……そういうわけで、貴方に白羽の矢が立ったのです」
     そこまで言って、ゼルダは再び静かにリンクを見つめた。
     リンク自身の身分はそれほど高くないが、その分貴族の権力争いとは無縁だし、長く続く近衛騎士の家系の生まれであるため、出自には何の問題もない。何より、彼がこのハイラルのためにどれだけ貢献してきたかは、リンクの傍にいたゼルダが一番よく知っていた。そしてその実直で誠実な人柄も。そんな彼に、ゼルダがどれだけ心救われたかも。
     リンクは考え込んだ様子で黙っている。インパもちらりと横目でそんなリンクを見つめた。
     ハイラルの未来のため、という大義ももちろんあるが、インパやプルアには、ゼルダが復興や政治の立て直しに忙しいため、結婚を先延ばしにして欲しいという気持ちもあった。シーカー族の技術や、ハイラルに昔から伝わってきた薬学の知識が豊富なゼルダが、ようやくその力を発揮できることに、幼い頃からゼルダを見守ってきたインパやプルアは大いに喜んだし、ゼルダを貴族の権力争いに巻き込むだけのような結婚には、ゼルダを知る誰もが反対だったのだ。
     リンクならばその点、人柄も能力も申し分ない。リンク本人には失礼な話だが、婚約解消がしやすいという後腐れのなさも、この推薦を後押ししていた。
     ゼルダはなるべくリンクの精神的な負担が少なくなるように、言葉を選びながらリンクに語りかけた。
    「貴方も不安な立場に置かれてしまうことになりますから、期限を設けましょう。
     もともと王家に生まれた娘は、成人となる十七歳で婚約者を決め、その次の誕生日──つまり十八歳の誕生日に、正式に婚約を結ぶことが通例です。
     なので、私の次の誕生日を迎える約一年間でいいのです。私の仮の婚約者となって頂けませんか?」
     我ながら、虫の良い話だとは思っている。リンクの忠誠心につけ込んでいるという自覚もあった。
     ゼルダの言葉に、リンクは重々しい様子で顔を上げた。
    「……恐れながら、一つ、確約して頂きたいことがございます」
     リンクが慎重な口ぶりで口を開いた。
    「はい、何でしょう?」
     無理な注文をしているのだ。出来る限りリンクに配慮したいとゼルダは考えていた。そのため、リンクからの申し出に嬉々として耳を傾けようとした。
     だが、次の瞬間、リンクは思わぬことを口にした。
    「婚約は、必ず一年後──姫様の誕生日までに破棄されることを、誓って頂けますでしょうか」
     リンクの言葉に、ゼルダは一瞬、衝撃に息を呑んだ。
     ゼルダはこれまで、姫と護衛の騎士──主従として、リンクとはそれなりに良好な関係を築いてきたつもりだった。リンクに悩みを打ち明け、リンクに自身の好きな研究を手伝ってもらい、通常の主従の垣根を少し踏み越えてしまったと思う部分もあったが、「貴方の立場では言いづらいかもしれませんが、嫌なことは嫌だと言って下さい」と彼には何度も伝えていたし、何か新しい任務や頼み事をする際は、その都度リンクの体調や心情を尋ねることも欠かさなかった。
     ゼルダは彼を親しい友のように考えていた。──否、それよりも強く、異性に対して好ましいと思い、心惹かれる感情を、リンクに寄せてしまっていた。まだ年頃のゼルダが、歳の近い異性であるリンクに対しそのように心を寄せたのも、無理はないだろう。
     だが、リンクはそうではなかったようだ。そのことが、ゼルダの心を、まるで重石を飲み込んだかのように重くした。
     泣きたいような気持ちをこらえ、ゼルダは努めて明るい声で言った。
    「ええ、もちろんです。
     その後は、貴方も好きなように──もちろん、貴方さえ良ければこのまま城で騎士を続けて頂きたいところですが、もし婚約破棄後に私付の騎士として務めることが難しいようでしたら、故郷へ帰るなり、もしくは新たにどこかに領地を与えますので、そこで過ごして頂いても構いません。
     貴方はそれだけの大任を果たして下さったのですから」
     捲し立てるようにそう言うと、ゼルダは、この十年の間で上手くなった作り笑顔をリンクに向けた。
     ゼルダの作り笑顔を見て、リンクがわずかに眉を顰めたような気がしたが、それはこの先一年間で自身の身に降りかかる困難や忍耐を想像してのことだろう。
     自分でそう結論づけておきながら、ゼルダはずきずきと刺すような胸の痛みを止めることができなかった。
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    四 季

    DONEリンクが姫様に自分の家を譲ったことに対する自分なりの考えを二次創作にしようという試み。(改題前:『ホームカミング』)
    帰郷「本当に、良いのですか?」
     ゼルダの問いかけに、リンクははっきり頷き、「はい」と言葉少なに肯定の意を示した。
     リンクのその、言葉少ないながらもゼルダの拒絶を認めない、よく言えば毅然とした、悪く言えば頑ななその態度が、百年と少し前の、まだゼルダの騎士だった頃の彼の姿を思い起こさせるので、ゼルダは小さくため息を吐いた。

     ハイラルを救った姫巫女と勇者である二人がそうして真面目な表情で顔を突き合わせているのは、往時の面影もないほど崩れ、朽ち果ててしまったハイラルの城でも、王家ゆかりの地でもなく、ハイラルの東の果てのハイリア人の村・ハテノ村にある、ごくありふれた民家の中だった。
     家の裏手にあるエボニ山の頂で、いつからか育った桜の樹の花の蕾がほころび始め、吹き下ろす風に混じる匂いや、ラネール山を白く染め上げる万年雪の積もり具合から春の兆しを感じたハテノ村の人びとが、芽吹の季節に向けて農作業を始める、ちょうどそんな頃のことだった。ゼルダの知らないうちに旅支度を整えたリンクが、突然、ゼルダにハテノ村の家を譲り、しばらく旅に出かける──そう告げたのは。
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