鍵の行方隠した者は潮江文次郎なのだと知っていた。どこに隠したのか。あの小さいが重要な鍵が無ければ、あの錠は開かない。
「鍵をどこにやった」
敵前だと言うのに、彼は動揺も困惑も無く、ただ後ろ手に縛られたまま沈黙を保った。視線で示すことが無いよう床に固定された目に睫毛が影を落とし、一見従順な者のように錯覚した。
「隅々まで調べても良いんだぞ」
腿を膝裏で抑え、後ろから抱き込むように両手を這わす。暗器を仕込む場所なら鍵も仕込めるだろう。襟、袂、腰帯、と布越しに肉と骨の感触の他に金属を探る。湯上りに着替えさせたのだから、彼が所持している金属は無いはずだ。そう、隠している鍵以外には。
「衣ではないのか?」
530