生み出したもの留三郎への恋情が抑えても抑えても抑えきれず、現実を見ればいがみ合い、決して恋なんてどうにもならないと知る文次郎が、実体の無いモノに絡め取られていく。留三郎よりも、それを優先していく文次郎。文次郎に恋人でもできたのかと焦る留三郎。
やがて、文次郎が良くないモノと逢引を重ねていることに気付く。
「15、14、13、12、11、10、9」
文次郎の口からカウントダウンが始まる。終わるとき、アレが顕現するだろう。
「やめろ!口を閉じろ!」
怒鳴りながら留三郎は真昼の山を下りていく。低い崖を飛び降り、交差する木の枝を腕で避け、緑のフェンスの先へ。文次郎もその後を追う。影が山から下りてくる。
「急げ!」
文次郎と共に緑のフェンスを乗り越えて振り向くと、フェンスを越えられないモノが文次郎の呼びかけに応じて来たモノが。
よく見れば顔は留三郎。しかし日焼けして松崎しげる色になり、全く別人のよう。体はなぜか丸みがある。そんなことすら吹き飛ばすのが、身にまとう服装。ダメージジーンズというか、横着して履き続けて破けただろうジーンズ。ハイウエストのその上にヘソが見える。そう、上半身はヘソが見える白のピタTシャツ。その上にデニム地のショートジャケット。更に頭にデニム地のバンダナを巻いている。手にはデニム地の指ぬきグローブ。ダサい。ダサさが語彙と恐怖を奪う。
これが文次郎が投影した留三郎なのか。留三郎はこういうものだと認識されているのか。同じく驚愕の表情でそのモノを見ていた留三郎も、あれが自分を模したモノだと気付き絶望へと変化した。その留三郎はローライズジーンズにゆったりめの白T、カーキのアーミーブルゾンなので、ボトムとインナーは合ってたなとか思ってしまった。
「文次郎、なんで……」
絞り出した留三郎の問に、文次郎は観念して答えた。
「俺の側で、日焼けするほど共に……と」
いじらしい。答えは本当にいじらしい。が、それで生まれたのがこの可哀想なほどダサいクリーチャーだと思うと、泣ける。デニムに呪われているのか。これからこの可哀想なほどダサいクリーチャーを消滅させるのか……気が重いなぁ……
という夢を見た。