おとしごろ社会人三年目ともなればサラリーマンの制服、スーツも体に沿ってくる。特に留三郎の向かいの席でジャケットを脱いでシャツの袖を捲くりあげて五杯目の中生を傾けている文次郎は、老け顔と貫禄から社会人十年選手にすら見えてしまう。これで同い年なのだから不思議なものだ。
ラストオーダーの時間だと店員に声を掛けられ、重い腰を上げて店を出る。このまま一人で帰るには物足りない。
「二次会、家でやろうぜ」
「おう」
コンビニで缶ビールを買い込み、ついでにツマミも追加する。エイヒレ愛してる。
まだまだ社会人になりたての、男の一人暮らしの部屋など、シングルベッドが一つに座椅子が一つ。座る場所は適当に、愛用のローテーブルをベッド近くに寄せて買った酒とツマミを乗せれば宴会の続きだ。
「もうさ、全部電子化したいわけよ俺は」
「それが出来れば世話ねぇな」
「おっちゃんたちがな〜スマホ持ってるくせにさ」
「個人事業主が多いとなぁ〜」
「メールだとなぁ、読みやしねぇ」
酒を飲みながら仕事の愚痴を言うなんて、大人になった気分だ。いや気分じゃなくて大人だった。自分の稼いだ金で部屋を借りて一人で暮らして酒を飲んで、大人な事をしている。
「うおっと、留なんか拭くもんねぇか」
隣で文次郎がビールを飲みこぼして顎からネクタイを緩めた胸元を濡らしている。えっちだ。大人だもんな。うん、俺たち同い年の大人だ。同意をとればすることしても良いはずだ。大人だもん。
「なあ、文次郎」
酒臭い顔に同じく酒臭い顔を寄せる。何と言えば通じるか、同意を取る言葉を考える。『寝よう』ではコイツ勝手に眠るし、『抱きたい』ではハグで終わる。前にそうだったもん、俺覚えているもん。
「んだよ」
ニヤニヤ笑う顔に腹もその下も立つ。直截な言葉でないといけない。『セックスしよう』ああでも、もっと明け透けに下品な言い回しがあったな。『ファックしよう』これか。これかな?
迷いと混乱を興奮に乗せて、留三郎は口を開いた。
「ファックスしよう……ぜ???」
真夜中の大爆笑に、両隣から壁ドンをされた。