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    あきら

    @5akiharu

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    あきら

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    結末が家出しちゃったから。現パロ~

    午後の柔らかな陽を受け煌めく、宙を舞う薄く黄色い菓子を、文次郎は諦念の目で追った。また、やってしまった。
    「うぉ!何やってんだよ!」
    「……だから、俺はしないと言ったんだ」
    テーブルの回りの床に散った悲しきポテトチップスを拾い集める。さすがに床に落ちたものはダメだろう。
    幼少の頃から、文次郎は開封が苦手だった。指先を使う細かい作業は指がもつれるし、力加減ができない。小さい頃はそれでも良かった。美しく丁寧なラッピングをビリビリに破り開けても、周りはそんなものだと見守るだけで……そのまま大きくなってしまった。
    ヨーグルトやゼリー、プリンの蓋をすんなり開けられたことなど無い。ツマミだけが取れたり、斜めに一部だけ切れたり。その隙間から中身をこぼすまでがセットだ。食べる時は、蓋の隙間からスプーンを差し込む。スプーンが入らない時は、スプーンで蓋の隙間を広げるという、見目汚雑な食べ方だが、素直に開かない蓋が悪い。
    ポテトチップスなど袋菓子との相性も悪い。優しくすれば開かず、チからを入れると先ほどのように爆発する。勢い余って袋の背中まで裂け、中身かほぼ全て飛び散ることもある。今回は半分は残ったのだから良い方だ。
    「ああもう。残りのポテチは俺が開けておくから、お前はこっち」
    そして呆れ返った留三郎から渡されたのはポッキーの袋だった。
    「おい、ハサミは」
    「はぁ?手で切れるだろ?」
    「『こちら側のどこからでも切れます』ほど信用できないものは無いんだよ!」
    あらゆる開封の中で、文次郎が最も苦手とするものがこれだった。指先では切れない。爪を使っても無理だ。よれて、ひしゃげて、中身まで折れる。そして開かない。ハサミだ。ハサミしか信用できない。
    「こんなの、ほら」
    ひょいと留三郎が別のポッキーの袋を指先でちぎり開けた。
    「今、どうやった!?」
    「どうって、普通に」
    「普通だと!?」
    「普通は普通だろ?遊んでないで、いいから早く開けろよ」
    留三郎は文次郎の手元の、よれて、ひしゃげたポッキー袋に目を落としていた。文次郎だって遊んでいない。真剣に取り組んでいる。
    こんなことなら連れ出し役になれば良かった。
    小平太が率いる男子バレーボール部が地区大会優勝、そのお祝いという口実で伊作の家に集まりサプライズお菓子パーティーをする。そこまでは良い。小平太を長次と仙蔵が連れ出し、伊作と留三郎と文次郎が菓子や飲み物の準備をして。そこまではまぁ良い。伊作が不足を買い出しに行ってしまったのは何故だろう。「鍵を持っているのは僕だから」と宣言して行ったが、よく考えれば理由になっていない。
    ぐしゃぐしゃのポッキー袋を手で揉みながら文次郎は開封を放棄して、留三郎と二人きりというこの状況を恨んだ。
    かさばって重い物を持ち運ぶのは得意だ。金勘定も得意な方だと思う。よりによって菓子の開封という文次郎が最も苦手とするものを、同じく文次郎が最も反発する留三郎と二人でやらせるなど。
    「おい、もんじ!粉々にしてんじゃねえよ」
    「開かないんだから、仕方がないだろ」
    新な菓子に手を出して弾け飛ばさないだけ良いだろうに。溜め息を吐いて更にポッキーを揉む。
    「なあ」
    「あ?」
    「開けるの苦手なのか?」
    今さらな問いに手を止める。
    「だから。しない、と言ってる」
    苦手だと言うのは負けを認めるような気がして、この期に及んでそんな言い方になってしまう。
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