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    eyeaifukamaki

    @aieyeaifukamaki

    今は沢深、仙牧メインに書いてます。たまーに別のも。

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    eyeaifukamaki

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    沢深
    愛を見つける⑤
    ノアside
    深津さんが倒れての病院でのお話
    ノアside、他にもありますが飛ばしてますので、今回が初めてのノアさん視点👀
    紳士な男を目指しました!
    ノアはエージ呼び
    ここで出てくる過換気症候群の症状は実際私が体験した感じをそのまま書いてます。
    あん時は死ぬかと思ったww
    何回かなって2回ほど救急車で運ばれたので、これなると、それなりに大変ww

    #沢深
    depthsOfAMountainStream

    カチカチとキーボードを叩く音だけが響く。はぁっと吐く音が聞こえたのは自分の溜息だ。目の前のベッドで眠っている彼の事を考えていると自然と出てしまう。休憩を兼ねてパソコンの手を止め立ち上がり、すっかり暗くなった外を眺めてカーテンを閉める。その音がうるさかったのか、ずっと眠っていた彼の目がゆっくりと開いた。

    「ノア?」

    少し掠れた小さな声が、ドキッとさせる。こんなに弱っていても彼は美しい。

    「ハイ、カズ。目が覚めた?」

    虚な瞳でこちらを見つめられて、それでも綺麗だなと思ってしまった。

    「ここ…」
    「病院だよ。覚えてる?倒れたの」
    「…ん、誰かが呼んでくれたピョン?」

    私のアシスタントをするようになって、ピョンを強制した。今はこうやってエージと話しをするのと同じように、私にも話してくれる。

    「そう。それで身分証からご両親に連絡が入って、私のところに連絡が来て、一番早く駆けつけれる私が対応したよ」
    「心配、かけたピョン」
    「本当に、めちゃくちゃ心配した。でも命に関わるようなことはなかったから安心して。とりあえず、先生呼ぶね」

    ナースコールを押して、しばらくして看護師が入ってきて、それから先生が加わり、ある程度のチェックをして、倒れた理由を話す。急激なストレスで過換気症候群を誘発して倒れた。過換気症候群は過度なストレスや不安に襲われてなるらしい。更に検査をすると栄養失調と睡眠不足で、点滴と睡眠導入剤が処方された。アメリカにいる時よりはマシになっていたと思っていたが、変わらず体が悲鳴を上げている状態だった。今日は一晩入院して明日には出れるようだ。私も面会時間まではここにいていいと言われ、あとは安静にと退出した。病み上がりの彼をそっとしておく必要はあったが、もうこれ以上は、放ってはおけない。エージと離しても、結局はこんな事になるまで彼は弱りきっていた。だから、こうなった以上、どうしても、これから先のことを話さないといけない。カズとは仕事の話が基本で、ほとんどプライベートの話はしなかったし、その話にならないように避けてきた。でも、もうはっきりさせておく必要がある。カズがこれからどうしたいのか。エージとどういう関係でありたいのか。

    「カズ。今の君にこの話をするのはよくないんだけど、今しかこの話ができない気がする」

    虚ろな瞳でこちらを見るカズは、何を言われるのか分かっているのだろう。ほんの少し光を帯びる。

    「これから先、こういう事がまた起こるかもしれない。だから、素直に話してほしい。エージと何があったのか」
    「………」
    「君とエージがパートナーということは知ってるよ。他のスタッフやチームメイトも気付いてる。だから、エージと何かあったとしても、これからどうしていくか、ちゃんと考えないといけない」

    真剣な私の問いに、光の帯が動いて、鈍く輝く。

    「…パートナーじゃ、ないピョン」
    「…は?」

    この状況で何を言ってるのかと思った。あれだけ取られたくないという態度を取っているエージがパートナーじゃないなんて。

    「そういう関係じゃ、なかったピョン」
    「いや、それはおかしい。エージはいつも君の事を誰にも取られたくないっていう態度だよ」
    「ノアにはそう見えるんだ」

    鈍く光る瞳で悲しげに見つめられて、心が騒めいた。

    「それはどういう意味だい?エージには他にもパートナーがいるって事?」
    「…他にもじゃないピョン。俺はセフレの部類ピョン。他にちゃんとしたパートナーがいるし、多分何人かいるピョン」

    信じられない言葉が次々と私の耳を刺す。あまりにも突拍子のない答えに、カズが何を言っているのか分からなかった。

    「いや、待ってくれ。それはない。あり得ない。あのエージがそんな事」

    私の驚きとは裏腹にカズの瞳は虚ろに輝いたまま、何も否定しない。それはちゃんとした答えがあるからで、焦点が合わず、何処か遠くを見つめるカズの瞳が、本当だと物語っていた。

    「…確信はあるのかい?」

    その問いが核心をついたのか、しばらくは話さなかった。沈黙が続く中で、それでも目をそらさずにカズを見つめると、黙っている事を諦めたのか、震える唇でぽつりぽつりと話し始めた。
    カズの話すそれは、生々しい事実だった。

    高校の時にエージからの告白で初めて体を繋げた。エイジがアメリカに来てからも関係は続いた。カズも最初はエージが自分に好意があると疑ってはいなかったし、徐々にエージの事を好きになっていた。でも、アメリカに来てからエージの部屋で中身の減っている避妊具とジェルを見つけた。それは自分には使われた事がない。明らかな証拠を突きつけられて、そこから不安が広がった。それから紹介したい人がいると言われた。それは特別な意味を含んでいるようで、嫌な予感がした。実際に会うと、予感は的中した。明らかに自分より大事にしていて、挙句、目の前でキスをされた。相手は日本人で、日本人同士のキスは確実に恋人の意味を持つ。そこではっきりと自分の立ち位置を自覚させられた。ただそれからも体は求められた。その日本人が本命かは分からない。でも本命が誰だとしても、高校から一緒にいるカズとエージの関係は、周りが変に思う事はないし、疑いもかけられない。だからずっと一緒にいる事は不自然じゃない。でも、エージが自分を手放さないのは、近くにいるからいつでも欲を吐き出せて、避妊しなくても妊娠しないから。一度、最中に子どもが欲しそうな発言をされた。いつかは欲しいと思ってるんだろうけど、今はまだバスケが重要で、そっちが大事だから、妊娠しないカズが都合がいい。それでも確実に自分以外にも体を繋げている相手はいるわけで、避妊具がある以上、それは近くにいる女性の可能性が高い。将来、結婚する相手がその人なのか別の人になるかは分からないが、子供が欲しいと思った時が潮時で、いつか自分は捨てられる。アメリカに来た当初から、エージのファンからかなりの罵声を浴びせられていた。エージはファンとも親密で、その相手はファンの中にいるのかもしれない。顔を知ってる相手だと、その横で、何事もなかったようにチームにいることができるのか分からない。好きだから体だけの関係でも一緒にいたいという気持ちと、いつか捨てられるという恐怖が常に頭にあった。どうにかしないとと思っていても、自分ではどうしようもなくて、精神が追い込まれていっているのは分かっていた。だから、私から新しい仕事の提案をされ、エージと離れるいい機会だと、提案を受け入れ契約した。それでも活躍するエージの姿は勝手に入ってくるし、共通する人間関係もある。どうしても完璧に断ち切る事はできなくて、それでも仕事に没頭して、少しづつ考えないようになってきた矢先、エージとキスをしていた人物と偶然にも出会ってしまった。エージの名前を出され、やっと蓋をした気持ちが一気に溢れパニックになった。視界が狭まり、うまく呼吸ができなくなって、体の感覚がなくなり、心臓の音だけが耳の中で鳴り響いた。それからは記憶もなくて、気づいたら今ここにいる。

    と、信じられないないような真実を聞かされ、私自身、頭が混乱する。

    「カズ、辛かったね」

    今にもこぼれ落ちそうな水の幕が瞳をキラキラと輝かせている。瞬きをしてぽろんとこぼれた雫を見て、堪らなく抱きしめたくなった。でも、それを我慢し、その涙を救って頬を撫でる。

    「それでも君はエージが好きなんだろう?」
    「…今は、まだ…」
    「そっか。じゃあ、私にもチャンスはあるね」
    「チャンス?」
    「そう、君にアピールするチャンス」
    「…ノア、結婚してないピョン?」
    「結婚はしてたけど、離婚して今はフリーだよ。だから、私にもチャンスはあるよね」
    「…優しい上司としかみれないピョン」
    「最高の褒め言葉で、最高のふり方だね」
    「……ノアのジョーク大好きピョン」
    「ジョークかぁ。まぁ、今はそれでいいよ。辛い事、話してくれてありがとう。これから先のことはまた今度話し合おう。明日朝、迎えに来るから、今日はもう寝て」
    「ん、ありがとピョン」

    カズの綺麗な髪にそっと手を添える。優しく撫でれば、ゆっくりと目を閉じた。睡眠導入剤のせいか、またすぐに眠りについた。その綺麗な髪から唇へと手を伸ばす。ふっくらとした感触を撫でて、顔を近づけ、唇に当たるか当たらないかの際どい辺りで動きを止め、しばらく躊躇って、結局頬にキスをする。エージのことを好きだと言っているカズにキスはできない。でも、いつか、カズがちゃんと答えを出して、この唇を奪える日が来るといいのにと、年甲斐もなく願ってしまった。
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    eyeaifukamaki

    DONEバレンタインなので、甘々な仙牧です。「いくつもの波を超えて 前編」からの4年後の二人が番になった後のカフェで気持ちを伝え合うお話。後編の内容を含む内容がありますが、そもそもまだ後編を書いてないので、牧さんと仙道との間に色々あって、それを乗り越えて番ったんだなと思いながら読んで下さい。仙道視点です。そのうち、店員視点と、モブ客視点も追加したい。重要では無いですが、時代的に携帯が出始めの頃の話
    甘い告白「牧さんこっち」

    手を引いて、目の前のドアを開ける。開けた途端、コーヒーの香ばしい香りがして、心がワクワクした。「いらっしゃいませ」という声と少し驚いた店員さんの顔。「まだいけますか?」と聞けば「大丈夫ですよ」と返ってきた。こういう所にでかい男が二人で来ることが珍しいんだろう。少し迷ってあまり一目に晒されない奥の席に案内された。こじんまりとしたテーブルは、牧さんと顔を合わせてヒソヒソ話をするには、丁度いい空間だった。ここは駅から牧さんの家に行く途中にある、俺が前から気になってたカフェテリア。本当は今日ここに来る予定は全然なかった。牧さんは大学四回生になり、就活を始めた。プロの道に行くかと思ったが、発情期の事を気にして、プロに行くのをやめた。俺はそんな事を気にせずにやればいいと思ったけど、真面目な牧さんはチームに迷惑がかかる事を良しとしなかった。でもそのお陰で、バスケに左右される事なく、こうやって約束してなくても会える時間が増えた。今日は俺の予定が流れて時間が空きダメもとで誘ってみたら、牧さんの予定も丁度終わったところで誘いに乗ってくれて、閉店ギリギリの時間にここに来る事ができた。俺がここに来たかったのは、牧さんの家に行く道すがら、ここの看板のメニューを見ていたから。だから、俺はメニューを見なくても頼む物は決まってる。だけど席に座ると自然とメニューに手がいってしまう。テーブルの横に立てかけてあったノート型のメニューを取り、中を見ると、手書き風な文字で書かれていて、如何にもカフェといった感じだ。やっぱり、男二人が入るには些か不自然な場所だった。
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    eyeaifukamaki

    PROGRESS沢深 監禁②
    沢北が深津さんに対して恋と自覚する話。
    深津狂の女の子がでてます。
    沢北を死ぬほど嫌ってますが協力者です。
    メインキャラでこれからも出てきます。
    誤字脱字確認用
    SIDE 沢北栄治

    中学になると自然と耳に入ってくる名前が何人かいる。中学で活躍してる選手は沢山知ってるし、合宿に参加して仲良くなった奴もいる。その中でも一際目立つ存在は何人かいた。その一人が深津さんだ。プレーもそうだが、それとは別の不思議な雰囲気を持ってる人。なんだか分からないけど、みんな気になる存在として深津さんを見ていた。高校に入ってその答えがわかった。深津さんが人を惹きつけていたのは色気だった。中学の時は色気と表現できるほど、あの雰囲気を理解していなかったが、露わになったうなじや服の間から覗く肌、流れて光る汗が何故か全部いやらしく見えて、近づけばほのかに甘い匂いがする。極め付けはあのぽってりとした唇と少し下がった瞳。無表情なのにどこか柔らかくて、細身ではなくむっちりとした体は見てるだけで堪らなかった。それでもモテるという存在じゃなかったのは、この人の性格だろう。明るくて元気な性格ならもっと目立っていただろうし、注目もされていた。そうじゃないのは深津さんがバスケ以外に興味のない性格で、積極的に話す方でもない。揶揄ったり面白いことを言ったりするけど、賑やかな人じゃない。語尾がおかしいから、そっちが気になって深津さんの魅力に気づかない人もいる。だから、深津さんに夢中になる人間は、どちらかというと、近づかず遠くでずっと見守ってる奴らが多い。言ってしまえばストーカーみたいなもんで、粘着性を持ってるからタチが悪い。老若男女、虜にするから、深津さんを狙う奴はかなり多い。男性はどちらかというとストーカータイプばかりだが、自分に自信のある女性はタイミングがあれば近づいていこうとする。だから、俺はそんな子達の気を俺に向かせた。もう既に深津さんを神聖な目で見ていた俺は、汚れた奴らが深津さんに近づいていくことが嫌だった。あの人は穢れた庶民が触っていい人じゃない。バスケだけに集中させていれば、あの人は輝く。恋愛なんて余計なもので穢さないでもらいたい。あの人に触っていいのは、あの人以上にバスケが上手くて、あの人が信頼できる人物だけ。だから俺が阻止する。絶対に深津さんが誰のものにもならないように。でも、その中に一人落ちない奴がいた。深津さんと同学年の文月麗華(フヅキレイカ)だ。文月は名家と言われる程の名の知れた一族で、政界や経済界にも沢山その名が通っている。麗華の家は父親が血文月総合
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    eyeaifukamaki

    DONE何番煎じかの記憶喪失ネタ。同棲中に沢北が事故にあって深津さんの記憶を無くして、深津さん出ていきます。沢北を狙うモブ女がでてきて、でも沢北は相手をしなくて、なんじゃかんじゃがあってのハッピーエンド。沢北も深津さんもお互い大好きなので、お互いを思って行動します。沢北は最後まで記憶なしです。そしてもう一度恋をするのです。フォルダはR-18に繋がるので、そのうちR-18を載せます。
    もう一度、恋をするside 深津

    まだ少しだけ陽の光が周りを照らしていた場所は、既に照明の光へと姿を変えている。予定の時刻は遥か昔に過ぎ去っていて、スマホの画面とにらみ合うのは既に別の目的へと変わっていた。電話をかけても留守電にすらならない。思い当たる場所にかけてみたが、いい返事は返ってこなかった。コツコツと動く針が、外と同じ光の色を示している。

    『分かってます?時計をプレゼントするって事は、時間を束縛するって事っすよ!俺はそういう意味で渡すんです。だから、受け取るなら…そんな想い全部、ちゃんと貰ってくれないと困るんです』

    受け取って欲しい、でも軽くみられたくない。そんな想いが綯い交ぜになって、怒りたいのか、泣きたいのか、照れてるのか、その全部を混ぜたような、なんとも言えない表情で、おずおずと差し出された手の平の箱。その中に入っていた時計は、あれからもう三年の月日を刻んで、今の俺の腕に収まっている。その針が約束の時間より更に一回りして、先の見えない時間を刻んでいく。
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    eyeaifukamaki

    PROGRESS愛をみつける
    ⑤の後のケイside
    みんなから愛される深津さんが好き
    誤字脱字確認用
    深津さんが倒れた。
    深津さんがノアと契約して離れるものだと思っていたけど、結局俺も、通訳として一緒に行動することを許された。多分、爺ちゃんとの契約だろう。ノアは思ってる以上に忙しくいろんなところに飛び回っていて、そのアシスタントである深津さんも同じように行動する。日本に行くことになって、深津さんも俺もそれぞれ休暇がもらえて、深津さんは実家に帰り、俺は爺ちゃんのところに行った。休暇の間は深津さんの行動は分からなかった。倒れたと連絡があった時はどうやら深津さんは東京にいて、爺ちゃんの会社にいたノアが一番早く病院に駆けつけて対応した。俺が病院に着いて個室に行くと、ベッドの横にテーブルがあってノアがパソコンを広げて仕事をしていた。深津さんは眠っていて、睡眠導入剤を入れられて明日まで起きないと言われた。ノアを背にしてベッドの横に座って深津さんの顔を見れば、涙を流した跡があった。疲れからくる発作で心配ないと言われたけど、そんな事はないと確信した。多分俺がくる前にノアと話をしたんだろう。何かがあったんだとモヤモヤして、このままだと帰るに帰れなくて、ノアに何があったのか聞いた。案の定、話してくれるはずもなく、それでもしつこく問いただすと、カズのプライバシーの事だからと一喝された。分かってる、分かってるけど、倒れるほどになるまで深津さんがおかしくなってしまった理由を知りたかった。いや、理由なんて沢北のことだって分かってる。ただ何があったのかを知りたかった。
    1891

    eyeaifukamaki

    PROGRESS愛をみつける
    ②と③の間の沢北side
    ネトフリ公式ので、萌え散らかしたww
    これ聞いて、ちゃんと深津さんに愛されてるよって思ってるけど、このさぁきたくんは相当自信をなくしておりますww
    ちなみに深津さんは沢北ファンの前では一緒にいないようにしてるので、深津さんと沢北ファンとの接点がなくて、みんな沢深推しなのに誤解されたまま。
    誤字脱字確認用
    『カズがノアとアシスタント契約を結んだらしい』

    それはチーム内でもすぐに噂になった。でも、誰もあまり驚かない。それは深津さんがそういう人材に適してる事を意味していた。まだ早いんじゃないかという意見も聞こえたが、概ね、みんな納得してこの事実を受け入れた。ただ、深津さんはみんなから好かれてる。

    「カズがいないと寂しい」
    「エージ、カズはいつ帰ってくるんだ」

    みんな口々に俺にそう言ってきて、深津さんの情報を聞き出そうとする。でも、そんなのは俺が知りたい。誰よりも深津さんは俺を避けている。これから深津さんの話を聞くことができるのは、俺以外の誰かから。

    なんで?
    どうして?
    俺が嫌だった?
    好きじゃなかった?

    でもよくよく考えたら、深津さんから好きって言われた事がない。高校の時に、俺から告白して、無理矢理体を繋げて、それで今までずっと上手くやってきたから忘れていた。行動で示してたつもりだったけど、馬鹿だな、俺は。深津さんの気持ちをちゃんと聞いたことがない。自分が頑張れば、深津さんは自分のものにできると、ずっと思って行動してきた。それはそれで間違ってはいないけど、それに言葉が伴ってない。深津さんの気持ちも聞いてないし、俺だって、最初の一度きりでそれ以来、ちゃんと気持ちを伝えてない。全部、何もかも、俺の勢いと想いだけで成り立っていた関係だった。だから、今になって、なんで?どうして?と、根本的な疑問しか考えられない。普通なら“好き”が大前提にあって、それとは別にここが嫌だとか、こうしてほしいとか、そういう具体的な問題が出てくるもんだ。でも最初から言葉が足りてないから、何が嫌なのかも分からない。頑張ることだけをやり続けていた俺には、追いかける術を持っていない。正直、これからどう対処すればいいのか、どう動けば正解なのか、全く分からない。動いたら動いたで、何もかも裏目に出そうで、それが原因で本当に深津さんを失いそうで、その恐怖が付き纏って何もできなくなってしまっている。深津さんがいなくなって、十日経ったあたりから、俺のファンも異変に気づき始めた。情報収集は俺より優れているから、もう、どういう状況かも把握している。心配そうに聞いてくるのを、困った顔で返す事しかできなかった。
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