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    eyeaifukamaki

    @aieyeaifukamaki

    今は沢深、仙牧メインに書いてます。たまーに別のも。

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    eyeaifukamaki

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    幼馴染?沢深
    あの夏の日④
    栄治君side
    かず君の部屋でのえいじ君
    これもえいじ君が自分の部屋で…だけど、キスしてるだけだから、きっと普通で大丈夫

    #沢深
    depthsOfAMountainStream

    すぅ、はぁー、ふぅっ…

    気合いを入れる為に深呼吸する。あの最後の日以来、ちゃんと目を見て話すのは八年ぶりだ。今日の部活で新入生の顔は見てるはずだけど、俺自身を覚えてるかは不明。だから、「誰?」っと言われた時のシュミレーションもできている。心の準備は万端。あとはこのドアを叩くだけ。ドアを叩くのに、ここまで緊張するのは初めてだ。でも俺は、この日の為に八年も準備した。中学でも同じところに行けたけど、俺は敢えて高校を選んだ。体と心を整えて、全てにおいて、かず君を包み込めるように。でも、やはり最初の一歩はどうしても躊躇してしまう。

    「よしっ」

    勇気を出してドアを叩く。ドキドキと心臓が高鳴り、扉が開いた瞬間、もうダメだった。最後に別れてから、ずっとずっと求めていた、大好きな人にやっと触れられる。気づけばドアの鍵を閉めていた。

    「かず君」

    俺は話す前に、既にかず君を抱きしめていた。
    この行動は俺の中のシュミレーションに含まれていない。衝動的に。本能で勝手に体が動いていた。でも、もう、後戻りはできない。

    「俺の事、分かる?」

    かず君が俺の事を忘れていたら、今の俺の行動は、かなりの異常者だ。

    「え、いじ、君?」

    はぁ、…
    どうしよう…
    覚えててくれた。

    「嬉しいっ!覚えててくれたんだっ!」

    俺の名前を呼ぶかず君は、すごく目が大きくなってて、めちゃくちゃ可愛い。相変わらず、いい匂いがして堪らない。嬉しくて、さっきよりも力強く抱きしめたら、体のラインがはっきりとわかった。俺の体にぴったりと収まって、引き締まった体に柔らかい肌の感触が、リアルに下半身を直撃する。

    「かず君、会いたかった」

    こうやって触れるのずっと待っていた。あの日から、ストーカーのようにかず君だけを追いかけて。

    「…おれ、も」
    「ほんとっ?嬉しい!…かず君、大好き」

    俺の背中に手を回して、ぎゅうっと抱きついてくるかず君は、あの時と同じ、俺だけのかず君だ。

    「可愛い。かず君、好き。元気になったんだね」

    ずっと見てきたから分かってる。でもこうして触れてると、体がかなり大きくなって本当に元気になったんだと実感する。

    「手術して、今は問題なく運動できるベシ」
    「ベシ⁈その言い方、可愛いね。でも、そっかぁ。元気になったんだ!じゃあ、これからはいっぱい遊べるし、いろんなとこ行けるし、ずっと一緒にいれるね。…あっ、今は、先輩なんだった。先輩ってわかってるけど、二人の時は、昔と同じように話したい。敬語も使いたくないし、かず君って呼びたい。ダメ?」

    正直、ダメと言われても、昔みたいに接してしまう自信がある。それくらい今のかず君は、昔と同じ、ふにゃっと蕩けるような顔で俺を見つめてくる。部活の時とは全然違う顔を、俺だけに見せてくれる。

    「いいベシ。俺もそうしたいベシ」
    「やった!かず君、大好き」

    照れて少し顔を下げる仕草がなんとも可愛い。お陰で赤くなってる耳だけが露になる。その耳元にチュッとキスをすると、びっくりしたのか肩をすくめる。

    「あっ、ごめんね。昔の癖で、つい。…嫌だった?」
    「…嫌じゃ、ないベシ」

    恥ずかしいのか、俺の首元に顔を押し付けて、顔を見せてくれない。

    「ほんとっ!良かったぁ…。嫌われたらどうしようかと思った。じゃあ、二人きりの時は、これからもやっていい?」
    「…いい、ベシ」

    かず君の頭が、鼻の位置にずっとあって、かず君独特の甘い匂いがずっと香って、どんどん俺自身が反応する。

    「かず君は相変わらず可愛いな。今度、いっぱい舐めさせて」

    さすがにこの言葉はまずかったか。それとも俺のギンギンに反応してる下半身に気づいたのか。抱きしめる体が震えてきて、パッと体を離す。

    「ごめんね。嬉しくて調子に乗っちゃった。怖がんないで」

    なのにかず君は、俺の服を掴んできた。

    「ちがっ、」
    「ほんと?嫌じゃない?」
    「…嬉しい、ベシ」

    はぁ、よかった。嫌じゃないらしい。むしろ嬉しいと言われた。でもあの震えがなんなのか、気になるところではある。ずっと見てきたかず君は、幸運な事に人との接触は少ない。だから、強引に事を進めて、怖がらせないようにしないと。

    「良かった。俺もかず君に触れられて超嬉しい。だから、これからも触ったりキスしたりするけど、大丈夫?」
    「うん…昔みたいに、してほしい…ベシ」

    昔みたいにって…

    俺の心配なんて吹き飛ばすみたいに、そんな事を言ってくる。かず君はずっとあの時のまま、本当に純粋だ。今の俺が昔みたいに抱きしめたら、押さえが効かなくなる事を分かってない。分かってないところが最高に素敵だ。真っ白なかず君を早く俺色に染めたい。こうやって腕を引いたらすぐに俺の中に収まるかず君。本当に可愛くて、見えるとこ全部にキスしたくなる。また耳元にチュッとキスをすると、ちゃんとピクンと反応してくれる。

    「じゃあ、今日はもう遅いから、部屋戻るね。また、こうやって来てもいい?」
    「いい、ベシ」
    「やった!じゃあ、おやすみのキスしていい?」

    うんと頷くかず君は、昔の延長線くらいにしか思ってないんだろう。でも、こんなに近くにかず君を感じてるのに、耳や頬だけじゃ収まらない。顎をクイっと持ち上げ、最高に可愛くて、綺麗な顔がアップになる。この唇にすごくキスしたかった。ほんの一瞬、怖がらせないように。ふにっと触れた唇は予想以上に柔らかくて、マショマロみたいだった。

    「初めてしちゃったね。かず君の唇、思ってたよりも、もっと柔らかい。マショマロみたい。ずっとしたかったから、めちゃくちゃ嬉しい。また、いっぱいさせてくれる?」

    赤みを増して、蕩けるようにうんうんと頷くかず君を、これ以上直視したら暴走しそうで、目を逸らす為にぎゅっと抱きしめる。危うく襲いかかるところをどうにか踏みとどまった。でも、これだけ触れ合っていると、またキスしたくなる。この柔らかい頬も大好きだ。消灯時間が迫り、離れたくないけど、離れないといけない。名残惜しく頬を撫で、最後にもう一度キスがしたいと、顔を近づける。目を閉じてくれた瞼にキスをすると、開いた瞳がふるふると淡く揺らいだ。こんな綺麗な顔をこれ以上見たら、もう限界だった。また襲いそうになった腕に力を入れ、触れないように拳を握る。おやすみと言って、忍者のように足早に部屋を出る。俺の動きが早すぎて、呆気に取られてるかず君に、ごめんねと心の中で謝って、そそくさと部屋に戻っていった。部屋に戻ったらすぐに爆発した。今までにない長い射精だった。抱きしめてる間、ビンビンに勃起していたが、幸いにも腰に体が当たらなくて、それはバレずにやり過ごせた。でもバレていたらおそらくそのまま押し倒して、事に及んでいた。そんな失態をしなくて本当に良かった。これでまだ俺は、完璧な男を演じられる。
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    eyeaifukamaki

    DONEバレンタインなので、甘々な仙牧です。「いくつもの波を超えて 前編」からの4年後の二人が番になった後のカフェで気持ちを伝え合うお話。後編の内容を含む内容がありますが、そもそもまだ後編を書いてないので、牧さんと仙道との間に色々あって、それを乗り越えて番ったんだなと思いながら読んで下さい。仙道視点です。そのうち、店員視点と、モブ客視点も追加したい。重要では無いですが、時代的に携帯が出始めの頃の話
    甘い告白「牧さんこっち」

    手を引いて、目の前のドアを開ける。開けた途端、コーヒーの香ばしい香りがして、心がワクワクした。「いらっしゃいませ」という声と少し驚いた店員さんの顔。「まだいけますか?」と聞けば「大丈夫ですよ」と返ってきた。こういう所にでかい男が二人で来ることが珍しいんだろう。少し迷ってあまり一目に晒されない奥の席に案内された。こじんまりとしたテーブルは、牧さんと顔を合わせてヒソヒソ話をするには、丁度いい空間だった。ここは駅から牧さんの家に行く途中にある、俺が前から気になってたカフェテリア。本当は今日ここに来る予定は全然なかった。牧さんは大学四回生になり、就活を始めた。プロの道に行くかと思ったが、発情期の事を気にして、プロに行くのをやめた。俺はそんな事を気にせずにやればいいと思ったけど、真面目な牧さんはチームに迷惑がかかる事を良しとしなかった。でもそのお陰で、バスケに左右される事なく、こうやって約束してなくても会える時間が増えた。今日は俺の予定が流れて時間が空きダメもとで誘ってみたら、牧さんの予定も丁度終わったところで誘いに乗ってくれて、閉店ギリギリの時間にここに来る事ができた。俺がここに来たかったのは、牧さんの家に行く道すがら、ここの看板のメニューを見ていたから。だから、俺はメニューを見なくても頼む物は決まってる。だけど席に座ると自然とメニューに手がいってしまう。テーブルの横に立てかけてあったノート型のメニューを取り、中を見ると、手書き風な文字で書かれていて、如何にもカフェといった感じだ。やっぱり、男二人が入るには些か不自然な場所だった。
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    eyeaifukamaki

    PROGRESS沢深 監禁②
    沢北が深津さんに対して恋と自覚する話。
    深津狂の女の子がでてます。
    沢北を死ぬほど嫌ってますが協力者です。
    メインキャラでこれからも出てきます。
    誤字脱字確認用
    SIDE 沢北栄治

    中学になると自然と耳に入ってくる名前が何人かいる。中学で活躍してる選手は沢山知ってるし、合宿に参加して仲良くなった奴もいる。その中でも一際目立つ存在は何人かいた。その一人が深津さんだ。プレーもそうだが、それとは別の不思議な雰囲気を持ってる人。なんだか分からないけど、みんな気になる存在として深津さんを見ていた。高校に入ってその答えがわかった。深津さんが人を惹きつけていたのは色気だった。中学の時は色気と表現できるほど、あの雰囲気を理解していなかったが、露わになったうなじや服の間から覗く肌、流れて光る汗が何故か全部いやらしく見えて、近づけばほのかに甘い匂いがする。極め付けはあのぽってりとした唇と少し下がった瞳。無表情なのにどこか柔らかくて、細身ではなくむっちりとした体は見てるだけで堪らなかった。それでもモテるという存在じゃなかったのは、この人の性格だろう。明るくて元気な性格ならもっと目立っていただろうし、注目もされていた。そうじゃないのは深津さんがバスケ以外に興味のない性格で、積極的に話す方でもない。揶揄ったり面白いことを言ったりするけど、賑やかな人じゃない。語尾がおかしいから、そっちが気になって深津さんの魅力に気づかない人もいる。だから、深津さんに夢中になる人間は、どちらかというと、近づかず遠くでずっと見守ってる奴らが多い。言ってしまえばストーカーみたいなもんで、粘着性を持ってるからタチが悪い。老若男女、虜にするから、深津さんを狙う奴はかなり多い。男性はどちらかというとストーカータイプばかりだが、自分に自信のある女性はタイミングがあれば近づいていこうとする。だから、俺はそんな子達の気を俺に向かせた。もう既に深津さんを神聖な目で見ていた俺は、汚れた奴らが深津さんに近づいていくことが嫌だった。あの人は穢れた庶民が触っていい人じゃない。バスケだけに集中させていれば、あの人は輝く。恋愛なんて余計なもので穢さないでもらいたい。あの人に触っていいのは、あの人以上にバスケが上手くて、あの人が信頼できる人物だけ。だから俺が阻止する。絶対に深津さんが誰のものにもならないように。でも、その中に一人落ちない奴がいた。深津さんと同学年の文月麗華(フヅキレイカ)だ。文月は名家と言われる程の名の知れた一族で、政界や経済界にも沢山その名が通っている。麗華の家は父親が血文月総合
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    eyeaifukamaki

    DONE何番煎じかの記憶喪失ネタ。同棲中に沢北が事故にあって深津さんの記憶を無くして、深津さん出ていきます。沢北を狙うモブ女がでてきて、でも沢北は相手をしなくて、なんじゃかんじゃがあってのハッピーエンド。沢北も深津さんもお互い大好きなので、お互いを思って行動します。沢北は最後まで記憶なしです。そしてもう一度恋をするのです。フォルダはR-18に繋がるので、そのうちR-18を載せます。
    もう一度、恋をするside 深津

    まだ少しだけ陽の光が周りを照らしていた場所は、既に照明の光へと姿を変えている。予定の時刻は遥か昔に過ぎ去っていて、スマホの画面とにらみ合うのは既に別の目的へと変わっていた。電話をかけても留守電にすらならない。思い当たる場所にかけてみたが、いい返事は返ってこなかった。コツコツと動く針が、外と同じ光の色を示している。

    『分かってます?時計をプレゼントするって事は、時間を束縛するって事っすよ!俺はそういう意味で渡すんです。だから、受け取るなら…そんな想い全部、ちゃんと貰ってくれないと困るんです』

    受け取って欲しい、でも軽くみられたくない。そんな想いが綯い交ぜになって、怒りたいのか、泣きたいのか、照れてるのか、その全部を混ぜたような、なんとも言えない表情で、おずおずと差し出された手の平の箱。その中に入っていた時計は、あれからもう三年の月日を刻んで、今の俺の腕に収まっている。その針が約束の時間より更に一回りして、先の見えない時間を刻んでいく。
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    eyeaifukamaki

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    ⑤の後のケイside
    みんなから愛される深津さんが好き
    誤字脱字確認用
    深津さんが倒れた。
    深津さんがノアと契約して離れるものだと思っていたけど、結局俺も、通訳として一緒に行動することを許された。多分、爺ちゃんとの契約だろう。ノアは思ってる以上に忙しくいろんなところに飛び回っていて、そのアシスタントである深津さんも同じように行動する。日本に行くことになって、深津さんも俺もそれぞれ休暇がもらえて、深津さんは実家に帰り、俺は爺ちゃんのところに行った。休暇の間は深津さんの行動は分からなかった。倒れたと連絡があった時はどうやら深津さんは東京にいて、爺ちゃんの会社にいたノアが一番早く病院に駆けつけて対応した。俺が病院に着いて個室に行くと、ベッドの横にテーブルがあってノアがパソコンを広げて仕事をしていた。深津さんは眠っていて、睡眠導入剤を入れられて明日まで起きないと言われた。ノアを背にしてベッドの横に座って深津さんの顔を見れば、涙を流した跡があった。疲れからくる発作で心配ないと言われたけど、そんな事はないと確信した。多分俺がくる前にノアと話をしたんだろう。何かがあったんだとモヤモヤして、このままだと帰るに帰れなくて、ノアに何があったのか聞いた。案の定、話してくれるはずもなく、それでもしつこく問いただすと、カズのプライバシーの事だからと一喝された。分かってる、分かってるけど、倒れるほどになるまで深津さんがおかしくなってしまった理由を知りたかった。いや、理由なんて沢北のことだって分かってる。ただ何があったのかを知りたかった。
    1891

    eyeaifukamaki

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    ②と③の間の沢北side
    ネトフリ公式ので、萌え散らかしたww
    これ聞いて、ちゃんと深津さんに愛されてるよって思ってるけど、このさぁきたくんは相当自信をなくしておりますww
    ちなみに深津さんは沢北ファンの前では一緒にいないようにしてるので、深津さんと沢北ファンとの接点がなくて、みんな沢深推しなのに誤解されたまま。
    誤字脱字確認用
    『カズがノアとアシスタント契約を結んだらしい』

    それはチーム内でもすぐに噂になった。でも、誰もあまり驚かない。それは深津さんがそういう人材に適してる事を意味していた。まだ早いんじゃないかという意見も聞こえたが、概ね、みんな納得してこの事実を受け入れた。ただ、深津さんはみんなから好かれてる。

    「カズがいないと寂しい」
    「エージ、カズはいつ帰ってくるんだ」

    みんな口々に俺にそう言ってきて、深津さんの情報を聞き出そうとする。でも、そんなのは俺が知りたい。誰よりも深津さんは俺を避けている。これから深津さんの話を聞くことができるのは、俺以外の誰かから。

    なんで?
    どうして?
    俺が嫌だった?
    好きじゃなかった?

    でもよくよく考えたら、深津さんから好きって言われた事がない。高校の時に、俺から告白して、無理矢理体を繋げて、それで今までずっと上手くやってきたから忘れていた。行動で示してたつもりだったけど、馬鹿だな、俺は。深津さんの気持ちをちゃんと聞いたことがない。自分が頑張れば、深津さんは自分のものにできると、ずっと思って行動してきた。それはそれで間違ってはいないけど、それに言葉が伴ってない。深津さんの気持ちも聞いてないし、俺だって、最初の一度きりでそれ以来、ちゃんと気持ちを伝えてない。全部、何もかも、俺の勢いと想いだけで成り立っていた関係だった。だから、今になって、なんで?どうして?と、根本的な疑問しか考えられない。普通なら“好き”が大前提にあって、それとは別にここが嫌だとか、こうしてほしいとか、そういう具体的な問題が出てくるもんだ。でも最初から言葉が足りてないから、何が嫌なのかも分からない。頑張ることだけをやり続けていた俺には、追いかける術を持っていない。正直、これからどう対処すればいいのか、どう動けば正解なのか、全く分からない。動いたら動いたで、何もかも裏目に出そうで、それが原因で本当に深津さんを失いそうで、その恐怖が付き纏って何もできなくなってしまっている。深津さんがいなくなって、十日経ったあたりから、俺のファンも異変に気づき始めた。情報収集は俺より優れているから、もう、どういう状況かも把握している。心配そうに聞いてくるのを、困った顔で返す事しかできなかった。
    2204

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    「速水くん達どうしちゃったのかな?」
     僕の隣で一緒にラッシュを確かめていた監督もさっぱりだという風に頭を振って尋ねてくる。
    「シンデレラに靴を返しに行ったんですよ。ほら」
    はじめは何がなんだかわからなかったけれど、僕はすぐに二人が何をしに行ったのか理解した。
     赤信号に変わった後の大通りにはさっきまであった人ごみが嘘のように誰もおらず、車だけがひっきりなしに行き交っている。車の向こう側から切れ切れに見える二人はベビーカーと若い夫婦を囲んで楽しそうに話していた。ぺこぺこと頭を下げて恐縮しきっている夫婦を宥めるようにヒロが手を振った。その右手には赤いスニーカーが握られている。手のひらにすっぽりと収まるぐらい小さなサイズだ。カヅキがヒロの背を軽く押す。ヒロは照れたように微笑んで肩をすくめるとベビーカーの前に跪いた。赤ちゃんは落とした靴にぴったりの小さな足をばたつかせる。ヒロはその左足をうやうやしく包んで爪先からスニーカーを履かせていく。
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