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    #毎月25日はK暁デー
    【ジューンブライド】【ボーナス】【願い事】

    ※純度100%けあきです!!!
    ※ナチュラルに全員生きています

    ##K暁

    白いタキシード姿の若い男が赤い絨毯に片膝をつき恭しく目の前の人の左手を掬い上げる。
    「僕と結婚してください」
    普段は柔和な印象を受ける目は真剣な色で己の指先を見つめている。シンプルだが決して安物ではないプラチナリングはステンドグラスから差す陽を受け一段と光輝いて見える。それがゆっくりと慎重に左手薬指に納められる。サイズもピッタリだ。秘かに安堵する息を飲み込んでセットした髪が崩れぬよう気を遣いながら愛する人の顔を見上げる。
    指輪と同じように陽光を背に受け輝くその人はしっかりとした声で応えた。
    「いや、何でオレがプロポーズされる側なんだよ」

    このチャペルはとある観光地のホテルに併設されたもので大々的に結婚式をするよりもブライドフォトを撮る場所である。勿論ここでプロポーズをする恋人たちもいて、ホテルスタッフは翌年の予約を楽しみにしていたのだが数ヵ月前から『このチャペルでプロポーズすると不幸が起こる』という噂がまことしやかに囁かれるようになった。『このチャペルでプロポーズすると破局する』という噂ならデートスポットでよくある嫌なタイプの通過儀礼のようなものではね除けようと思うのだが『不幸が起こる』という文言が気にかかった。しかも実際に『事故に合った』『病気が見つかった』といった実例も挙がるのだから噂は信憑性を増してしまい終いには『あのチャペルにはプロポーズして結婚間近で死んだ霊がいる』とインターネットに書き込みがされた。
    「というわけで実際にカップルがプロポーズしてみようってなったのにKKが柄じゃないって渋ったんじゃん」
    プラチナリングをスタッフに返しながら暁人は状況を確認する。女性スタッフは何故か顔を赤らめているが熱があるのだろうか、大丈夫かと暁人が尋ねると興奮気味に大丈夫ですと返ってきた。
    「される方も柄じゃねえだろ」
    「雛人形の着ぐるみを着た時もそうだったね」
    猫又の依頼でお内裏様を見せられた時にオレは着ないと速攻拒否したので暁人が着ると今度はお雛様が出てきてなんやかんやでKKが着たのだった。
    「あの時は二倍の報酬が貰えてよかったよね」
    「……猫又にしては太っ腹だったな」
    今日は残念ながら二人一組での契約なので臨時収入は見込めそうにない。
    「大体、プロポーズするのにその格好の必要はないだろ」
    KKはいつもの草臥れたスーツにロングコートで、この場からは浮いているしいかにも事件があったように見える。
    「少しでも噂を払拭するためにフォトモデルになってほしいって頼まれたんだよ。顔は写らないようにしてくれるからいいかなって思って」
    KKも一眼レフカメラを持ったスタッフが一定の距離で暁人を撮影しているのには気づいているが、一体どこで話を受けたのか。
    「分散して探索したのが失敗だったか」
    「結局チャペル以外は何も感じなかったね」
    「そういう意味じゃねえよ……まあそっちも事実だが」
    当初の予想通りカップルに恨みを持つ悪霊の仕業だろうが尻尾を出さなければ掴めない。
    スタッフたちには下がってもらって再び霊視しても反応はない。せめて写真に映っていればと二人はカメラマンの現像を待つことにした。
    「僕は本気なのに」
    ベンチに腰掛けぼやく暁人を横目にKKははめられたままの指輪を撫でた。給料三ヶ月分も今は昔。悲しいかな凛子とエドの資金繰りで生活を保証されている身分ではこちらが副業の暁人と違い賞与も出ない。それでも。
    「……数珠は奮発したんだぞ」
    怨み節のような声にえ、と暁人が顔を上げる。
    「言っただろ、オマエを護るための特別製だと」
    「う、うん」
    暁人の左腕にはまっている数珠は黒の大玉と金の小玉のシンプルなもので、タキシードには似合わないが外す選択肢は暁人にはなかった。理由はKKの言った通りだ。
    「オレは前に指輪を棄てた。端金になればいいと思って嫁に渡した。オマエの両親の指輪は兄妹で持ってるんだろ」
    暁人は母親の、麻里は父親のものを御守りとして持っている。袋はKKの知り合いの宮司に作ってもらった。
    「比べるわけじゃねえが……オレとオマエは違うだろ」
    「……うん」
    「オレが死んだらオマエを地獄に道連れにする」
    KKは天国に行くと思うけど、と暁人は返すがいつもの通りそんなわけがないと素っ気ない。一度死んだKKにとって今の人生はボーナスタイムらしい。
    「死すらオレたちを分かつことはない……そうだろ?」
    「うん」
    KKの暁人への感情は強い執着だ。天国か地獄かはともかく、とんでもなく強い悪霊にはなるだろう。
    そしてそれは暁人も同じだ。
    「KKが本気なのは伝わってるよ。僕は本気でKKのタキシード姿が見たかっただけ」
    「それこそどうかしてるぜ……っと、どうやら悪霊にもオレたちの本気度が伝わったみたいだぜ」
    波打つように昼の景色から夜のそれに変わっていくのを見ながらその中心の赤黒い塊に二人は臨戦態勢を取る。引き寄せらるように出現するマレビトたち。
    「僕の方がたくさん倒したらブライドフォトしろよ!」
    「それはお願いじゃなくて賭けだぞ」
    文句は言うが負けず嫌いのKKなら必ず乗ってくる。今日こそは勝つぞ、と暁人は意気込んだ。
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    白いタキシード姿の若い男が赤い絨毯に片膝をつき恭しく目の前の人の左手を掬い上げる。
    「僕と結婚してください」
    普段は柔和な印象を受ける目は真剣な色で己の指先を見つめている。シンプルだが決して安物ではないプラチナリングはステンドグラスから差す陽を受け一段と光輝いて見える。それがゆっくりと慎重に左手薬指に納められる。サイズもピッタリだ。秘かに安堵する息を飲み込んでセットした髪が崩れぬよう気を遣いながら愛する人の顔を見上げる。
    指輪と同じように陽光を背に受け輝くその人はしっかりとした声で応えた。
    「いや、何でオレがプロポーズされる側なんだよ」

    このチャペルはとある観光地のホテルに併設されたもので大々的に結婚式をするよりもブライドフォトを撮る場所である。勿論ここでプロポーズをする恋人たちもいて、ホテルスタッフは翌年の予約を楽しみにしていたのだが数ヵ月前から『このチャペルでプロポーズすると不幸が起こる』という噂がまことしやかに囁かれるようになった。『このチャペルでプロポーズすると破局する』という噂ならデートスポットでよくある嫌なタイプの通過儀礼のようなものではね除けようと思うのだが『不幸が起こる』という文言が気にかかった。しかも実際に『事故に合った』『病気が見つかった』といった実例も挙がるのだから噂は信憑性を増してしまい終いには『あのチャペルにはプロポーズして結婚間近で死んだ霊がいる』とインターネットに書き込みがされた。
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    白いタキシード姿の若い男が赤い絨毯に片膝をつき恭しく目の前の人の左手を掬い上げる。
    「僕と結婚してください」
    普段は柔和な印象を受ける目は真剣な色で己の指先を見つめている。シンプルだが決して安物ではないプラチナリングはステンドグラスから差す陽を受け一段と光輝いて見える。それがゆっくりと慎重に左手薬指に納められる。サイズもピッタリだ。秘かに安堵する息を飲み込んでセットした髪が崩れぬよう気を遣いながら愛する人の顔を見上げる。
    指輪と同じように陽光を背に受け輝くその人はしっかりとした声で応えた。
    「いや、何でオレがプロポーズされる側なんだよ」

    このチャペルはとある観光地のホテルに併設されたもので大々的に結婚式をするよりもブライドフォトを撮る場所である。勿論ここでプロポーズをする恋人たちもいて、ホテルスタッフは翌年の予約を楽しみにしていたのだが数ヵ月前から『このチャペルでプロポーズすると不幸が起こる』という噂がまことしやかに囁かれるようになった。『このチャペルでプロポーズすると破局する』という噂ならデートスポットでよくある嫌なタイプの通過儀礼のようなものではね除けようと思うのだが『不幸が起こる』という文言が気にかかった。しかも実際に『事故に合った』『病気が見つかった』といった実例も挙がるのだから噂は信憑性を増してしまい終いには『あのチャペルにはプロポーズして結婚間近で死んだ霊がいる』とインターネットに書き込みがされた。
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