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    ふんわり

    ##K暁

    #毎月25日はK暁デー【秋限定】【芸術】【衣替え】誕生日に何が欲しいなんていかにも相手を理解できていない残念な中年のオッサンのセリフだったが、そんなオッサンを選んだ稀有な青年は目を輝かせた。
    「モノじゃなくてもいい?デートしたい!」
    思い返せば盆前から繁忙期は彼岸まで続くためほぼ毎日顔を合わせていても仕事か、事後処理や家事を頼んだり、そんな相棒としての合瀬ばかりで夜にヤることをヤっていても若者の望むような恋人らしいことをしていない。
    「妖怪展まだやってたよね。それからランチちょっといいところのにしてもいい?」
    「いいぜ」
    以前ならば「好きにしろよ」と返して顰蹙を買っていたKKだが暁人に「そういう時はもちろんって言うんだよ」と正論を説かれて、それでも素直に飲み込めなかったので今のようになっている。
    それでも苦笑して受け入れてくれる暁人の器の大きさに感謝しつつ、KKは博物館の開館日時とルートを調べる。デートには天狗も挟みたくないので一般人と同じように公共交通機関を使う。そんな狭量な自分に今度は苦笑して、和か洋かそれ以外か悩んでいる暁人に今回はオレに任せてくれないかと提案してみる。
    「もちろん」
    輝かしい笑顔で暁人は頷いた。

    企業案件の依頼人に会う時よりもカジュアルよりの身綺麗にして待ち合わせ場所に行く。KKだけでなく待ち合わせする人々は半袖が多い。まだ夏だなと空を見上げ腕時計で十分前を確認するとすぐに暁人がやってきた。
    「早いな」
    「KKこそ」
    はにかむ暁人は髭のないKKは久しぶりと付け足した。そう言われれば元々さほど伸びる性質でないのをいいことに最近はサボりがちだった。
    今時の若者は中年の髭面など不潔に感じるだけだろうに、あの夜の記憶が濃いのか普段は無精髭がある方が嬉しそうな顔をする。けれどもデートともなれば身なりを整え少しでも清潔感のあるように、暁人と並んで歩いて周囲に不審に思われないようにしたいとKKは考えている。
    「今日もKKはカッコいいね」
    知ってか知らずか機嫌よく歩き出した暁人は決して目を引く派手さはないが、目を向ければすぐにわかる精悍な顔立ちと細身ながら筋肉が必要な部分についた体は男らしさを感じる。要するにモテる外見をしている。
    それが今はKKのことしか見えていないし、KKと出かけることしか考えていない。
    昏い優越感を隠しつつ二人は博物館へ他愛のない話をしながら向かった。
    博物館では声量を抑えながらも妖怪についての資料を検分し、それぞれの経験に基づいて議論する。荒唐無稽なものも混じっているが暁人はそれも楽しそうだ。
    KKとしても逐一こういった玉石混淆の資料にケチをつけるつもりはないので己の蘊蓄を披露する。暁人の反応は素っ気ないがいつも最後まで聞いて覚えていてくれるので純粋に嬉しい。
    まるきりオジサンだなと自嘲しつつも二人でしっかりと展示品を見て回り、併設されたカフェで一息ついた。限定の妖怪ドリンクと妖怪スイーツを楽しんで次はランチだと暁人は意気込む。
    まあ彼ならここから女郎にもつれ込んでも完食できるだろう。
    予約した店は洋食店で暁人は意外そうにしていたがキノコとサーモンのクリームパスタを食べた後に誕生日祝いのチョコレートプレートと花火の付いたケーキを見て大いに喜んだ。
    博物館で妖怪のクッキーやら何やらが付いたクレープを食べた時はヒヤリとしたが、KKと違い強靭な胃を持つ暁人は季節の果物が乗ったケーキもペロリと平らげた。
    「スゴい嬉しいしおいしかったよ」
    「そりゃあ良かった」
    それから秋冬物を見に行きたいと言うので付き合う。
    「KKにも見てもらいたくて」
    「オレは流行りなんて知らねえぞ」
    「若者の流行じゃなくてKKの好みの服が欲しいんだよ!」
    拗ねたように言う恋人が世界一可愛い。
    胸を抑えて叫びだしたくなるのをこらえてKKはそうかよとぶっきらぼうに返した。セットしていなければ頭を撫でたのに、と思いながら。
    ついでに暁人好みのKKの服も買って、ここまで全部KKがお金を出していたのでここ暁人が払いたいと言うので好きにさせた。別に年下の恋人だから奢っていたわけではない。彼の誕生日デートだからだ。なので今日は彼の好きにさせるとKKは決めている。
    「そろそろアジトに行くか」
    今頃麻里を含む全員でパーティーの準備をしてるはずだ。
    「きっとまたケーキがあるね」
    「そうだな」
    連名のケーキも悪くない。しかし、今回ばかりはKK個人から贈りたかったのだ。
    わかってるとばかりに暁人はくふくふ笑う。
    「大丈夫、帰ってる内に消化できるから」
    「マジでオマエの胃はどうなってんだ」
    いつの間にか人混みから離れ、そうなると自然と二人の指が絡まる。
    「来年も再来年もこんな誕生日がいいなあ」
    「オマエが望むなら毎年やってやるよ」
    「それで煙草我慢してるんだ」
    何もかもお見通しの暁人に今日だけだとKKは念押しした。
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