☆佐晴(髪:思慕)
下校チャイムすらなり終わった時刻
明日提出の書類を忘れたことに気づき、舌打ち一つを打ちながらも
(提出しなきゃしないで面倒だからな)だなんて思いながらも回収するために教室に入れば、夕焼けに照らされながら教室に備え付けの机に突っ伏しながら眠る担任がいた。
その姿に、こんなところで寝ても疲れがとれねえだろう、と呆れが9割
そんなに忙しいのか?と心配が1割に突き動かされて、起こしてやろうと動かしたの手を思わず引っ込めてしまったのは。
晴明の表情が、どこまでも柔らかく解けた表情のまま、
「~~~~」と空気に溶けるような細い声で、それでも砂糖を煮詰めた甘さで、俺も知っている教員名を呟いた。
壊したくなる衝動、というのはこういうものを言うのだろうと初めて知った。
不幸になってしまえ、なんて。
俺以外と幸せにならないで、なんて。
とぐろを巻くような思慕のまま
さらりと揺れる射干玉の髪に唇を落とした。
☆たか晴(背中:確認)
「えぐいな・・・」
「だよね」
背中一面に散るのは赤い噛み痕。
骨がうっすらと浮かんでいる背中に散るそれらの痛々しさに思わずため息とともに苦言がまろび出れば、ソレに同意するご本人に思わず眉をひそめてしまう。
「だったら、止めさせろっつーの」
「そう、なんだけどね」
ぺりぺりと大判サイズの絆創膏を貼ってやりながらも言えば、返るのは生返事。
(ちなみにこの絆創膏は『自分の事情に学校の物品使うわけにいかない』という判断のもと、きちんと晴明が購入したものである。本当になにやってるんだよお前は)
「嫌なもん、嫌って言えねえような関係なら、止めろ」
傍で見ていた感じでしか分からねえけど、それでも傍で見てても気づくのだ。
150年片思いをしていた男がどれだけ晴明を大事にしているか、なんて。
感情を読ませないようなザクロ色の瞳が晴明を見るときだけはどろりとした恋情をともし、紳士的な態度の中にこもる力の強さとか。砂糖を煮詰めたような音で、晴明を「おにいさん」と呼ぶのは自分だけだと主張する声だとか。
きっと晴明が一言でも「嫌です」と言えば、この背中中噛み痕をつけるなんていう奇行ですら止まる、筈だ。きっと。多分。知らんけど。
「そう、なんだけどね。でも、」
そうして
どこまでも他人に優しい馬鹿は言うのだ
「150年待たせた子が僕に『確認させて』って言われたら、止められなくて」
と
「そりゃ、しょうがねぇな」
そういわれたらしょうがない
だって俺も荊棘ちゃんにそういわれたら、どんな事されても受け入れるしな。
うん
しょうがない
「…これからも絆創膏は貼ってやるからな」
そうとしか言えないじゃないか。
☆学晴(手首:欲望」
「手を出してください」という言葉のままに腕を差し出せば
ギリリと握る手の強さと、手首に吸い付かれる唇の熱。
そして一瞬の後で、解放された手首に残るのは赤い痣をべろり、と舐めつつ学園長は言う
「上手につきました」
と
「…こんな隠れないところに痣をつけないでください」
あと、ここは学校ですし、まだお日様すら燦々と照っている中ですよ!?と苦言を呈せば
「?だったら深夜の私の部屋で隠れるところにはどれだけつけてもいい、とそういうことですか」
お面をつけているから表情は読めない
読めないのだけれど、心底楽しそうに、意地悪そうに言っているのは分かってしまう。
本当に心底
心底本当に
僕の欲望を引きずり出してやろう、なんてズルい人なんだから。
だから
「ええ。夜に貴女の部屋で、貴方の欲のままにされたいですよ」
一矢報いてもいいじゃないか