ふうふうと、僕の下で荒い息を吐く熱い身体に馬乗りになりながら
震える手で自らのネクタイをするりと解いてはベッドの下に落として、潤む真紅の瞳に視線を合わせて、言う。
「ねぇ、僕の事を知りたくない?」
精一杯の(君の事を教えてよ)を込めて。
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サガ、という文字を漢字辞典でひも解くと
性別や性質など本能的に変えられない、それは主に弱さや卑しさ、いやらしさというものであり。高潔な人間でも逃げられぬものだと定義されているそれら。
そりゃぁそうだ。自らを省みてもそう思う。
例えばセーラーが好きなことだとか
後先考えずに手を伸ばしちゃうところだとか
泣き虫なところとか・・自分でもいっそ心配になる性質なのに消せないそれらがあることを知っているのに。
(君の『サガ』を知っていたはずなのにね)
明君のさが。知識的欲求。
それこを退魔の力でも抑えきれないと僕は知っていたはずなのに。
手をつなぐことが平気になるまでに3か月
キスにはまだまだ慣れないし。
その先なんて、うん、今も想像もできないけれど。
そのたびに明君は『焦らなくてもいいよ』なんて紳士的に待ってくれていたから、「まぁ、明君もあせってないしいっか!』なんて考えていた自分に、ちょっとセーラー断ちしてみろよ!と言いたい。
押さえきれない欲を抑え続ければ、そんなのはいつか決壊するのに決まってる。
ふうふうと、僕の下で荒い息と熱を持つ身体
空間に隙間なく現れる数多の瞳と、それとは別に妖術で現れたわけではない、眼窩に収まる潤んだ目、抑えきれない欲の発露は彼の身体を壊していっていた。
それは緩やかにかもしれないけれど
確実に。
(君が辛いのは、僕は嫌なんだ)
そう思って零れそうになる涙を体をかがめて舐めとったそれは酷くしょっぱかった。
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お兄さんがぺろり、と僕の涙をなめとって「しょっぱい」なんて笑っている。
(ああクソ!!!!!!)
本当にクソだと思う。
主に自分が。というか自分だけが。
完全下校時刻も過ぎた時間。橙色が差し込む廊下であなたが「たかはし先生!」なんて笑って僕に走り寄ってきてくれたから。
叶うはずもない、いっそ腐り果ててしまえと願っていた感情がそのまま零れたら、おにいさんは『嬉しいよ』と綺麗に笑ってくれたから。
そのまま逃がさないようにぎゅうぎゅうと抱きしめた細い体に、せめてと、せめて怖がらせないようにに大事に大事にしようと誓ったんだ。
だから
手を繋げば挙動不審になり
触れるだけのキスですら泡を吹きそうになったり
ドラッグストアで四角いアレの箱を見ただけで挙動不審になったりするお兄さんに対して微笑ましく思っていたのだって本当だし。なんならお兄さんが慣れないのであればそういう行為だってしなくてもいいや、なんて思えていたんだよ。
ただ
僕の本能であり、根幹でもある『欲』がそんな事はなかったというだけで。
(ほんっとうにクソすぎる)
結果心に身体が引きずられて発熱した僕に、馬乗りになる人は僕が予想もつかないほど聡明で常軌を逸した善人が気づかない訳ないじゃないか。
気づいたうえで、手を差し伸べない筈がないじゃないそれに、自分の弱さを恥じ入ると同時に、人たらしの妖たらし、その上神まで誑かす人が自分の為だけに見せる姿に、僕の『欲』が満たされていくのを感じる。
(本当に、愚かが過ぎる)
その二律背反の、いわば欲に抗えない自分自身の心持に、何とか抵抗するように「あんまり、煽らないでよ」なんて言えば。
「えっと。煽られてくれるようにやってるんだけど?」
なんていうんだからさぁ!
(あぁ!もう!!)
馬乗りになったをの人の腕を掴んで、ごろりと反転させれば、さっきとは対照みたいに今度は僕がお兄さんのマウントポジション。
「後悔、しないでね」
(怖がらないでね)と内心で祈りを込めつつ言えば
「受けて立つよ!」と貴方は言った。
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強強☀になるとしたら、きっと「恋愛で不安になっちゃって(てへぺろ)」は解釈違いだな・・・と思って。
でtkhs付き合う→手を出せない→欲を暴走させる→体調崩す・・ってなったら
とりあえず強強だせるんじゃないか・・・みたいな???
きっとこの後、本気のべろちゅーされて気を失うおにいさんと
本気のべろちゅーしたら、なんとか欲が収まったtkhsがいると思います!
えっと・・・もっとポップで可愛い話になる筈だったのになぁ・・・・