抱擁「大丈夫?おっぱい揉む?」
また疲れた顔をしてしまっていたのか、討伐戦を繰り返していたルガディンに何の前触れもなくヴィエラが言った。半ば呆れと困惑が入り混じった表情の彼とは裏腹に、彼女はいつも通りの表情で首を傾げている。鎖骨と胸元が強調された柔らかそうな薄手の生地越しにふにふにと件の箇所に触れながらいいの?と彼女は再確認をとった。
「……お前は、」
溜息を吐きながら口を開いたルガディンに胸元を触る手を止めうんうんとヴィエラが頷いた。その様子を眺めて再度溜息を吐いた彼が指を三本立ててやや口早に話し始める。
「そういう事を気軽に言うな、男がそれをすれば簡単に喜ぶと思うな、俺も男だという危機感を持て」
以上、頼んだ。彼はどこか照れたような表情で顔を逸らし気まずそうに黙り込んだ。後ろでまとめた髪を揺らしながら彼女が少し考え込み、指を立て反論する。
「誰でもいいわけないし、心配で言ってるだけだし、相手はきちんと弁えてるつもりです」
びしり、と立てた指をやや圧倒された様子の彼に突きつけながら続ける。
「……それに、好きでしょ?」
おっぱい。首を傾げ意味深に魅惑的に微笑んだ彼女が鼻先に突き付けて来た指先を、掌でずらし溜息を吐いて彼が小声で言い返す。
「俺だって誰でもいいわけじゃないし、別段それが好きというわけじゃない」
ずらした指先を辿って彼女の手を掴んで引き寄せた。バランスを崩し倒れそうになった彼女を受け止めて、その耳元で囁く。
「……触られた時のそっちの反応を含めて嫌いじゃないだけだ」
珍しくこちらを揶揄うような表情を浮かべた彼を、赤面して距離を取った彼女が軽く睨みつける。耳と胸元を両手でガードしながらこのむっつりめ、と悔しそうに吐き捨てたヴィエラに否定はしない、とルガディンはそのまま笑った。