夏の思い出夕暮れ時、通り雨がすぎひぐらしが鳴く中、俺は宇髄に頼まれていた風鈴を片手に宇髄の屋敷へ向かった。
通り雨の時は、ちょうど風鈴を受けとり雨に打たれずにすんた。雨上がりの独特な匂いとひぐらしの鳴く音と通り雨がすぎ涼しさがひいた夏独特の蒸し暑さが五感を刺激される。
屋敷に着くと宇髄が出迎えてくれた。
「さっきはすごい雨だったなぁ、まああがれよ」
「通り雨で一気にすずしくなった。アハハハ、お邪魔する」
一週間前におわれた柱会議の帰り、宇髄から相談を受けた。
3人いる嫁の一人が、お気に入りの風鈴を吊るす時手が滑って落と壊れてしまい悲しんでいる。
数日後に誕生日で風鈴の贈り物をしたいが音色の良い風鈴知らねぇーか、と。
「俺が任務から帰ってくるまで出すのまちゃーいいのに、まぁ、怪我なくてよかったけどな」
「うむ、怪我なくてよかった。任務から帰った時に、宇髄に風鈴の音色聞かせたかったんだろう?煉獄家にある風鈴は、綺麗な音色をしている。それでよかったら今から見に行こう!! 」
「縁側で風鈴の音色聞きながらうたた寝するからなッ。おい、急だなー今からか? 」
「今からだ。いつ何時、任務が入るかわからんからな。アハハ~、実際にみて手に触れた方かいい。ほら行くぞ宇髄」
俺と宇髄は風鈴を見に行った。彩どり、鮮やかな色からおとなしい色まであった。宇髄は一つひとつ手にとっては音色を確認した。音色は申し分ないが、風鈴自体にこうド派手さがないといい特別に作ってもらう事になった。
数日後、宇髄は任務に行ったため、代わりに俺が風鈴を受け取りに行った。その帰り要より宇髄が屋敷に戻っていると聞き宇髄の屋敷にやってきた。
「風鈴わりぃな。任務からもどったら嫁たち出かけてていねーんだ。何もおもてなしできないが‥‥ 」
「気にしなくていい」
「煉󠄁獄、西瓜食べるか帰りに2つ買ってきたんだ」
縁側に通され中庭を見ると、井戸の近くに桶が置いてあり2つ西瓜が冷やされていた。
食べ頃だろうと宇髄は西瓜を屋敷の中に持って入りお皿に貰えたスイカを片手に戻ってきた。
「待たせたな、食べようぜ」
「うむ、ありがとう。いただこうとしよう」
一口含んだスイカは、程よく冷えており口の中に甘さが広かった。
「うまい、こんなに甘いスイカは久しぶりに食べた」
俺は宇髄の方を向くと、宇髄と目があい微笑んでいた。
そのほほえみに鼓動が鳴り響いた。耳が良い宇髄に聞こえてしまい、宇髄に対する気持ちがバレてしまうのではないかと思うと、顔が一気に熱くった。
「煉󠄁獄、顔赤いが大丈夫か今年の夏は暑いな‥‥‥」
月日は流れ100年後
宇髄の子孫、翔という名前の青年が、高祖父・宇髄天元の写真の前に立っていた。
その写真は、翔の母方宇髄家の仏間にならんでいる一枚で、色男で片目に眼帯をし笑っていた。幼い時、祖父からこの人は鬼をころす仕事をしていて、鬼と戦い命はとり止めたが片目と片腕をなくした聞いた。祖父が亡くなった後、祖母に聞くも詳しくは知らないといったが、祖父叔父や祖父叔母に聞くと宇髄家は元忍の家系だったから嫁が3人いたとか、体がデカくて派手好きだったとか、男前ですっごくモテモテだったけど浮気を1度もしなかったとか、とかいろいろ教えてくれた。確かに、宇髄家系の男性は皆男前で浮気をせず嫁1人に愛情をお注ぎこんでいる。
最後に皆口をそろえて、忍をしている時も沢山の血を流してきた。鬼を倒し助かった命もあったが、なくした命も沢山あった。毎日、仏壇に手を合わせていたと言っていた。そして、高祖父が忍の道を選ばなかったら、今こうして幸せに暮らせているだと。
そんな話を聞いても、鬼が居た世界なんであるのか半信半疑だったが、幸と出会い考えが変わった。
幸は煉󠄁獄の生まれ変わりで、一目みて前世の記録が走馬灯の様によみがえり忍として生きていた時、鬼と戦う俺や、この屋敷で15歳の時に嫁になった3人と一緒に暮らしていた事‥‥名前聞いたことなかったけど、記憶がよみがえってからはわかる‥‥どうも俺は、この写真の高祖父の生まれ変わりらしい‥‥‥
普段生活している分には問題がない。たまに、ふっと転生前の記憶が無くなることがあるが、幸をみると必ず思い出す。愛おしくてたまらず、触れていたい感情と共に‥‥‥
(なんだよ。嫁3人いるのに男が好きだったのかよ。まじかと毎回思うが、幸を好きでたまらない今の俺も同じか‥‥)
幸は転生前の記憶を持っていないようだったが、出会った次の日から一緒に暮らす事になった。
今日、高祖父の法事がとりおこなわれた。祖母が一緒に住んでいる幸と会いたいと言うので連れてきた。高祖父の代から住み築100年前の屋敷は広く、そのまま残されいた。冷房も普段使う部屋しか付いてなく、今俺たちがいる縁側の前の部屋は冷房がついてなく、太陽が照り蒸し暑かった。
「高祖父の法事に付きあわせて悪かったな。ここ幼い時からの俺のお気に入りの場所って知ってるのに冷房つけないんだ。」
「こっちこそ、全く関係ないのに法事にでてしまって‥‥西陽がもろにさして暑い」
「ばあちゃんが連れてこいって言ったんだ、気にする事ねーよ。それより、皆豪酒でびっくりしただろ?俺弱いのに、日本酒1本飲ませて‥‥ねむ」
翔は、縁側に横になりそのまま眠りについてしまった。額には汗がにじみ、ワイシャツは濡れていた。
奥の部屋からおばさんがやってきて、縁側で寝てる翔の姿をみてため息をついた
「あらー、またこんなところで寝て。大きい体してるんだから動かせないわ、困ったわね、このまま寝かしておきましょ。はい、センスとお茶とスイカ食べない。冷房ないからセンスで扇いであげてね。」
「あ‥‥はい」
俺にも寝入っているを翔を動かす事が出来ないからそのまま寝かす事した。受け取ったセンスを広げてびっくりした。紺色の周りには銀が施され両側には小さな粒が何個もつななっている装飾品がついているド派手なセンスで、どこで売ってるのか気になった。
寝顔を見ながらセンスをあおき、スイカを食べた。
ひぐらしが鳴き、風がふわっと吹き縁側に吊るされている風鈴がチリーン、チリーンと綺麗な音色を響かせていた。
辺りが薄暗くなったころ、ふと中庭に目をやると脳裏に光景が移った。
デジャブなのかこの状況を昔見た事があった。
チリーン チリーン
髪を肩まで伸ばし、浴衣を着た男性が1人線香花火をしていた。
パチパチパチと音とともに、綺麗に花が咲いたかのように暗闇に光っていた。
チリーン チリーン
「うむ、喜んでもらえてよかった」
「あー、煉󠄁獄に聞いて助かった。須磨、泣きながらよろこんで、他の嫁もきにいってらぁー」
線香花火の火が消え、大きな塊が地面に落ちた。
「煉獄も線香花火するか」
「うむ、一本もらおう」
パチパチパチ
綺麗に花咲く線香花火が2本並んでいた。1本より明るさが増し、宇髄の顔を見て綺麗にドキドキと鼓動が高鳴った。
隠していた感情が一気に溢れ触れていたい感情が抑えられないでいる。
顔が近づき耳元で囁いてきた。
「線香花火に照らされて、煉󠄁獄きれーだ」
呼吸するのも忘れるくらい緊張した。
この緊張感‥‥初めて翔に出会った時と同じ感覚。たまらなく一緒に居たと思った瞬間。
確か、翔の母方宇髄って言ってたよな。宇髄。宇髄‥‥
「この線香花火は、派手にきれいで、宇髄に似合ってるな。アハハッ」
ん!
宇元、、、宇髄天元
翔は、あの日の宇髄なのか
俺は‥‥‥
俺は、宇髄と一緒に過ごした日を思い出した。禁じられた恋心。けして口にしてはいけない感情、宇髄と出会う度に言いそうになり、何度も飲み込み、一緒に戦った日々。
隠しきれない、押されられない感情に翔の頬にそっと触れた。
目を覚ました翔は伸びをして体を起こし冷房の効いてる部屋へ行こうと立とうとした時背中に顔をうずめた。
「幸どうした?汗でびっしゃだ、そんな事して気持ち悪いだろう? 」
「俺‥‥母方が煉󠄁獄って名前なんだ。昔、鬼と戦い若くして亡くなった人がいると聞いた事があって。その、その人の記憶が恋心と一緒に思い出されて、ここで昔一緒に線香花火したんだ」
「線香花火か‥‥派手に綺麗で、俺に似合うって言ってたな、煉󠄁獄」
「‥宇髄」
翔は振り向きほそっと微笑み、幸の頬に手を置きなでた時、幸は翔の手を優しく握りしめた。
「線香花火に照らされた宇髄も綺麗だった。ずっと宇髄に対する気持ちを隠し続けていて‥‥その‥‥今は隠すことなく一緒にいれて幸せだ」