お題「旅」「春と夏なら雲夢、秋と冬なら雲深不知処がいいな」
突然なにを言い出すかと思った江澄は視線を読んでいた書簡から横にいた藍曦臣の顔に移す。
「雲夢は暑いけれどそれを楽しむ文化があるし、雲深不知処は寒いけれど雲夢にはない文化が育ってる」
前を向いて座る彼は彫刻のようで江澄は見惚れてしまう。
こんなにも美しい人が自分のことが好きだと言う。嘘であってほしいような本当であってほしいような矛盾を抱えていながら返答が先延ばしになっている。
「貴方と過ごすなら互いの文化を教え合って過ごしたいのです」
ずっと前を向いたままだった彼の顔と目線が急にあって胸が高鳴るのがわかる。
「貴方とたくさんの事を体験して、沢山の話をして、沢山の喧嘩もしたいです」
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