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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア3️⃣ Az-12 『母』

     今日の僕は、黒い式典服を纏った面々の代表として、この壇上に上がっていた。四年前このナイトレイブンカレッジに入学した僕らは卒業する。
     本来なら、きっとここでスピーチをするはずだったリドルのことを考えながら、僕は一ヶ月前から考えたスピーチを淀み無く言い終え。拍手の向けられる中、ステップ階段を降りたその時、ハーツラビュル寮生の列の中、あのターコイズブルーがこちらを見た気がした。
     僕は、その視線に何も気づかぬフリをして、その視線をすり抜けた——


     * * *

     あの日、レオナに言われてからの僕は、取引先にできるであろう企業を調べ上げリスト化し、夕焼けの草原の企業や資産家に片っ端から接触して回った。レオナと共にパーティーに出向き名刺を渡して回ることもあれば、レオナの代わりに一人でパーティーや社交場に顔を出した。
     同時に企業には、共同研究という名目で掘り進めるに必要な機材やマジックアイテムの開発を行い、流動するエネルギーの座標確認等の通常業務もこなした。
     そうやって日々、目が回る忙しさに追われていれば、乾いた季節を過ぎ去って雨季に入り、また乾季が訪れ僕のインターンも終わりを告げた。
     会社の同僚には、元から学校を卒業したら社員として働くことが知られていたので、学校に戻って卒業式や、その後の用事などで職場を離れるのもバカンス程度の扱いで「お土産よろしくね」なんて、ちょっとは僕の卒業を祝うぐらいしろよと思わずにはいられなかった。
     そして、卒業式が終わったが、なんだか思ったよりもあっけない。リドルの代わりに卒業式でスピーチをするために、誰にもトップを譲らず過ごした一年間は、あれほど地獄に思えたのに、結局成績でリドルに勝ったわけではないからか、どうしても不完全燃焼だ。
     なんとなく鏡舎のハーツラビュルの鏡をくぐれば、ハーツラビュルの寮旗の下、懐かしい顔が合った。
    「お、アズールくんじゃん! 卒業おめでとう!!」
    「アズール、おめでとう。もしかしてフロイドに会いに来たのか?」
    「ありがとうございます。別にアイツに会いに来たわけではないのですが……それよりもこれは」
     OBであるトレイさんとケイトさんが、袖をまくってなにやら指示を出しながら教科書や専門書や服などの荷物を外に出していた。丁寧に使い込まれたその荷物には見覚えがある。
    「リドルの部屋を片付けてたんだ。今年、エースやデュースがインターンでいなくなるだろ? さすがに、リドルを知らない下級生ばかりになるのに、部屋をそのままにしておくのもな」
    「そうそう、一応ね。これでリドルくんも一緒に卒業っていうか……で、リドルくんの荷物、リドルくんママ的には学園側で全て処分してって言ってて、だから本とか使えそうなものは、欲しい人にどうぞって……だからアズールくんも何か貰っていかない? リドルくんのノートは、全てハーツラビュルの談話室で保管されて、テスト勉強の教本になっちゃってるからあげらんないけど」
     確かに、首席であったリドルのノートなんて、皆、喉から手が出るほど欲しいだろう。それはハーツラビュルの共有財産として今後も使われるのか……これでハーツラビュル全体の成績が上がらなければ、リドルに首を刎ねられそうだ。
    「何か……と言われても」
     欲しいもの……と聞かれ、僕がリドルの未練の塊に視線を向けると、そこには二冊の分厚い本が合った。魔法医術士と法律の書籍。あのタルタロスで語られたリドルの夢がそこにあった。
    「じゃあ、僕はこの二冊をいただいてもいいでしょうか?」
     本の表紙を二人に見せて、笑顔で「ドーゾ」と言われた僕は、フロイドに見つからないように、さっさと鏡をくぐってハーツラビュルを後にした。この本は、一緒に暮らすようになって落ち着いた頃にでもリドルに渡そうと、僕は大切にその二冊を鞄に仕舞った。

     夕焼けの草原に戻る前、卒業式が終わったその足で、僕はリドルと籍を入れるために、義父の事務所がある陽光の国にやってきた。紙一枚のことだが、これで本当の意味でリドルと結婚するのかと考えれば、無意識に緊張している自分がいる。
     人目を気にし、リドルが寝たであろう時間にこっそりと明かりのついた事務所を訪れれば、そこには、腕を組んで仁王立ちした母さんと、その後ろで両手を合わせて『ごめーん!』とでも言いたげな表情の義父がいた……
    「アズール、この数年まともに家に帰ってこなければ、連絡も全くよこさない。それに、卒業式だっていうのに、式が終わったら流石に連絡してくるかと思えばそれも無し。一体、何を考えてるの!?」
    「わ……悪かったよ……でも、僕だって忙しかったんだ。それぐらい親だったら察してくれてもいいだろ」
     久々の再会なのに、怒りにヒートアップした母さんは、引いてくれそうにない。ぐちぐちと出るわ出るわのお小言に「うるさいなぁ」と思わず言ってしまえば、眉を吊り上げてさらに怒った母さんの口から驚く一言がでた。
    「あなた、自分が学生だった以前に、二児の父親だって自覚があるの!? リデルさんは、あなたからなんの連絡もなく、どれだけ不安な中、アスターちゃんとサミュエルちゃんを育てていると思ってるの!!!」
     母さんの言葉に、僕は思わず「は?」と声を漏らす。どうして母さんがリドルのことを知ってるんだと、後ろの義父を睨みつければ、仕方なかったんだとでも言いたげな表情をした義父が、母さんの背中に隠れようとしてはみ出していた。
    「おまえ……母さんには言うなって言っただろッ!!」
     母さんの背後の義父を怒鳴りつければ、「だってだって」と子供の様に言い訳しようとする義父に、そういえばこの男は、母さんにはめっぽう弱い事を忘れていた。どうせ、リドルの姿をみられて、浮気がどうだの話しになって子供の事を言ったんだ。信じてやったのに、本当に最悪だ。
     義父は、ジェスチャーで『でも、全部言ってないからね』みたいなことを言っているが、それも本当かどうか怪しい。母さんが、有耶無耶なことを信じるわけない。きっちり全て聞いてから判断するこの人に、義父の嘘なんて通じるはずない。
    「アズール! 話しをちゃんと聞いてるの!?」
    「き……聞いてるってば……」
    「はぁ……あなたねぇ、母さんだって怒りたくて怒ってるんじゃないの。連絡が無いと、あなたが無事かどうか分からないでしょ? それに赤ちゃんを育てるっていうのは大変なの、不安なこともあるでしょうに、それでもあなたへ文句の一つも言わないで待ってくれているリデルさんになにか思うことはないの!?」
     何かと言われたって、僕だってリドルの側に居れるなら居たい。でも対価の支払いも、今の僕がリドルの側に頻繁に近づくのも『anathema』の事を考えたら良いことではない。まぁ、手紙の一つぐらい書いても良かったかもしれないけれど……
    「母さん、僕、用を済ませたらすぐに夕焼けの草原の職場に戻らなきゃいけないんだ。母さんの言いたいことは分かったから、だからもうこの話しは終わりにしてってば」
     うんざりした顔で母さんを見れば、特大級のため息をついた母さんが「リデルさんと籍を入れるつもりなんでしょ?」と、今回ここを訪れた用を言い当てた。
    「なんで知ってるの!?」
     母さんの背後で小さくなる義父に余計なことまで話しやがってと睨みつけると「それぐらい聞かなくても分かるわよ!」とまた怒られた。
    「あなたにはあなたの考えがあるんでしょうけど、紙一枚だなんて駄目に決まってるでしょ……リデルさんの事も考えて、きちんと式を上げなさい。おばあちゃんも近辺のホテルに泊まっていて、明日なら参列できるわ」
    「はぁ!? 待ってよ母さん、おばあちゃんまで来てるの!?」
    「そうよ、おばあちゃんだって孫のあなたの結婚式を楽しみにしてるのよ。リデルさんの方は、お世話になっているフレドさんとアルマさんが参列してくれるわ。アスターちゃんとサミュエルちゃんは、私達がしっかり見ててあげるから心配しなくていいわよ」
     既に母さんの中では結婚式を挙げる事になっているようだ。こんなクソッタレなサプライズあって言いものかと、再度、止められなかった義父を睨みつければ、母さんという最強の盾の後ろで、僕に諦めろと視線を送る。
    「アズール、君も思うところがあるかもしれないけれど、ベッラもこう言ってるんだ。式場も警備のしっかりした場所を選んだし、身内だけだからね?」
    「あ〜〜〜もう! その身内に見られたくないぐらい分かれよッ!!」
     頭を抱える僕に、義父が「ハッハッハ! もうそろそろ観念してベッラの言う通りにするんだね」と言って、余計に腹がたった。どう考えてもお前のせいだろ、三流弁護士め……!
    「でも、アズールいいのかい? この機を逃したら、リデルのかわいい花嫁姿をもう見れないかもしれないよ?」
     リドルの花嫁姿と言われて、それは見たいと思ってしまう自分に舌打ちする。母さんがこうと言えば諦めてくれるはずない、ならリドルのウエディングドレス姿を見る為だと理由をつけて折れる他無い。
    「わかった、わかったから! もう、母さんの好きにしていいよ」
     この長いお説教に、もう疲れたぁ〜と言って、僕が事務所のソファーにドカリと座れば、母さんが小さく笑って僕の頭をくしゃりと撫でた。子供扱いはやめろってばッ!
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