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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    ミーティア3️⃣ Az-19 『本当の……』

     ジェイドと別れ、僕の頭の中に残る嫌な予感に、早急にこの土地を離れたほうがいいのでは? という考えが頭をよぎる。ジェイドとの再会……僕とリドル事をリーチがある程度把握している可能性が確定になった。元々、義父から『リーチのボスには知られていると思うよ』とは言われていた。情報だけを収集して、もし何かあったときのために迅速に動けるようにといったところだろう。その何かあったときというのは、きっとフロイドや、その血を引き継いだサミュエルのことだ。もし、サミュエルがフロイドの子で、リーチの直系とバレれば、いくらでも利用価値がある。そうならないために収集された情報には、どこまでが含まれているのだろうか?
    「クソ!」グッと奥歯に力を込めれば、ギリギリと音がする。何より、ジェイドはどうして僕に接触してきた? 本当に偶然だった? んなわけない、あの男が好奇心抜きで動くことなんて絶対にない。
     この先きっとなにかあるに違いないと、アスターとサミュエルが待っているベンチに戻れば、待っていたのはアスターだけだった。
    「アスター、サミュエルはどうしたんだ?」
    「サミーは、とうさんがジュース三つも持つの大変だろうからって……とうさん、サミーに会わなかった?」
     先程のジェイドの接触がこのためだったら……そこまで考えて、もし全てがジェイドの作戦の通りだったら、きっともっとアイツなりの演出や、楽しむための一手間があるはずだ。そうじゃないなら、これは偶然と捉えた方がいい。
     だが今はそんな事より、サミュエルを探さなくてはと、手に持ったジュースを近くのゴミ箱に中身ごと捨てて、僕はアスターを抱き上げた。もしも、アスターまで迷子になってしまったらとんでもない。
     抱き上げたアスターが、僕の背後、遠目にあったソレを見て、小さく「サミー?」と声を漏らす。その声に振り返れば、ジェイドの姿が見えて。その後姿に舌打ちしながら、僕は人魚言語で思いつく罵倒を、あの茸狂いの馬鹿ウツボに心の中で吐き付けた。
    (もし、未来で再会する事があったら、全力の一撃を叩き込んでやる)
     そう誓って、僕はアスターを抱えながら、二時間近く公園内やその周辺をくまなく探してみたが、サミュエルは見つからなかった。


     * * *

     このままでは埒が明かないと、アスターを連れて一度家に戻れば、事情を知ったリドルは顔面蒼白になり、その場にへたり込んだ。本来なら、そのリドルを落ち着かせてやりたいが今は時間がない。リドルのことはアスターに任せて、僕はサミュエルの部屋に入り、目についたおもちゃを手にする。それは、ターコイズブルーの色をした飛行機の、僕が初めて二人に贈ったあの誕生日プレゼントだ。
     それを手に持って二人の元に戻れば、僕の手にしたおもちゃを見て、アスターが「それ、サミーの宝物だ!」と声を上げる。
     産まれた時、あのビルに住むリドルに会いに行った時。二人は義父と母さんが毎日の様におもちゃを買い与えては、物に溢れかえった部屋にいた。きっとあの後だって二人は細かな記念日を勝手に作っては、二人にプレゼントを沢山渡していたはずだ。それなのに、そのプレゼントの山の中から、僕が初めて贈った物を、宝物だと大事にしてくれるなんて……グッと込み上げる感情を僕は必死に押し込めて、紙に魔法陣を書く。その中央に飛行機をおいて、捜し物の魔法を唱えれば、ふわりと折り畳まれた紙飛行機は、サミュエルを目指して窓から外に飛び出した。
     リドルに、サミュエルが帰ってくるかもしれないから、家でアスターと待っていて欲しい。お腹が空くだろうから、夕食を作って待っていてくれと言いもと来た未知を引き返せば、飛行機は公園を通り抜け、ずいぶん町の中央に近いところまで飛んできた。子供の足でこんな場所まで歩くなんてと、毎日アスターと家の中を走り回って遊んでいるから、普通の子供より体力がありそうだ。
     飛行機は、魔法に掛かったまま安定して飛んでいる。その飛行機が、急に商店などが並ぶ町の中央、薄暗い路地を曲がり、僕も急いで路地の影に飛び込めば、この街に似つかわしくないガラの悪い連中が、小さなターコイズブルーを取り囲んでいた。
    「おまえ……こんなにちいせぇのに、こんな場所で一人、何やってんの?」「ガキが外出ていい時間じゃねぇぞ?」
     ケタケタ笑う男たちに、涙目になったサミュエルが、果敢にも対峙して「こわくないからな!」と叫ぶ。
    「おまえらなんか、とうさんが来たら、こてんぱんに、なるからぁな!」
     ぎゃぎゃぎゃと笑う男たちが、サミュエルの服の後ろを掴んで持ち上げ「このガキどうする?」「金持ってそうなら、ガキ使って親脅すか? この服、それなりに高そうな子供服だろ……」「バカお前、脅すなんて犯罪だろ? この場合は、ベビーシッター代って言えよ」「お前頭いいなぁ!」「ギャハハハハハ!!!」
     泣き出したサミュエルをぷらぷらと宙で揺らしながら、誘拐と脅迫を企てる男たちに、僕は完全にキレていた。
    「僕の息子に何をしている!」
     汚く笑うその声が出せないように、その横っ面ウォーターショットを叩き込んでふっ飛ばせば、サミュエルを引っ掴んだ男が、驚いてその首根っこを離す。ドサリと大きな音を立てて地面に開放されたサミュエルが、驚いた顔で僕を見て「とうさん」と小さく僕を呼ぶ。
    「サミュエル、後でしっかりお説教だからな」
     その前に、と僕は、こそから魔法でその場にいた連中をそれなりに痛めつけ、水魔法から派生した魔法で、先程の光景を水に映像として記憶させ、水魔法の水球に閉じ込めた男たちと共に風魔法で警察に送り届けた。丁寧な映像付きだ、僕直接の説明なんて省いても問題ないだろう。
     全て片をつけてサミュエルを見ると、ポカンと口を上げてこちらを見上げていた。
    「こら! どうしていなくなった!! 母さんも、アスターも、僕だって心配したんだ!!!」
     心配したと言えば、サミュエルが「とうさんも?」と僕に聞き返す。
    「当たり前だろ……お前は、僕の子なんだから」
     そう言って膝をつき手を伸ばせば、サミュエルが僕の胸に飛び込み、声を上げて泣いた。
    「ほんとに、おれも、とうさんの子?」
     その言葉に、正直頭に浮かぶのはあいつの……フロイドの顔だ。僕はそれを振り払って「当たり前だろ」と、サミュエルに言い聞かせる。
    「お前もアスターも、僕の大事な息子だよ」
     その言葉に、僕の服を掴む小さな手にギュッと力がこもる。
    「おれも、アスターみたく、とうさんの子がいい……! とうさんの子に、なりたい……!!」
     アスターと一緒がいい、おれもみんなと一緒がいいと泣くサミュエルに、どうしようもなく愛しい気持ちが溢れた。
    「お前は、誰がなんと言おうと、僕の子だよ」
     血が何だというんだ。アイツとの血の繋がり以上に、僕がサミュエルの本当の父親になればいいんだ。
     とうさんと、僕を呼ぶサミュエルの背を撫でながら、僕は何度も、何度も、この小さい身体に言い聞かせた。
     お前も、僕とリドルの子なんだ、と……
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