『暑い』
付き合っていた彼が亡くなった。
事故だった。トラックとの正面衝突。
2年と少しの付き合い。結婚の話も出ていた。
「死んじゃったんだなぁ」
口にすると、意外にもそれは心にストンと落ちて、恋人だったはずなのに、悲しくはなかった。
「後を追おうだなんてそんな馬鹿なこと考えないでくださいよ」
ふと、声が聞こえた。ここは公園。子供はいない。
振り返るとローズマダーが見えた。
「七種くん?なんで…」
「彼、自分のところでもスポンサーとしてお世話になっていたので」
「そう、なんだ。ありがとう」
「なんであなたが礼を言うんです?」
どうぞ、と何処からか買ってきた缶コーヒーを手渡され、どかりと私の座っている─あまり丈夫とは言えないベンチに座った。そのままカコっと缶を開けてゴクリと一口。
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