祝祭 #2「なあ、今日はどこで絵をかくつもりなんだ?」
「また着いてくるの〜...?まぁ、良いけどさ。......今日は小川の近くで絵を描こうと思って」
「小川か〜、小さい魚とか虫とかいるかな〜」
「七月だし、多分結構いると思うよ。潔さんって、虫大丈夫だっけ」
「昔は虫の羽音とかで泣いてたけど、今は大丈夫。ただちょっと見た目がきもいのはまだだめかなぁ......」
「ふふ、子供っぽいね、潔さん」
「そ、そんなことないからな?!もう十分良い大人だし......」
いつの間にか時期はすっかり、緑でできた木漏れ日が二人が歩いている素肌を刺してくる日本特有の夏になっていた。紬と出会った時の春の暖かい陽気はいつの間にか形をひそめ、湿気が肌に張り付いてきて気持ち悪い。ドイツも七月は暑くなる日があるので慣れていると思っていたが、やはり体を動かすたびに日本特有の湿気と日差しには敵わなわそうもなくて、紬の冗談を嗜めるような声を熱波の中に震わせれば、紬は潔に向かって振り返ってニヤッと笑って逃げ出した。線を引くように、手で握りしめていた翡翠色のクレヨンと、その他のクレヨンが入った箱が揺れる音が響く。
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