ニューワールド・ニューゲーム うだるような暑さだった。
空港を出てタクシーに乗るまでの短い間に、汗が噴き出す。
スマートフォンの天気予報アプリを確認すると、赤く表示されているのは熱中症アラートだ。
素直にペットボトルの水を飲み込む。
タクシーが発車して間もなく、運転手が話しかけてきた。
「お客さんはどちらから? 草原は初めて?」
「輝石の国からです。ええ、初めてです。ずっと来たいと思っていました」
「最近、観光客も戻ってきたよ。仕事の人もね」
「夕焼けの草原は歴史ある大国ですから」
その歴史が途絶えかけたのは、数年前のことだ。
王位継承権者に不幸が続き、国政が混乱した。急遽繰り上がりで即位した若い王子は民意を顧みず権力を振り回し、国土に荒廃をもたらした。各地で暴動が起き、内戦に至るのは時間の問題と見られていた……。
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