君に会いたい時だってその日、非番だった三宅は昼過ぎに目を覚ました。隣にはシルクのキャミソールが薄暗闇にてかっている。肩紐が外れかけている彼女が深い眠りの底にいるようで、三宅の身じろぎにも微動だにせず、ただただ一定に呼吸をこぼしていた。
明け方に帰ってきたのであろう夜職の彼女を起こすという考えはなく、三宅はのそのそと間続きの茶の間へ向かい、静かに襖を閉めた。
灰が山積みの灰皿から比較的長めの一本を取り出し、火を点ける。薫る煙は、どこか焦げ臭いような湿気ったような味がした。
高級取りの防衛隊員が住むにしてはいささか年季の入った木造アパートは、間取りも前時代的で、太腿あたりの高さから始まる窓が南西を向いている。三宅はまだどこか眠気の重さを抱えたまま立ち上がると、その窓を自分の身幅分だけ開いた。三部屋隣のアル中のジジイが騒いでいたのは何時頃だっただろうか。それで瞬間的に目が覚めた記憶だけがぼんやり残っている。
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