八畳間のレイトショー「兄ちゃん観てるそれ、アニメ?」
「ああ、学校で友達から後生だから観てくれって言われてビデオ渡された」
「・・・す、すごい勧められ方されたね」
「言うだけあるっていうと何だが、確かに面白いぞ」
「そうなの? ・・・僕も観ていい?」
「ああ」
※※※
「じゃあ観終わったし寝るか」
「・・・・・・」
「どうした?」
「・・・続き気になるからあと1話だけ観たいな・・・」
「・・・わかった」
「やった!!」
※※※
「まさかあんな展開になるとはな! これはもう1話観たくなるが・・・」
「・・・!!」
「借りてきてるのはここまでだから続きは明日な」
「・・・・・・うん! わかったよ・・・」
「(画面に釘付けになりながら観てたなノゾミ。そんなに楽しめたならシンジにも伝えておくか)」
「兄ちゃん」
「ん?」
「明日も今日と同じくらいの時間から観れそう?」
「ああ、退治人の仕事入らなければ多分な」
「あのさ、できたらその、お願いがあるんだけど・・・」
「どうした? 遠慮するな」
「えっとね・・・」
※※※
「ただいま」
「おかえり! 予定通りの時間だったね」
「シンジにお前がハマったこと言ったらすごい喜んでたぞ。『宇勇の面白さをわかってくれて嬉しい! 機会があったらぜひ弟君と語りたい』ってな」
「ふふっ。喜んでって伝えて」
「あと頼まれてたものも買ってきた」
「やった! ありがとう兄ちゃん。今日はこれ食べながら3話・・・いや、4話くらい観たい!」
「今日金曜だしな・・・まぁいいか。せっかくだし電気も消すか? 音量は大きくできないけど雰囲気出るだろ」
「うん!」
買ってきたポップコーンとジュースを片手に暗くした部屋でノゾミと観た宇勇は、二人でばあちゃんに内緒でアニメ映画を観に行ったあの日のことを思い出させた。
画面は小さいし、音も大きくはない。あの座り心地のいいふかふかの椅子とは程遠い、硬いダイニングチェアしかここにはない。
本物の映画館とは違って快適で迫力ある映像が楽しめる空間とは言えないが、こうして夜にこっそりとノゾミと二人、居間を小さな映画館にして楽しむ夜も悪くない。
興奮して前のめりになりながら画面を見つめる横顔に、スクリーンに映る少年探偵の活躍に心を踊らせる、小学生の頃の弟の面影を色濃く感じて、密かに口元が緩んだ。
※※※
「全部見た。面白かったぞ。ノゾミもかなり満足してた」
「ミッキー・・・!!」
「なんで涙目になってるんだ」
「嬉しすぎて・・・最後まで見てくれた上に二人とも楽しんでもらえたのがわかって・・・! バイトで忙しかっただろうに」
「飯食いながらだし、別に負担にはなってないから気にするな。ノゾミもお前に感謝してた」
「・・・・・・これから俺、ミッキーとガッツリ宇勇トークできるってこと?」
「そうなるな。・・・いいから泣くな。嬉しいのはわかったから! おいシンジ!」