君を忘れない「・・・ミッキー?」
八番出口の案内を超えた先、何十周と通り抜けて来た地下通路の中央に彼は立っていた。
黒い無地のシャツに白いスラックス。七三分けの髪型。距離があるから顔はよく見えないけど十中八九、俺のよく知る人物。二十年来の付き合いの親友、三木カナエだ。
つい彼のあだ名が口をついて出たけど、呼びかけたわけじゃない。
幾度となく迷ってここまで辿り着いた俺には、あのミッキーも異変の一つであることは既に見抜いている。
通路の左手側に掲示してあるポスターのデザイン、監視カメラの挙動、なぜか俺の方に向かって歩いてくる見知らぬおじさん、天井の看板、その他諸々。
通路に存在するあらゆるものに、それまで見たときとは違う変化がないか、間違い探しのように注視して進退を選んできた。これでも職業柄、ものを観察するのは得意だ。
2389