よいゆめを こいつはいつもほとんど一直線上に足を踏み出すような歩き方をする。
戦闘時ですら、その動きの大きさに比べて不思議なくらいに足音が小さい。
青年の鍛え抜いた身体は、アルコールが入った時でさえ気の抜けた歩き方をすることを許さないのだ。
それはこの男が特殊な訓練を受けていることを意味するものであり、フリックの足付きを見るたび、我流で戦闘を身につけてきた自分との違いを改めて感じる。
だから部屋に戻って来るまでのフリックの足取りは、まったくしっかりとしたものだった。
そういうところは、多少飲んだぐらいでは全然変わらない。
酒場から部屋に戻って、あとはもう寝るだけだなとシャツを脱いでいると、フリックがじっとこちらを注視していたことに気がついた。
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