2025-05-19
ぺちぺちと頬を叩かれた。目を開ければ、細いとはいえランプの明かりが飛び込んできて目がくらむ。狭い、いつもの部屋に小さなランプ。枕元にはここのもう一人の主の姿。今日は帰る予定じゃなかったはずだが。
「……どうした」
ランプの光を背にしたビクトールは真っ黒だ。土と埃と汗と、かすかに血の匂いがする。ハイランドと小競り合いになったのは報告を受けていたが、お互いに適当にやりあってそのまま収束したらしい。帰ってきたのならば、詳細な報告が上がってくるだろう。
帰ってくるなら明日、明るくなってからにすれば良いものを。なにか喫緊の報告があるのなら、こんなところにおらずに軍師に報告へ行くはずだ。
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