2025-07-08
夜だというのにかがり火で明るい。歩哨の姿も数多く、いかにも臨戦態勢だ。明日にはティントを奪い返す為に出陣するからそこに加わる連中はもう休んでいた。俺もそろそろ横にならねばならない、というのにかがり火の下でぼんやりしているのは待ち人がいるからだ。
別に大した約束をしているわけでもないが、多分来てくれるだろう。家の中の方が安全だけれど、話す内容次第じゃ余人に聞かせられないから外のほうが理にかなう。
庭にある長椅子の端に座って行儀悪く足を投げ出した。村長にもらった蒸留酒をグラスに注いでちびちびと舐めていると、歩哨が声を上げたのが聞こえた。
視線をやれば、まだ年若い歩哨とフリックがなにか話しているところだった。夜で、しかも遠目だと言うのに歩哨が興奮しているのがよくわかる。知らない人間に勝手に理想を抱かれるとはどういう気分なのだろう。
1903