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    tokinoura488

    @tokinoura488

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    こちらではゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのリンク×ゼルダ(リンゼル)小説を書いております。
    便宜上裏垢を使用しているので表はこちらです。→https://twitter.com/kukukuroroooo

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    tokinoura488

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    Twitterに「#ハイラル城備忘録・青史」のタグでアップしたモブ視点リンゼルSS
    登場モブ:ゲルド族の踊り子・デューラ・24歳
    タイトル:ふたりは運命共同体

    ##リンゼル
    ##百年前
    ##モブ視点
    ##ハイラル城備忘録

    ハイラル城備忘録・青史【宮廷踊り子の記録1】

    【ふたりは運命共同体】

     あたしの名はデューラ。期間限定で宮廷の踊り子として雇われた身だ。
     屈強な者の多いゲルド族の中で、踊り子として身を立てている者は少なく、毛色の珍しさもあって呼ばれているのかも知れない。が、自分の踊りを披露する場を与えられていることはありがたく、日々踊りと体を磨くことは欠かさない。
     温かな日差し降り注ぐ午後。あたしは城下の宿で身支度を整えた。今日は王宮に呼ばれている。ゼルダ姫には二度目の謁見になるか。
     前回はとても疲労しているとのことで、姫の表情は芳しくなく、口数も少なかった。そこに寄り添う近衛兵がそつなつく対応していたのが印象に残っている。思い出すのはその誠実で冷静な対応だけではなく、姫が下がられた後の表情だ。
     悔しさを滲ませたようなその表情を姫に見せる気はないのだろう。あたしに見られていると気づくと、スッと感情が吸い込まれるように消えたのもまた印象的だった。
     さて、今日はどんな様子だろう。

     ゼルダ姫の私室に赴くと、何かいいことがあったのか今日の姫の表情は明るかった。
     これが本来の彼女なのだろう。
     あたしの見せる踊りに歓喜の声をあげ、綻ぶ頬に赤みが差してとても愛らしい。一国の姫としての気品はもちろんだが、見たものを素直に受け止め、純粋に感動し、そしてきちんと言葉にして伝えることのできる資質は素晴らしい。封印の巫女としての力が訪わないことに「無才の姫」と揶揄する者もいると耳に入っているが、ゼルダ姫のこの資質こそ、ハイラルを統べる立場となる者として充分なのではないかと、個人的には思う。
     出されたハーブティーに口を付けていると、キラキラした草原色の瞳がしきりにこちらを見ている。
    「この衣装が気になりますか?」
    「はい! やはり装飾が綺麗ですね。ウルボザも身につけていますが、踊り子のものはまた違うのですね」
    「ふんだんに宝石をちりばめてますからね。このルビーの赤は太陽への感謝と畏怖を、このサファイアの青は空の壮大さを、エメラルドの緑にはゲルドの安寧と繁栄の願いが込められているのです」
    「まぁ! ひとつひとつに意味があるのですね!」
    「単純に舞った時に見栄えがするという装飾もありますよ。この羽なんかがそう」
     見入っている姫の背後に目をやると、どこか安堵したような近衛騎士の顔が見えた。やはり今日もしっかり姫の傍に陣取っている。先日の近衛服より軽装な英傑服姿。邪魔はせぬ距離、それでいて剣先は届く絶妙な位置取りに、騎士の要諦を見るようだ。例え四英傑のひとりと懇意のあたしに対しても、警戒は怠らない仕事に舌を巻く。お命を狙う者はどんな姿をしているか分からないのだから、当然と言えば当然。だが、それを同席する姫に気づかせない気配のコントロールはさすが。
     踊りには剣を使う型もある。その為、踊り子は武術も学ぶ。だから気づけたが、一般の者はそこにリンクがいるということすら忘れさせるかも知れない。これが姫付きの近衛に選ばれた者の仕事か。
     だからこそ、余計に気になるんだよね。
     素晴らしい騎士然としたリンクを見れば見るほど、前回の様子が思い出された。冷徹にさえ見える硬い表情が、あの瞬間だけ個人的な感情を貼り付けていた。
     近衛騎士の姫に抱く感情はどんなものなのか。ここは姫の私室と聞いている。そこに入ることを許される者はそう多くないはずだ。しかもヴォーイだ。
    「きれい……。素敵ですね」
     興味津々の瞳にあたしはいいことを思いついた。
    「姫、この衣装着てみませんか?」
    「え?」
     鳩が豆鉄砲を食らったような顔。あたしは吹き出すのを堪えて続けた。
    「きっとお似合いになりますよ。ここにはあたししかいませんし」
     ここは姫の私室だ。誰の目もない。
    「で、でも」
    「姫は王女であると同時に研究者でもあると、ウルボザ様より聞いております」
    「え……ええ。確かに自分では研究者でありたいと思っております」
    「でしたらなおのこと、着てみられるのがよいかと」
    「実践せよ……ということなのですね」
    「さすがゼルダ姫」
     それでも少しもじもじして、チラチラと背後を気にしている。
     ふふーんなるほど。
     リンクの方はわからないが、姫の方はこのヴォーイが気になっているようだ。
     戸惑いながらも決意した姫は、リンクを私室の外に待機させた。扉を閉める際に見えた横顔は、いつもの真面目顔。
     どんな顔をするのか見物だな。

     日ごろ、肩を出す巫女服を着られているからか、肩の露出に関してはあまり抵抗感はないようだったが、さすがにお腹が出ているのを気にしていた。
    「そんなに気になりますか? その姿を見るのはご自身と控えの騎士だけでしょう?」
    「そっ……それはそうなのですが」
    「気になるのは彼がヴォーイだからですか? 常日頃から行動を共にされているとウルボザ様より聞いています。修行の際も、着替えの手伝いなど身の回りの世話もしているとも。あたしはぜひ、姫に着ていただきたい。その身で体験してこそ、本当の情報を手に出来るのでしょう? 予測し、検証し、実証するのが学びだと先日おっしゃられていたのは姫様ではありませんか」
    「そう思っています。でも、は……はずかしいのです」
     消え入るような声で姫は頬を染めた。
     もう一押し。
    「でしたら、彼には下がってもらいましょう。あたしの身分照会はウルボザ様の信用の上でのこと。決して姫に危害を加える者ではありませんし、ここは私室です。姫が危険に陥ることもない。一時、彼を護衛の任から解いても問題はないのでは――」
    「そっそれは……か、彼を下げることはしません。せっかくの機会ですから、きちんと着ます」
     あたしは目尻を下げた。やっぱりそうなのだ。
    「このまま着付けを続けても?」
    「は……はい」
     まだ迷いのある姫様に着付けをし、侍女に薄化粧を頼んで部屋を出た。
     リンクがあたしを見つけて、声を掛けてくる。
    「もう入室しても?」
    「今、仕上げの最中だよ。ひとつ提案があってきた。リンク殿は姫の不安を減らす手伝いをする気はないか?」
     意味が分からなかったのか、リンクはわずかに眉頭に皺を寄せた。
    「ここ数日、何かあったのは察している。今日も快癒とまではいかないのだろう」
    「……なぜそんなことを」
    「まあ聞きなよ。姫の抱えてらっしゃる重責はウルボザ様からよく聞いているよ。あんただって、ゼルダ姫には心晴れやかになってもらいたいだろ?」
    「貴殿に言われまでもなく、なんだってするつもりだ」
    「うん。よく言った! じゃ、あたしの頼みも聞いてくれるね?」
     こくりと頷いた近衛をあたしは手招いた。

    「御ひい様、化粧が終わったんだね! きれいだよ」
     私室に戻ると、ちょうど先客が姫に声を掛けているところだった。窓から差し込む光を受け、踊り子の装飾が輝く。それに負けないほどの輝きを放つのは結い上げられた金の髪。頬は朱に染まり、白い肌をぴったりと包んだ衣装を細い腕が恥ずかしげに隠している。口もとを隠す薄紫のベールがとても似合っていた。
    「ウルボザっ! 来ていたのですか!」
    「さっきね。デューラから御ひい様が踊り子の衣装を着てるって聞いて、覗きに来たんだよ……って、リンクはどうしたんだい?」
    「本当に下げてしまったのですか?」
    「そうはしないと言いましたよね。もう入っていいよ」
     あたしは着替えの出来映えに満足しつつ、扉の向こうに声を掛けた。
     私室の扉が重々しく開く。入ってきたリンクの姿に、姫の目が見開かれた。同時にリンクの空色の瞳も瞳孔が開き、息を飲んだのがわかった。
    「ま、まさかリンクもだなんて」
    「主が恥ずかしいというのなら、その配下は同じように恥辱を受けなきゃと思ってね」
     熱砂の服に着替える――というのがあたしがリンクにした頼みだった。砂漠を越えるには必要なこともあるだろうと、入城の際に準備していたものだ。さすがハイラル一の騎士であり勇者。ヴァーイにも見まごう見目に反して、理想的な筋肉の付き方をした体躯にあたしは感動した。
    「デューラ、やるじゃないか」
     目の前の主従は、互いにゲルド衣装に身を包んだ姿に目を奪われている。おそらく見つめ合っているという感覚すら忘れて、ただ互いの姿に魅入られていた。あたしはそっとウルボザ様に耳打ちした。
    「予想以上の成果でしたよ」
    「こりゃ……いいものを見たね」
    「でしょう? こうなると思ってたんですけどね」
    「御ひい様の方はあんたならすぐわかったと思うけど、奴については何も伝えてなかったのに、よくわかったね」
    「ヤですよ。あたしを誰だと思ってるんです? 視線で観客を魅了する術を熟知した踊り子ですよ」
    「そうだった」
     小声で笑い合う。
     そんな風に囁かれていることにも気づかず、ふたりはポーっと頬を赤らめ見つめ合ったままだ。
    「御ひい様」
     ウルボザ様が声を掛けると魔法が解けたみたいに、ゼルダはパッと下を向き、リンクは頬の赤みを隠すように肘を顔を覆って、視線を外した。
     ホント、かわいいったらない。
    「ほら、何か言ったらどうだい?」
     ウルボザ様がリンクを小突く。
    「お……お似合いです」
    「あ、ありがとうございます」
     そこから上手く話せないふたりに、あたしは助け船を出した。
    「ゼルダ姫、着てみた感想はいかが?」
    「すばらしいです! ほら、見て下さい。腕を動かすとこの部分の装飾が花びらが開くみたいに広がるんです。人に魅せるということを考えられている仕立て。それにこんな風にお腹が出ているのは、より体の動きを見せるためなのですね! 動くと機能性がよくわかります!」
     一気に研究者の顔になって姫は興奮気味に話し出した。あたしは目を細めた。
     これこそ、本来の姿なんだろうね。可愛らしい。
     視線を近衛騎士に向ければ、やはりあたしと同じように目を細めている。
    「リンク殿の方の感想はいかがかな?」
    「これは踊り用の衣装だと聞きましたが、少し違和感があります」
    「よくわかったね。ゲルドでヴォーイが踊る風習はないからね。これは砂漠を越えるための装備さ」
    「機能的で動きやすい」
     リンクは珍しく熱の籠もった目をして、その場で腕を上げたり跳ねたりしてみている。今度は姫の目がその動きに注がれる番だった。同じことを感じたウルボザがすぐに反応する。そっと姫の耳に顔を寄せた。
    「リンクの衣装もなかなかいいね。御ひい様もそう思うだろ?」
    「え、あ、は……はい。そうですね。とても動きやすそうです」
    「それだけかい?」
    「……に、似合っていると思います。で、でも……そのいつものい、印象とあまりにも違うので」
     二の句を継げなかったが、あたしにはわかった。
     ときめいちまうんだね。かわいいな……。
     こうしていると大きな大役を背負っていることを忘れてしまう。本当はこのふたりは恋や未来にキラキラしていい年なんだ。
     それにしてもとリンクに目をやる。
    「姫様付きの近衛騎士の割に、小柄だなって思ってたけど、意外に筋肉質なんだね」
    「そうでしょうか。もっと鍛えなければと」
     姫が恥ずかしそうにしながらも、じっと割れた腹筋を見ている。ふっとまた、悪戯心が顔を出した。
    「そうだ。御ひい様、触ってみたらいかがですか?」
    「え……ど、どこを?」
    「リンクの腹筋ですよ。こんなに見事に割れてる筋肉なんてなかなか触れないですよ。触れてみてこそ、研究者たる――」
    「み、皆まで言わないで下さいっ! わ、わかりました」
     触れる側の姫が緊張しているのはわかるが、触れられる側のリンクも平常心を装っているが、あたしには体が強ばっているのがわかる。ますますかわいい二人だと、じっと見入っていると、ようやく姫の指先がリンクの腹に触れた。
     最初は押し当てるように、そしてゆっくりと筋肉の隆起をなぞる。
     あーあ、そりゃ酷な触り方だよ。
     あたしは懸命に耐えるリンクに同情しつつ楽しくて仕方なかった。大人ならわかるだろうあの痺れを今、まさにこの若者は感じているはずだからだ。
     ふたりとももっと自分に素直になればいいんだよ。
     楽しくもありつつも、ちょっと切なくなった。これが現実なのだろう。厳しい大人の目に囲まれて、自我を封じ、良き巫女、良き騎士でいなければならないのがふたりの現状だから。
     だからこそ、このふたりは傍にいるのかも知れないね。
     互いの境遇を唯一共有できる存在。姫と騎士という主従でありながら、巫女と勇者という決して誰も相容れぬ結びつき。
    「ウツシエを撮ろうよ。いい記念になるよっ!」
     姫がリンクの肌から指を離した時、ウルボザ様がポンと手を叩いた。
     ウルボザ様が撮り手になって、あたしを真ん中に姫とリンクが集まる。
    「さ、ふたりとも手を繋いで」
     多少の抗議のあと、ふたりはぎこちなく手を繋いだ。あたしがその上に手を乗せる。
     ヴァーイとヴォーイが一緒に踊るという概念はゲルドにはない。けれど、互いに心通わす者は手を取り、ひとつの踊りを作り出す。
    「ほら、もっとくっついて。ウツシエを撮るよ」
     姫が笑えば、それだけで空気が変わる。
     ゼルダ姫は無才の姫と揶揄されていると聞く。あたしは心のなかで息巻く。そんな奴らに言ってやりたい。
     雇われ踊り子の身のあたしですら分かるのに。あんたらの目こそ節穴だろうと。
     姫がお水を所望されている間に、あたしはそっとリンクの横に立った。
    「ほんと、この愛らしさが分からないかねぇ」
    「……」
    「あんたななら、わかってるだろ?」
     騎士はなにも答えない。けれどあたしにはわかる。その目はいつだって、愛らしい姫を見て、そしてあたしの言葉に心のなかで頷いているだろうことを。
    「姫が踊りを覚えて、みんなの前で披露したら愛らしさが伝わるかもしれないね」
     隣から強い殺気。
     ふふふと笑めば、青い目は抗議の強い色を放った。
    「冗談だよ、姫の騎士は怖いねぇ」


                              了
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