有古くんと博物館へ行く話「退屈じゃない?」
私は黙ってついてくる有古くんを振り返る。けれども有古くんは小さな声で、そんなことない、と首を振った。
「これとか、装飾が細かくて綺麗だ。あそこにあったのも形が変わっていて面白かった」
博物館内だからか、大きな体を折り曲げて私の耳元に顔を寄せる有古くん。ヒソヒソと話す姿は強面なのに可愛らしく見える。でも思った以上に顔が近くて、なんとなく落ち着かない。
「あ、私はこれがいいな。なんか可愛い」
指差したものを見た有古くんは、それから私を見て、
「確かに……好きそうだ」
と笑った。
……あ、なんかいいな。このやり取り。
普段は、美術館や博物館には一人で行くから、こうして誰かと話しながら見て歩くのは新鮮だ。映画もそうだけど、興味のない人に一緒に来てもらうのは正直申し訳なくて。お互いに気を遣ってしまうなら、正直一人の方が気が楽だと思ってしまう。でも今回、こうしてその場で感想を言い合うのも楽しい事だと気付いた。
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