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    岩藤美流

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    岩藤美流

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    テーマは別時空の特殊性癖あずいでちゃん

    ##ひみつ

    ひみつ1

     ちゅ、と。小さなはずのリップ音が、妙に大きく聞こえて、二人は顔を赤らめる。触れた手と手が汗ばんで、互いに指を絡めたり、離したり。そうして距離をはかって、お互いが拒まないことを確認すると、もう一度キスをする。
     それだけの、極めて清らかな恋人関係。それが、今の二人の姿だ。
     学生達の恋。二人は実に順当に、若く甘酸っぱい日々を過ごしていた。
     ……はずだった。



     イデア・シュラウドは大きく溜息を吐いて、鏡を見ている。
     それはオルトが意気揚々と部屋を出て、一人きりになった自室でのことだ。イデアは一人、恐る恐る寝間着にしているパーカーを脱いで、そしてまた溜息を吐いた。
     イデアが直面している問題。それは言ってしまえば簡単な話で、要するにこの健康的な男らしからぬ乳首のことだ。そこは触ってもいないのにぷっくりと勃ち上がって、ピンク色に存在を主張している。このままTシャツなど着ようものなら、はっきりと勃っていることがわかって恥ずかしいことになるだろう。
     ああーーー、1年前の拙者に言ってあげたい……乳首いじるのはせめて2週間に1回ぐらいにしとけって……。イデアは試みに乳首をそっと指で押さえて、鎮まりたまえ~……と唱えてみた。ややして指を離してみても、乳首は「こんにちは!」と顔を出したので、これはもうダメだ。どうしようもないと思った。
     
     つまりどういうことか。イデアは、1年ほど前から特殊な自慰行為に目覚めていた。どうせ一生恋人とかできなくて童貞で過ごすなら、色んな事やっちゃお、流石拙者天才なのでは? と思ってしまったのだ。ネットの海を彷徨って色んなことをしてしまった結果、体はもはや無垢な童貞じゃないわりに普通に童貞という、なんとも悲しいことになっていたのだ。
     おまけに、何がどう転ぶかわからない。男だらけの男子校で、自分と唯一対等に話してくれる後輩兼友達を得ただけでも奇跡なのに、そんな相手と恋人関係に。こんなに運使っちゃって大丈夫? 次のダイスロールやばくない? と思うぐらい、幸せの絶頂にあったイデアを悩ませているのが、その過去の過ちだ。
     要するに、色んなオナニーにハマった結果、とてもじゃないが今更ピュアなノーマルセックスで興奮するような脳でも体でもなくなってしまっていた。特にわかりやすいのが、このお乳首様だ。これがもう、オナニーをする度に弄り回していたものだから、触っていない時でも引っ込まなくなってしまっているのだ。
    「ううっ、これ、流石に……流石にバレるよね……」
     イデアがこのところ、それに悩んでいるのはアズールとの関係がそこそこ進んできたからでもある。スキンシップもするし、キスだってするようになった。関係がセックスに到達するのは時間の問題だ。しかし、こんな乳首を見られたら、アズールがどう思うか。彼は元々人魚だったから少し純粋なところがあったりもするけれど、流石にこれは見たらなにかおかしいと思うだろう。
     こんな元気な乳首の恋人に、がっかりしたり、引いたりしないだろうか。ついでにどうしてこんな事になっているのか知って、そんな趣味があるなんて気持ち悪いと逃げられたらどうしよう。
     そう考えると泣きたくなって、一年前の自分に言って聞かせるのだ。変なオナニーはやめておけ。当然、タイムリープは起こらない。このなんか自己主張の激しい乳首と共に歩んでいくしかないのだ。
    「うー……と、とりあえず今日も……」
     ごそごそと絆創膏を用意して、乳首を押し潰すように貼り付ける。状況は改善しているような、そうでもないような。しかしおかげで薄手の服でも乳首が「こんにちは!」することもなくなったので、続けていくしかない。
     他にもあかんことは色々有るのだけれど、順当にいけば真っ先にバレるのはこの乳首のことだろう。イデアはとりあえず、これがOKなら後もなんとかなるかもしれないし、これがダメなら全部ダメだろう人生終わると思って過ごしていたのだった。



     そんなある日の、部屋デートでのことである。
     その晩は特にお泊りをするという予定でもなかったので、少しイデアも気が緩んでいた。オルトはスリープモードに入っているし、視線で気まずくならないように隣の部屋で眠ってもらっている(ごめんね、とイデアはいつも謝っていた)。二人はベッドに腰かけて密着し、一つの端末で同じ動画を見るという、カップルみたいなことをしていた(事実カップルである)
     時々手が触れ合い、指が絡んだり。同じタイミングで目が合ったりして。初々しいピンク色の時間を過ごしていた。どちらともなくキスをしたりして、そりゃあもう、そりゃあもう付き合いたてのカップルを満喫していたのだ。
    「……イデアさん」
    「ん? なあに、アズール氏」
    「……えっち、したいです」
    「そうだねー……えっ!? えっち!?」
     唐突に言われたものだから、イデアは遅れて反応した。アズールは、すまし顏を貼り付けたままで繰り返す。
    「イデアさんとセックスがしたいです」
    「言い方の問題で驚いているわけではないんだが!? えっ、急に、えっ、どしたの!?」
    「どうしたもこうしたもありませんよ」
     アズールはイデアにずいと体を寄せながら言う。
    「いつまで経っても、スキンシップとキスばかり。純な子供じゃないんですから、することしたくなるのが健全な男というものでしょう」
    「ヒェ!? せ、拙者のアズール氏はそんなこと言わない……!」
    「残念ですけど、言うんですよ」
     イデアはひいい、と逃げるように体を倒していくけれど、それを追うようにアズールが覆い被さってくるものだから、結果的に押し倒されて床ドンされているような状況になってしまった。あれ、この流れ、おかしくない? イデアは混乱した頭で考えた。
     イデアの脳内ストーリーでは、アズールは年下のとってもかわいい恋人だ。陸に来て1年ちょいのチェリーであるから、自分がリードして、大事に大事に抱いてやろうと思っていたし、少女漫画のような絵柄で「イデアさん、素敵……」と言っているアズール像も完成していた。しかしこの状況はなんだろう。まるで自分が抱かれる側ではないか。
    「ちょ、……いや、あの、あのね、アズール氏」
     イデアは大慌てでアズールを押し返そうとしたけれど、見た目より力の有るアズールから逃げることができない。これは困った。
    「えっと、アズール氏、あのね、その、せ、セックスにはその、ま、前準備とか! 必要だから、きょ、今日は無理かなあ~って……」
    「前準備とは、具体的に何をするんです?」
    「エッ! ぐ、具体的に? そ、そうだなあ、例えば、そのぉ……か、体を洗ったり……」
    「さっきシャワーを浴びたと言ってましたよね?」
    「アッ、あ、その、……ほら、……ゴ、ゴムとか、そういうの……」
    「もちろん買って来ました」
    「はひぃ! じゅ、準備がよろしいんですのね、アズール氏……」
     えっ、何、つまりバチバチにその気で来てたってこと? イデアは恐ろしくなりながら、なんとか逃げられないかと視線をあっちこっちに向けていた。心の準備が全くできていないから、今日はご勘弁願いたいのだ。
    「イデアさんの心の準備を待っていたら、何年経っても先に進めそうにないので」
    「こ、心を読まないで、怖い!」
    「ということで、イデアさん。しましょう」
     大丈夫、優しくしますよ。
     うっとりと微笑む顔は聖母のように優しいが、言っていることは完全に雄だ。イデアが「ぴいー!」と小動物のような声を上げてもがく。そんなイデアを、「今日と言う今日は逃がしません」と言いながら、アズールが引き止めようとした。
    「ひっ!」
    「……!?」
     勢い余ってアズールの左腕がずっぽりと、イデアのゆるゆるのパーカーの中に入ってしまい、ついでにその手が、指がイデアのお乳首様に触れた。正確に言えば、それを封印している絆創膏にである。イデアは真っ青になった。
     ば、バレた。バレちゃった……。
     恐る恐るアズールを見ると、彼は神妙な面持ちで固まっていたけれど、やがてかりかりと指先で絆創膏を剥がすような動きを始めたので、「わあーーっ!」とイデアは声を上げる。
    「やめ、やめて、剥がさないで! 普通絆創膏貼ってるのを無断で剥がそうとするか!? サイコパスか!?」
    「じゃあ聞きますけど、これは何のために貼っているんです? まさかカミソリで乳頭を削ぎ落したわけじゃないでしょう」
    「怖いことサラッと言わないでよ! そうだよ別に怪我してるとかじゃないよ!」
    「じゃあ、何のために?」
    「ウッ」
     しまった、誘導尋問だった。イデアはまんまと罠にハマって、目を泳がせる。どうしよう。乳首触りすぎて引っ込まなくなっちゃったんですとか言えない。イデアが考えている間にも時間は非情に進んでいく。アズールがかりかりと剥がすような動きをしていると思っていたのだけれど、いつのまにか封じられた乳首を引っかいていることに気付いたのだ。
    「ちょ、あの、ちょ、待って、待って待って……っ」
     薄い絆創膏越しでもそれは性感帯への刺激である。イデアはもぞもぞと身を捩って逃げようとした。その隙を突かれて、一気に服をたくし上げられる。ヒィッ! と悲鳴を上げ、外気に晒された肌寒さを感じると共に、アズールが自分の胸を凝視していることに気付いて冷や汗が出る思いだった。
    「……両方、貼ってるんですね」
    「……は、ハイ……」
    「……何のために、貼ってるんですか?」
     再度問われる。もうわかってるんじゃないだろうか。イデアは恥ずかしくて気まずくて、アズールから目を逸らしたまま黙秘権を行使した。それがいい結果に繋がるとどうして思ったのだろう。アズールはしばらくイデアの回答を待ったけれど、彼が何も言わないことを確認すると、ふぅと溜息を一つ吐く。
    「わかりました。あなたがそのつもりなら僕にも考えが有ります」
    「へ? うわ!? わ! わーーーっ!?」
     アズールが自分の服のポケットに手を突っ込んだと思ったら、謎の魔法で手首が一括りにされて、頭上に上げるような姿勢にされた挙句、ベッドに杭でも打たれたように動かせなくなった。もがいてもビクともしない。
    「なにこれ!? なにこれ!? 指定暴力団オクタヴィネルの拷問技術とかそういうアレ!?」
    「失敬な。”巻き付くたこ足”とかでも言うつもりですか? この期に及んで冗談を言うぐらいなら素直にお答えなさい」
    「冗談言ってるつもりはないんだけどなあ!? これ、これはその……アレだよ、陸のファッションだよ!」
     あまりのことにイデアはしょーもない嘘をついた。当然、しょーもない嘘だということは秒でバレたし、嘘をついたことでアズールの表情はますます固くなる。
    「へえ……あなた、そんな嘘を吐くということは……。もしかして、僕以外に体を触らせているんですか? 絆創膏を貼らないといけないぐらいに」
     むに、と乳首を押される。ほらーやっぱりわかってて言ってるじゃん! イデアはぶるぶる首を横に振って、必死で否定した。
    「ち、違う、違うのっ、こ、これは僕が弄り回したから……っ」
     ハッ! と言葉を止めたけれど、手遅れだった。
    「……ほう。自分で、ここを、弄り回したんですか。なるほど」
    「あ、……あ、あ、……あの、……えと……」
    「ご自分で。ご自身の、乳首を。弄り回していたんですね?」
    「い、言わないでいいからあ……」
     自白してしまったことと、繰り返される事実確認に顔を赤らめて、イデアは足をばたつかせて抵抗した。しかしそんな足を割り開いて、アズールがずずいと顔を寄せてくる。
    「念の為、確認させていただきましょうか」
    「ふえ……」
     思わずアズールを見上げると、彼はこの上ない満面の笑みを浮かべていた。
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    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ①であり、ワンライの「さようなら、出会い」お題作品の続きです。参考にした歌は「A Love Suicide」です。和訳歌詞から色々考えてたんですけど、どうも予想通りタイトルは和訳すると心中だったようですが、あずいでちゃんはきっと心中とかする関係性じゃないし、どっちもヤンヤンだからなんとかなりそうだよな、と思ったらハッピーエンドの神様がゴリ押しました。イグニハイド寮は彼そのものの内面のように、薄暗く深い。青い炎の照らしだす世界は静かで、深海や、その片隅の岩陰に置かれた蛸壺の中にも少し似ている気がした。冥府をモチーフとしたなら、太陽の明かりも遠く海流も淀んだあの海底に近いのも当然かもしれない。どちらも時が止まり、死が寄り添っていることに変わりはないのだから。
     さて、ここに来るのは初めてだからどうしたものか。寮まで来たものの、人通りが無い。以前イデアが、うちの寮生は皆拙者みたいなもんでござるよ、と呟いていた。特別な用でもなければ出歩くこともないのかもしれない。さて、寮長の部屋といえばもっとも奥まっている場所か、高い場所か、あるいは入口かもしれないが、捜し歩くには広い。どうしたものかと考えていると、「あれっ」と甲高い声がかけられた。
     見れば、イデアの『弟』である、オルトの姿が有る。
    「アズール・アーシェングロットさん! こんばんは! こんな時間にどうしたの?」
     その言葉にアズールは、はたと現在の時刻について考えた。ここまで来るのに頭がいっぱいだったし、この建物が酷く暗いから失念していたけれど、夜も更けているのではないだろうか。
    「こ 5991

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    お題「HELIOS∞CHANNEL」
    何度も何度も震えるスマホ、画面も何度も光って、最早充電も尽きかけてしまっている。
    鳴り止まなくなって電源ごと落としてしまうのも日常茶飯事ではあるけれど、今回は規模が違う。
    ……今朝おチビちゃんが撮ってエリチャンにアップロードした写真がバズっている。
    その写真は新しく4人の体制となったウエストセクターで撮ったもので……それだけでも話題性があるのは確かだけれど、それよりもっとややこしいことでバズってしまった。

    『フェイスくん、この首の赤いのどうしたの!?』
    『これってキスマーク……。』
    『本当に!?どこの女がこんなこと、』

    「はぁ〜……。」

    止まらない文字の洪水に、思わず元凶である自分の首を撫でさする。
    タグ付けをされたことによる拡散の通知に混じって、彼女たちからの講義の連絡も合わさって、スマホは混乱するようにひっきりなしに泣き喚いてる。
    いつもはなるべく気をつけているからこんなこと滅多にない。……ただ、昨夜共に過ごした女の子とはまだ出会ったばかり……信じて寝入っている間にやられてしまったらしい。
    今日はタワーから出るつもりがないから別にそのマークを晒していてもわざわざ突っ込んでくる 2313