ブレーキ同盟がお泊まり会するはなし(前編) 平日のある日。この日はバンド練習も他の予定も特に無い。それなのに、自宅で寛ぐ市ヶ谷有咲はそわそわと落ち着きがなかった。
室内をウロウロ歩き、部屋の埃をチェックし、窓を開けては閉め、最後にベッドに飛び込んだ。
直後、家のインターホンが鳴ると弾かれたように起き上がり、手櫛で髪を整えながら玄関へ向かった。息を整えながら、ゆっくりとドアを開ける。
「あー……。い、いらっしゃい」
「……どうも。お邪魔します」
ぎこちなく挨拶をする有咲に、制服姿に大きな荷物を持った奥沢美咲が、同じようにぎこちない挨拶を返した。
◆
「こころ、これ見て」
事の発端は、その日の朝のことだった。2年A組の教室に来ていた弦巻こころを手招きし、美咲は自分のスマートフォンの画面を見せた。画面を覗き込んだこころの顔が、ぱっと華やぐ。
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