誕生日の朝、教室にて。 10月1日。既に花咲川女子学園2年A組の教室に着いていた市ヶ谷有咲は、一緒に登校してきた戸山香澄と共に談笑をしていた。まだ始業までは余裕があり、廊下の方からも楽しそうな話し声が聞こえて来る。
「じゃあ美咲! 今日の夜、あたしの家に集合よ! 美咲はあたしが迎えに行くから、家で待っていて頂戴ね!」
「はぐみたち、すっごいサプライズ用意してるから!!」
「いや、サプライズって先に言っちゃダメなんじゃない……?」
廊下から、聞き覚えのある声が三つ聞こえた。二つは朝から元気の有り余る声、一つはまだ少し眠たげなようにも感じる声。
有咲が教室の入り口へ視線をやれば、クラスメイトの奥沢美咲の姿があった。彼女はバンド活動を同じくしている弦巻こころと北沢はぐみに手を振ると、教室の中へと入ってきた。有咲が声を掛けるより先に、香澄が美咲の元へと駆け寄る。
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