『なーもっくん、本当に大丈夫か?危ないだろ』
「大丈夫大丈夫!」
もっくんが目指す先は、公園の中に立ち並ぶ木に引っかかったハンカチ。端にコスモスの刺繍があしらわれた、白いレースのハンカチ。そして、木の下から少女が一人、心配そうにもっくんを見つめている。
このハンカチは、少女の手から飛んでいってしまったものだった。今日はひときわ風が強く吹く日で、ひらひらと飛ばされたハンカチは木の枝に引っかかって止まったのだ。それをたまたま見ていたもっくんは、ゼロの制止の声も聞かずに木に登り始めた。運動は大して得意でないというのに、無茶にも程がある。いつもは肝が座っているゼロも、今回ばかりはもっくんの周囲をふよふよ落ち着かなく飛び回っている。困っている人を助ける時のもっくんは、どうにも頑固で我が強い。
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