待てができないのは 妖狐たちが中心となって行う桜花祭にて、神楽巫女をつとめることになった晶はオーエンとともにシャイロックの店へ向かっていた。神楽巫女には特別な装束と化粧が必要らしく、今日はつまるところの衣装合わせだ。
「なんで僕も行かなきゃいけないの」
オーエンの狐耳は猫のイカ耳みたいにぺしょんと垂れていた。すでにやる気が削がれている。
「オーエンも装束の確認しなくちゃいけないんでしょう?」
「ダルい。帰っていい?」
「金平糖あげますから! もう少し一緒に頑張りましょ?」
金平糖という言葉にオーエンの耳がぴくりと反応した。黄金色に輝く尻尾も大きく揺れる。晶は小瓶をオーエンに手渡した。『めりとろ』の看板商品である色とりどりなこの金平糖はオーエンのお気に入りだ。
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