紅ずきん あるところに、ロキという青年がいた。
紅と蒼の派手な髪色で、口から出てくる言葉は尖ったものばかり。第一印象こそ人を遠ざける要素ばかりが目につくが、その言葉が本意から来るものではないことは、多少なりとも彼と交流すれば分かるだろう。頼まれた物事はきっちり進め、悪いことをしたと気付けば詫びを行動でしっかり示す。
ロキは、厚意には報い悪意には立ち向かわんとする、善良で世間との擦れを感じさせない青年だった。
ロキはプロメテウスという女性と共に、街から少し離れた森の入口近くにある小屋で暮らしていた。二人は大層親しく、プロメテウスとロキを知る人間は皆「仲の良い家族」と両者を称した。快活な姉と、素直になれない弟。周りからは、おおむねそのように認識されている。
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