ワンドロ カーテンの隙間、眠れない夜 カーテンの隙間から月明かりが射している。
ふわりふわりと夜の冷えた風がカーテンを揺らし眠ったままのダンデの頬を冷やしていく。
ダンデの身体にはたくさんの管が繋がり、点滴のポタリ、ポタリと液の落ちる音だけが暗く静かな部屋にある。
キバナはたった一人でダンデの手を握り綺麗な金色の瞳が開かれるのを待っていた。
「神様……どうか、どうかキバナの唯一を奪わないで……」
何でダンデなんだろう?
ダンデはこんなにガラルを愛しているのに、
ダンデはこんなにガラルに尽くしたのに、
そのダンデの献身に報いるどころかその命を脅かそうとするだなんて……神なんて大嫌いだ
でも、今のキバナがすがる相手は神しかいなかった。
眠るダンデは怪我一つもしていないそれなのに目を覚まさない。
ブラックナイトの後遺症。
あの時ムゲンダイナにより付けられた傷から入り込んだ毒がダンデの身体を蝕んでいる。
医者からその言葉を伝えられた時はまだダンデは目を開いていて
「どうにかなるだろう、俺は大丈夫だから心配するな」
そんなことを言っていたのに……あれよあれよと言う間に起き上がれなくなり、目を覚ますことが出来なくなった。
キバナが声をかければ瞼は微かに震える、声は届いてると医者は言った。
それなのに目を開ける事も出来なければ、キバナの声に答えることも出来ない。
このまま目を覚まさなかったら?
キバナの声に瞼を震わせることもなくなって鼓動も止まってしまったら?
そんなことばかりが頭をよぎる。
「好きって言ってくれたばっかじゃん……」
そう言って思い出すのは付き合う前にダンデが告白してくれたときの事。
ダンデは正装でバッチリ決めているのにキバナはユニフォームのままで……
そんななんだかあべこべの格好で二人ならんで想いが通じ合ったあの幸せな時がもう遠い昔のように思えてしまう。
まだたった三ヶ月しかたっていないのに。
「お前こんなに早く俺様を置いてくの?」
ホロリと零れた涙をダンデに
「どうしたんだキバナ?」
といわれながら優しくあの暖かい手でぬぐってほしいのに
「ダンデ……ダンデ俺様泣いてるよ?お前がキバナの涙を拭ってくれないから。涙の止め方わかんなくなっちゃった」
初めてあった時から好きだって言ってたキバナが泣いてるんだ。
早く起きて涙を拭ってくれなきゃダメじゃないか。
「後どれだけ泣いたら目を覚ましてくれる?後どれだけ眠れない夜を過ごしたらこの夜を終わらせてくれる?答えてくれよダンデ」
祈るように、すがるように、温いダンデの手を握り額に圧し当てる。
しかしダンデはキバナの問いには答えない。
明けない夜はない
止まない雨はない
それなら早くこの夜を終わらせてほしい、キバナの頬を濡らす雨を止めてほしい。
そう願いながら今日も眠れぬ夜を過ごすキバナをカーテンの隙間から照らす月だけがみていた。