雪解け水槍のスカサハがいないカルデアにやってきた神槍李書文。
マスターから話を聞くに、かつて存分に殺し合ったらしい北欧最強の槍使い、スカサハとやらは食堂で呑気に甘味などを食べていた。
「お主がスカサハか。」
「そうだが。」
彼女は当然であるが李書文のことは微塵も知らない。
後からマスターとマシュが駆けてきて慌てて状況を説明する。スカサハはスカサハでも彼女は氷雪の女王であり山の女神。触れれば溶けるような、どこか幼さすら残る風貌の女。スカサハに神霊が混ざった女。
是非手合わせ願いたいと言う筈だったが…強者の顔をしていないように見えた。
「ふむ。お前が望む強さが、私のそれと噛み合うかはわからないが…」
食堂の温度が数度下がり、火が消える。
「すまぬな、人の身はやわすぎて加減が効かぬかもしれん。」
パキパキと頬を撫でる霜。
「結構。」
猛る血が、じわりと霜を水へと変える。
こら!食堂では駄目!とマスターに止められて場所移動、突然始まったシミュレーションでの死闘。
六合大槍、八極拳。共に極めに極めた達人の槍。大神には遠く及ばぬよと言いつつも神そのものの原初のルーン。互いの矜持を掛けた戦いに、マスターはただ見守ることしかできない。
勝負はスカディの勝ちで終わった。大丈夫かと彼女は手を差し伸べる。
「甘いな、スカサハ=スカディとやら。」
書文はニヤリと笑って手を握る。
「確かに今回は儂の負けだ。しかし…話に聞くよりはなんとも…呵呵、敵に手を差し伸べるなど」
ム、とするスカディ、このまま再戦かと緊張が走る。
「いやマスター、今日はここまでだ。このように可憐な娘子をいつまでも振り回してはな」
「!!」
大きくがしりと握られた手が、しゅうと溶けるように熱かった。それは、どちらの熱がそうさせたのかはわからない。
了