幕間 木々の隙間から落ちてきた雨粒が、ふたりを叩いている。冷え切った肩を抱く手もまた冷たく、手のひらに僅かな温もりが残るのみだ。泥濘んでぐちゃぐちゃになった地面を見つめながら、ゼルダは考えるのをやめてしまった。身体が疲労に抗うことを拒否し始め、段々と重たくなっていく。
不意に、肩を抱く手に力がこもった。俯いて泥を見つめていたゼルダは、不思議な引力によって顔を上げた。時雨によって烟り、色彩を落とした森の中で、いっとう明るく、青く、美しい瞳。真昼の海のような色をしながら、その瞳は炎のように燃えていた。
「――お慕いしております」
そう言って、リンクは今一度、ゼルダを抱き寄せた。――今、彼は何と言ったのだろう。理解が追いつかず、ただされるがままになっている彼女に、彼はゆっくりと言い聞かせるように、話し続けた。
2421