光「ご出陣なされますか?」
「もちろんだ」
白き衣をなびかせ、今日もこの人は行ってしまう。思い切り駆け、光が瞬いた瞬間、我が主はもうすでに黒き竜となっていた。国のため、民のため、父のため。彼は今日も戦場を駆ける。
「どうかご無事で…」
自分はいつも、その背を見送り、祈るしかできない。
その日は何かがおかしかった。
顕現を解いた後、帰還したディオンが天幕に入ったまま、出て来ないという。
帰ってくるなり、前線の体制を立て直すように指示し、そのまま誰にも天幕に入ってこないように言ったらしい。バハムートの活躍のお陰で戦況はザンブレクに傾いている。休戦協定が申し込まれるのも時間の問題だろう。実際ディオンの指揮なしでも問題ないが…。
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