柔らかな陽光が部屋に差し込む中、レナはゆったりと窓際へと歩みを進めた。窓から漏れる海の音と、遠くに見える波の絶え間ない躍動に、彼女の瞳は細く揺れていた。
「こんなに贅沢な部屋で良いのかしら」と、静かな驚きを帯びた声で彼女はささやく。
アシュトンはふっと、彼女の優美な背中を眺めながら、数歩彼女の後ろに立った。
「エラノールのお父さんに感謝しなくちゃね」と、心の底からの感謝を込めて、優しげに語りかける。その声に、レナは
「ん」と、幼い頃のような無邪気な声で、ほんの少し首を傾げる。彼女が微かに下を向いた瞬間、アシュトンの視線は、レナの滑らかなうなじに引き寄せられる。窓からの光に照らされたような彼女の肌は、絹のように滑らかで。
彼女の髪が、まるで瀑布のようにその曲線をなぞりながら落ちていく様は、美の極致とも言える光景だった。
その瞬間、アシュトンは不意に、その風景に吸い込まれ、レナに触れたくなる衝動に包まれた。
寝不足が心を柔らかくしているのかもしれない。
その景色に心奪われる彼は、自らの感情の渦に引き込まれていくことを感じながら、
気がつけば彼女の華奢な肩を後ろから静かに抱き寄せていた。
微細な震動が彼の掌を伝わり、レナの息遣いが刻一刻と感じられる距離にいた。
レナは息を飲む。
その小さな反応を感じつつ、アシュトンは内心でダメだと自分に言い聞かせる。しかし、それでも彼の手はレナの肩を優しく、でも確かに抱きしめて離れなかった。
瞬間の静寂。
レナは息をのみ、アシュトンの暖かな胸に身を委ねるように微かな力を込めて、彼の腕を掴んだ。
彼の抱擁の中で、心の動きを隠し切れずに、二人はそれぞれの鼓動を感じていた。