Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    k_ikemori

    遙か7メインで過去作ポイポーイ。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 16

    k_ikemori

    ☆quiet follow

    遙か7_兼七。前半はTwitterに上げててそれと対になる様にとED後のやつも書きたかったんだ…

    ##遙か7

    合歓木


    長雨が続き、しばらく道中の宿にて逗留を余儀なくされていたが、数日たった今日、ようやく雨が上がった。
    足元は雨上がりのためいいとは言い難いが、本来の行程を歩むべく一行は宿を後にした。
    しばらく歩き続けたそんな折に、ふと山際へと視線を向けて歩く兼続に気付き、七緒は不思議に思って横へ並ぶと声をかけた。
    「兼続さん?なにか気になることでもありましたか?」
    「ん、神子殿。ああ、大したことではないのだが…」
    そう言いつつ、つい、と指を木々へと向ける。
    「陽を浴びて新緑眩しいこの時期に、撫子色のアレは目を惹くなと思ってな」
    兼続がいうアレとはいったい何なのかと、指さす方へ視線を凝らせば、確かに緑の中にちらちらとピンク色の綿毛のようなものがあり、七緒は納得の声を上げる。
    「ネムノキですね。確かに、この時期に木に花が咲くのってあまりないからついつい目が留まってしまいますね。ふわふわの綿毛みたいで可愛いですよね」
    「……ああ、その通りだな」
    くつくつと笑い、兼続はちらりと視線だけで七緒へ視線を合わせるとにんまりと口角を上げて笑う。

    「神子殿に似て、愛らしいと思って見ていたんだぜ」






    *****



    いつの日か、旅の道中にネムノキを一緒に見たことがあったけれどその時は、まさか兼続と夫婦になるとはついぞ思いもよらなかった。
    米沢へと減封され落ち着いたころにようやく祝言を挙げた。
    いつから魅かれ始めたのか、

    ここ最近忙しいからと、城に籠ったっきり家に帰って来れない兼続に日ごと食事や着替えを使いの者に託してはいるものの、
    「──…昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る 合歓木(ねぶ)の花…」
    窓枠に頬杖をついて、小さく呟く。
    ひっそりと静かに過ぎる夜に呟いたそれは下の句を継げることもせず、宵闇へと溶けていく。
    今日の昼に近々帰れそうだと文を貰ってはいたけれど、それがいつになるか分かるはずもない。たった数日離れただけなのに恋しくなるなんて情けないと、七緒は深く溜息を零す。
    「早く帰って来ないかなぁ……」


    「君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ」
    静かに耳に馴染んだ、ずっと待ちわびていた声が七緒の背へと掛かる。





    *****
      昼は咲き
      夜は恋ひ寝(ぬ)る
      合歓木(ねぶ)の花
      君のみ見めや
      戯奴(わけ)さへに見よ

    昼は咲いて夜は恋いつつ眠る合歓木の花をあるじだけが見てよいものだろうか。お前も見なさいな。

    ネムノキは夫婦円満の象徴と見かけて勢いで書いたけど、勢いが続かなかったやつ…。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    k_ikemori

    DONE天文台で毎夜星を眺めてる長政さん超エモいなと思って荒ぶったけど自分で書くとそうでもないなと冷静になった…この冬の時期に七緒が出勤して初めに行うことは、分厚い上着を掴み取る事から始まる。
    裏口から入るのでそこからは望遠鏡が置いている部屋と、望遠鏡の前に陣取る人影がきっといるのだろうが、生憎とここからは見えない。
    小部屋にはそれほど大きくはない机と仮眠が出来るようベッドが置いてあり、部屋の隅にミニキッチンが付いている。凍えそうな夜はそこでコーヒーかホットココアを入れて寒空の下、それを飲みながら観測する事が至福のひと時である。
    小部屋に入って、壁に掛けてある上着が自分の物とは別にもう一つ残っていることに気付いて七緒はキュッと柳眉を寄せた。
    「…もう」
    手早く自分の上着を着込み、もう一つの上着を腕に抱くと七緒は小部屋を後にした。
    ある程度厚着をしているだろうが、分厚い防寒着があると無しでは雲泥の差だと七緒は思っている。
    小部屋のドアを閉めるとシンと静まりかえったこの場所によく響く。
    七緒が出勤した際にドアを開け閉めした音に気付かぬ人ではないのだが、放っておくと明るくなるまで望遠鏡の下から動かないような人だということを思い出す。
    ゆっくりと望遠鏡の下まで辿り着き、七緒が傍まで来たのに微動だにしない 3117

    k_ikemori

    MOURNING2015年に書き始めて放置してた景望ログを見つけました。タイトルは「まつり」ってあるのでたぶんこれから一緒にお祭りに行きましょうという話にしたかったハズ…。お祭りすら始まっていなかった…。供養供養。書簡を届けに行く道すがら、景時は馬の背から空を仰ぎ見る。
    澄んだ青空に幾つか雲が浮かび、夏らしい強い日差しが地上を照らし付ける。
    「いい天気だなぁ…」
    そう呟き、景時は暫くぶりにある休みを早々に奪取する為、馬の腹を軽く蹴って駆け出した。

    「朔ー? 朔ぅ?」
    彼女たちに宛がわれている部屋へ赴き、ひょいと覗き込む。
    連日動き回っている神子はいないだろうとあたりを付けてはきたが、妹である朔の姿がそこに無く、景時ははてと首を傾げた。
    「どこ行っちゃったのかなぁ…」
    けれど、館の外には出て行ってないようで先程まで裁縫でもしていたのか、しっかり者の妹にしては珍しく片付けもせずそのまま放置されていた。
    その時パタパタと軽やかな足音と共に咎める声が掛かる。
    「兄上! 女人の部屋を勝手に覗くなど、恥ずかしい事なさらないで下さいまし」
    「ああっ、ごめんごめん。朔いるかなぁって思ったし、戸も開いていたし…」
    妹の厳しい物言いに景時は肩を落とす。
    「もし着替えている途中だったらどうするのです」
    「いや、もう陽も高いしそれもないかなぁ…って」
    「例え話です」
    「ア、…ハイ。すみません」
    朔は大きく溜息を零すと 6990