あの日はロナルドの虫の居所が悪かったか、気分が優れてなかったのだ、きっとそうだと半田は自分に言い聞かせる。
あの日以来、半田は出会ったらすぐに逃げ出すロナルドを捕まえられず、言いたいことが言えずに腹立たしい気分になっていた。
数日前、半田は日課であるロナルドを醜態を撮る為にセロリトラップを事務所に仕掛け帰宅を待っていた、ドラルクとジョンには仕掛ける前に了承を得て設置し、効果はサギョウが実験台となり証明してくれている。
メビヤツにはムスッとされてしまったが、いつもの事だからか本気で怒っては無さそうだ。
「ククク、これでヤツの醜態コレクションが増えるな!」
半田は事務所のドアから死角になる場所に隠れ吸血セロリに似たせた、セロリカーを放った。
作戦はロナルドが事務所に入った瞬間にに黒板消しを落とすのと同じ要領でセロリが落ち、その後セロリカーで驚かす2段構えだ。
「ただいまぁああぁ!!!!うわっセッ%#$」
ロナルドが叫んだおかげで帰ってきた事が分かりやすかった、半田はすかさずセロリカーを近づけた。
「ゔっわ、吸血セ%#$!ちょっうわ」
涙して逃げ出すロナルドに対してシャッターチャンスと半田は死角から出てスマホを向けた、バッチリロナルドと目が合った。
「半田お前このセ%#$お前が仕込んだんだないつも、いつも……もう、お前なんかき、きら……ぜ、絶交してやる」
まっすぐに半田を見てロナルドは叫んだ。
「き、貴様なんかと、とも……だちとは思ってはいないわ」
「うっっ、なっんでそんな事言うんだよ」
涙目だったロナルドが余計に涙を流している。これは醜態には入れられない、と本能がストップをかける、こんな泣かせ方をしたかった訳では無い。
「ロ、ロナル」
「も、もう出てけよ」
謝る隙もなく事務所から追い出される、半田は数十分後に帰宅するドラルクが来るまで事務所の前で立ち尽くした。
その日から、ロナルドに逃げられる日々が続いた、吸対との合同の仕事もたまたまコンビニで会っただけでも半田を見た瞬間に走っていく、何度か追いかけたが腕を掴むことも、先回りする事も運が悪く出来なかった。
「それで、私達に協力して欲しいと」
「そうだ」
「ジョンに頼んでロナルドくんをここに連れてきて来てくれるようにしているけど、その後どうするつもりかね?」
「捕まえて、言葉の訂正と謝罪をする」
「……君また40℃の熱出してない?それか蝶の鱗粉でも浴びたかね?」
「正気だ」
ロナルドが逃げ続けるのであれば作戦を練り捕まえるしか無い。簡単な答えを出すのに数日かかってしまった、絶交だと言われ思いのほか気が動転していたのかもしれない。
「……ねぇ、ジョンこの公園に何があるの」
「ヌ、ヌヌ、ヌーッヌ」
「来たか」
「え、半田あっ、えーと俺、急用思い出したからっ」
ロナルドは半田を見た瞬間にまた逃げるようと走り出そうとした。
「逃げる、なっ」
すかさず半田はロナルドを腕を掴み逃げるのを阻止した、掴んだ腕に力が入る、半田が声も思った以上に硬く震えていた。
「は、ハイ」
久しぶりにロナルドの表情をまじまじと見た、強ばっているし今にも泣きそうになっていた。
「まずは1つ訂正する」
「うん」
「お前とはライバル、好敵手だと思っていてだから友達では無いと言った」
「……」
「あの場では咄嗟に出た言葉ですぐに訂正出来なかった、すまない」
「そ、そうなんだ」
「俺も絶交とか言ってごめん」
「ウム」
安心したからかロナルドの表情がいつもの表情に変わる、そうだ、そのヘラヘラとした顔をずっとしていろと半田は心の中で呟いた。