君は春を纏う 午前11時50分。号令を終えて教科書を抱えた先生が立ち去ると、僕はいつも後ろの席の保冷バッグを真っ先に確認する。机のフックに引っ掛けられているのは、四角い黒と青のストライプ柄。うん、今日は大丈夫そうだ。
「漣くん、今日お弁当? 良かったらご一緒してもいいかな」
「ああ、はい。大丈夫っすよぉ〜。むしろいつも声かけてくれて嬉しいです」
「ほんと? 良かった。お互いぼっちは回避したいもんね」
くるっと椅子だけ反転させて、漣くんの机に失礼する。男子高校生ふたり分のお弁当箱を広げるには少し狭いけど、蓋だの水筒だのと邪魔になりそうなものを僕の机へ避難させれば問題ない。
「「いただきます」」
向かいのお弁当は普段よく目にするシンプルな1段の長方形で、中身も変わり映えしない茶色一色の肉弁当だった。申し訳程度に添えられたプチトマトを口に投げ入れた彼は、窓枠に頬杖をついてさりげなく階下を眺める。つられて視線の先を追ってみても、想像していた人影はなかった。僕はまた、向かいのイケメンに目線を戻す。
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