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    kurusaki

    神父と淫魔(夢魔)という設定の南扶と风情のファンタジーAU?をまとめてます。
    ナンバリングは時系列ではなく書いた順。
    なかなかのOOCなので、何でも許せる方向け。

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    kurusaki

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    南陽神父兄弟と玄真淫魔兄弟の話。
    ※OOC なんでも許せる人向け

    神父と淫魔 №1「くっ」
     口から出ないように悪態を噛みしめて、一つに括った髪を揺らしながら扶揺は裏路地を走る。
     少し離れた後方から大柄の男が二人追いかけてくる。
     本来なら逃げる必要の無い相手だったが、ほとんど魔力が残っていない今では捕まれば良いようにされるだけだろう。
     いくら淫事が本性であっても意に染まぬ相手と交わるほど矜持が無いわけでも、誰彼構わず喰らう悪食ではない。
     忌々しい。
     今は逃げるしかない己を腹立たしく思いながら懸命に地面を蹴った。



     ぱんっと小気味よい音を立てて傘が開いた。
     開いた拍子に雨粒が弾かれる。
     さほど強い雨ではないが粒が粗くて、傘をささねばあっという間に濡れそうだった。
     町の人に呼ばれて出かけてる兄が帰ってくる前に夕食の買い物を済ませて準備をせねばと南風は雨の中道を歩く。
     小さな街の神父なんて名前だけで、何でも屋の様なものである。それでも、神に仕える身であるのならば人に尽くすのが道。
     気の短い兄がよく務まる物だと思うが、彼は存外人に頼られるのが好きなのだから当然なのかもしれない。
     祓魔師でもある兄がなぜこんな小さな街に封じられたのかは知らないが、街に来る前までの殺伐としていつも傷だらけだった頃を思えば、平和で穏やかな日々が南風は好きだった。
     石畳の道に跳ねる水玉が靴を濡らす。
     一瞬視線を下げて顔を上げると、不意に視界に何か入った。
     脚を止めてそちらへ向けば、建物と建物の間の細い薄暗い道。
     引き寄せられるように進むと、濡れそぼつ少年が膝を抱えていた。
    「どこか具合が悪いのか?」
     南風は傘を少年にさしかけてやりながら優しげな声をかける。
     その声に少年はゆっくりと顔を上げて南風を見た。
     濡れた黒髪の少年はひどく美しい面立ちで南風は思わず息を飲んだ。
    「神父……?」
    「まだ見習いだ」
    「何故私に声をかけた」
     少年はどういうわけか怪訝げに眉根を寄せた。
    「困っている人が居れば声をかけるものだろう」
     司祭平服を着ていてこんなに警戒されたことが無かった南風は思わず渋い顔になる。
     南風を見定めようしているのかしばらく黙っていたが、一転まるで別人の様に心細げな表情になった。
    「不審な男達に追われて身を隠してた」
     それで警戒されたのかと納得して南風は手を差し出した。
     少年はその手をとり立ち上がる。
    「見かけない顔だ」
    「この町には昨日来たばかりなんだ」
    「そうか。来たばかりでひどい目にあったな。大丈夫……ではないか」
     眉根を寄せた南風の様子に少年は小さく笑う。
    「大丈夫だ、こういうことには馴れている」
    「馴れている……?」
     その言葉に少年が浮かべた笑みはやけに艶気に見えた。
     南風の心の臓が一度大きく跳ねる。
    「その、ままじゃ風邪を引くな。俺の家が近いから着替えを……」
    「扶揺!」
     突然背後から声が聞こえて思わず二人はその方を見る。
     二人から少し離れたところに傘を差して立っている少年によく似た雰囲気の男が立っていた。
    「兄だ」
     その言葉に少年の方を見れば、その横顔は安堵しているように見えた。
    「見習いの神父様、名前を聞いても?」
    「南風だ」
    「私は扶揺だ」
    「扶揺」
    「私はもう行くよ」
    「ああ」
     これで別れてしまうのかとなんとなく引き留めたい気持ちになっていると、扶揺はそんな南風に気付いたらしく面白そうに笑う。
    「小さな街なんだから、また会うこともあるだろう」
    「そうだな」
    「南風、またな」
     そう言いながら扶揺は手を振って兄だという男の元へ駆け出した。
     男の傘に入った扶揺は振り返って、もう一度南風に手を振ってから二人して歩き出した。
     なんだか離れがたくて二人が見えなくなるまで南風はその背を見送った。



    「よりによって神父に見つかるなんて、何をやっている」
    「大丈夫だ、あいつ、私の正体には気付いてない」
    「随分と自信があるんだな」
    「あいつ鈍そうだろう?」
     扶揺があからさまに馬鹿にしたように笑うのを男は呆れたように睨み付ける。
    「また会う気なのか」
    「だって、あいつ美味しそうな精気を帯びていたし」
    「神父相手にお前では危険だ」
    「まだ見習いだって言っていた」
    「それにしても」
    「大丈夫だって、あいつもう私に惹かれている」
     随分自惚れていると思いながら、司祭平服をまとった少年の様子を思い出せば、まず間違いは無いだろうと納得した。
    「南風か」
     扶揺は濡れて重くなった髪を、それでも軽やかに揺らして、楽しそうに呟いた。
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