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    nekononora

    94。書くのも読むのも雑食でいきます。逆、リバ、R、G、などなど書きたいように書き散らかします。
    なぜかもう一個のアカウントがよく弾かれるようになったので、こっちで上げる。
    設定がわからーん!

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    nekononora

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    クラノス。
    欠損してたりするので、少しでも苦手な人は注意。

    #クラノス
    kranos

    それは確かに愛の告白だった 約二百年前、心の一箇所が常に凍っていた。

     それがあのふざけた街での再会で、春の雪解けのように少しずつ溶けていった。
     その奇跡に歓喜し、神に私の勝ちだと宣言し、二度とこぼれ落としてたまゆかと害すものがいれば排除してやると誓った。

     大事にすると誓ったのだ。隣にあれるのならば溢れでた想いにすら蓋をして、なんでもないように振る舞おうと。
     だから私に、あの者の隣にある資格をーー

    「っづ」

     意識が戻る。目を開ける。痛い。寒い。揺れている。何故。クラージィは、私の血族は、

    「気が付いたか」

     声は上から、自分の腹部からした。
     どのような体勢だと混乱する脳を無理矢理落ち着かせて、状況確認につとめる。
     ここは森の中。
     声の主はクラージィ。彼の後頭部に私の左脇腹があり、マフラーの様に左腕と左足が彼の胸元に回っていた。
     意識のない人を一人で運べるだとか、片手があくだのか、少し前のSNSで流行った担ぎ方だ。
     レンジャーロールだったか。その担ぎ方で私を担ぐクラージィのあいた右手には氷の杭が握られていた。
     私が送った特注の手袋をしているとはいえ、手袋の表面に氷の膜が張っている。あれでは冷え性のクラージィには辛いだろう。
     なぜクラージィがこんな状況になっているのだ。私がいるというのに。私はなぜ担がれている。せめて自分でーー右足がない。
     太ももから先が消失し、傷口が氷で覆われている。
     自分に催眠を使って抑えてあるのだろう、痛みは爪で引っ掻かれ続ける程度だ。意識を集中すれば、他にも裂傷があると気づけた。
    「な、にが」
     起こったている。クラージィに怪我はないのか。また混乱しかけた私に、クラージィがこの男にしては不機嫌を隠そうともしない低い声色で述べる。
    「ここ一週間ほど、お前の言葉は親切ではあったが、塩味のきいたものではあったか?」
    「……」
     あのクソ書物の引用だ。私が嫌っているのを知っているので、食前の祈りはしても普段の会話でさも当然の様に引用きたりたしない。
     するのは、怒っている時だけだ。それもかなり。
     先ほどの引用は、偽りの言葉を厳しく戒めているくせに、人の心や人間関係を円滑にする嘘は、人を励ますための言葉だとか心を引き上げる言葉とかに置換して許すとかそんな方便だったように覚えている。
     つまり私の嘘は人の為を思ってのものかと尋ねたいのだろう、クラージィは。
     私は何をしたと思い出そうとして、すぐに一週間ほどの記憶が襲ってくる様に脳裏に次々と浮かんだ。
     要点だけまとめれば、前からちょっかいをかけてきていた嫌人間派の吸血鬼の一族に逆鱗に触れる挑発の仕方をされたので単身乗り込んだ、それだけだ。
     ほぼ壊滅させたがこちらも無事では済まず、駆けつけてきたクラージィに背負われている。
    「様子がおかしいお前に、何かあったのかと尋ね、かえってきた『何も問題はない』は御前に立つ事ができるものか?」
    「……あいにく、わが家のうちに住むつもりも、わが目の前に立つつもりもなくてな」
     これは内側もどこかやられているな。話すだけでも一苦労だ。
    「ありがたい御言葉はけっこうだが、注意をする気も、耳も傾ける気も、心のうちに守る気もないぞ」
    「ノースディン。それは同じ事が起こったら、また一人で抱え込むという事か?」
    「さてね……神のみぞ知るというものでは?」
     ククッと喉の奥で笑えば、私の手を握るクラージィの力が強くなる。
    「私を頼る気は? 相談もしてくれないのか?」
    「……隣人を、神に愛されているかけがいのない人として愛しなさいか? 神を愛していない私は、良き隣人たりえないだろうよ」
     皮肉げに言ってしまうのは仕方がない。
     なにせ、
    「それとも神云々関係なく、お前が私を愛してくれるとも? 一ヶ月ほど前私がした愛の告白の返事をお友達から変える気にでもなったか?」
     想いが溢れ出し、告白してしまった。その返事はよくわからない、考えさせてくれというもの。
     ギクシャクとするかな嫌だなと思っていたというのに、翌日には変わらない態度で接しられたら皮肉の一つも言いたくなるというもの。
     キープされているのか。そんな奴ではないとわかってはいるが、
    「……そうだな。変えよう。愛している。吸血鬼は結婚式をどこでおこなうのだろうか?」
    「なんて?」
    「私としては教会でおこないたいのだが、ノースディンの意見を、」
    「まて。まてまてまてまて、まってくれ。お前、は? お前っ、なに、をっ」
    「暴れるな。落ちるぞ」
    「暴れもするわ!」
     クラっときた。意識が遠のきかけたのを無理矢理戻す。ここで気絶でできない。行動力が変な方向に突き抜けているコイツのことだ、次目覚めた時には御真祖様まで巻き込んで結婚式の日取りまで決められているかもしれない。
    「お前! そうか、今回の事で変に気を遣ったんだな。偽りを言うくちびるは主に憎まれるぞ」
    「結婚式をあげたくないのか?」
    「そっちじゃない! あ、あ、愛してるとか、そんな!」
    「告白されてから人生の伴侶としての愛について考えるようになった。足を失い血の中で暴れ回るお前を見て、隣に立ちたいと願った」
    「は、はん、はんりょ? 伴侶!? そういうのはまず恋人としてだな!」
    「ふむ。私としては一目惚れだったのかもしれないという言葉から二百年待たせたので早い方が良いと思ったのだが……」
     誰だ一目惚れかもしれないなんて言ったのは。私か。
    「では恋人期間は五年でいいだろうか?」
    「そうだな。恋人としての期間も楽しみたい……ではなく、おてて繋いで仲良し子よしとはならないんだぞ? 女と寝るように男と寝てはならない。お前にとって忌むべき事だろうが」
    「……女と寝るように男と寝るなら、両者ともその忌むべき行いのゆえに、必ず死ななければならない。血の責任は彼らにある」
    「そうだ。正しくない者は神の国をつげない。まちがってはいけない。男色をする者は神の国をつぐことはない」
    「……かつて悪魔を屠る事が正しいと信じていた私は、杭をおさめた事を後悔しておらず、正しい道を歩めていると感謝しているよ。だから罪として語られている愛でお前を愛したとしても、正しい道を歩んでいると感謝できる未来が見えるのだ」
    「……」
     返事をしない私を不審に思ってか、クラージィが名を呼ぶ。
    「ノースディン?」
    「……やり直しを要求する! こんな鬱蒼とした森の中で! 片足がなくて担がれた状態ではなく! 夜景の綺麗な高級レストランとまではいわんが、せめて私の屋敷のバルコニーとかにしてくれ!」
    「よしでは、ドラルク達と合流して怪我の治療をしたらお前の屋敷に行こう」
    「……ドラルク? なぜここで不詳の弟子の名がでてくる?」
    「お前の様子がおかしいのにドラルクもドラウスさん達も気づいていたぞ? ドラルクとロナルドくんは陽動を、ドラウスさん達はアジトに乗り込んで敵を殲滅し、私はお前の保護を、」
    「……」
     気が遠くなっていく。
    「ノースディン?」
     よりによってドラウスとドラルクに迷惑をかけていたとは。
     スウッと意識を失い、次目覚めた時には、一族の皆に交際を祝われ、五年後の結婚式には呼んでくれと言われた。
     因みにバラしたのはなぜかいたクソ黄色で、片足がない状態でアイスバーにしようとして、クラージィに窘められたのだった。

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    おもち

    DONE同棲中のノスクラ成立前の二人です。黒い杭の後に書いたもの。そのため、ノースがわりとまだ格好つけています(当社比)
    冷え性クラさんにノースがマッサージしています。下心は無いとまだ言い張る時期のノースです。
    この頃はノースと再会しているのかすら分からない時期でしたね…。今となっては懐かしい。
    吸血鬼は何に祈り、何に誓うのだろうか。ノースディンは、とうの昔に人間であることを辞めた頭の片隅で考える。
    つい先日目覚めたばかりの、吸血鬼としてはまだ赤ん坊同然の我が子を保護し屋敷へと連れ帰ったのは、血を与えた親吸血鬼として当然の成り行きだった。
    誓って――――あえて誓うとすれば、クラージィに誓って、やましい気持ちなど何一つ無い。
    そう誰に言い訳するでもなくノースディンは、ベッドヘッドに背を預け戸惑った様子でこちらを見る赤い瞳に気付かないふりをした。
    再会したクラージィは体が酷く冷たく、どれだけ部屋を暖炉の炎で温め、その瘦せ細った身を毛布でくるんでも末端が冷えるらしく、寝付きが悪い。
    ノースディンがそれに気付いたのは、クラージィの目元にくまが出来てからという事実は、思い返す度に無意識下に室温を下げてしまうほどに許し難いことだった。
    2029